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【インタビュー】Chage「ザ・ビートルズは伝説になれない。永遠の現役感」

BARKS 9/11(日) 17:08配信

ザ・ビートルズの影響をそっくりそのまま採り入れるバンドもいれば、色合いや匂いをしみ込ませるアーティストもいる。大のザ・ビートルズ好きとして知られるChageは、間違いなく後者のタイプだろう。ボブ・ディランの「Make You Feel My Love」の日本語カヴァーを含むミニ・アルバム『Another Love Song』を発表したばかりのChageに、ザ・ビートルズのライヴ・ドキュメンタリー映画の関連作品として発売される『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』の聴きどころについて訊いた。

――まず、聴き終えていかがでしたか?

Chage:あんなにすごい環境なのに、ザ・ビートルズのあの演奏と歌唱力が成立していること。それにまず驚きました。まだモニターもなく、ライヴのサウンド・システムが構築されていない状況でしょ。当時アナログ盤も聴いていたけど、オリジナルの3トラックの音源をここまで良い音にできたのは、技術の進歩以外の何物でもないですね。リンゴのハイハットの半開きなんか、カシャカシャしたちょっと撥ねた音まではっきり聞こえてくる。家で大音響で鳴らすのもいいけれど、このライヴ盤はイヤフォンで聴くのをお勧めします。密閉させて聴くと、制作者側が作りたかった音が余計に聞こえてくるんですよ。

――歓声が凄まじいですよね。

Chage:あの歓声を実際にステージ上で体感したら、普通はやられちゃいますよ。見事に。このライヴでは、ファンの金切り声“黄色い声”を超えた全身から絞り出されたノイズが、そのまま真空パックされている。当時10代のファンの叫びがね。“ああいうノイズを作れ、歓声を作れ”と言われてもできない。自然発生的なものだから、異常事態が起きてるわけですね。そんなパニック状態の中でライヴが成立しているのに、演奏を聴くと、すごくタイトでグルーヴしている。ザ・ビートルズはやっぱり演奏がうまいなと。ノー・カウント、ノー・コードで入る曲もあるし、どこでキーを取ってるんだ?という曲もある。阿吽の呼吸で歌い出すわけですから。しかも4人がクールに演奏して歌いきるところがまた面白い。もしかして彼らは、50年後にもこの音源は残るって思ってたんじゃないの? その場限りのライヴじゃなく。たいした4人組だなと思います。

――個別の曲についてはいかがですか?

Chage:ポールのベースが大好きなんです。ベース・ランが独特なので。リンゴのハイハットの使い方もいいよね。リンゴって、ステージ後方の台の方にいるでしょ。ドラムがあそこまで高い位置にいるというのは、今じゃ考えられない。ドラムがあんなに高いところにあると、音が抜けていっちゃうわけだから。でも当時は“4人はアイドル”だったわけだから、リンゴも含めてバランスよく見せようとしたんでしょうね。まあ、彼らはただもんじゃないですよ。たとえば「ハード・デイズ・ナイト」はテンポを落として演奏しているじゃないですか。普通はライヴだと速くするのに、あえて落としてちょっと横ノリにしている。あのテンポ感やモタり具合がものすごく気持ちいい。ちゃんと計算されているんでしょうね。

――Chageさんがザ・ビートルズを聴き始めたのはいつごろでしたか?

Chage:小学校3~4年の時、当時は高校生だった叔父の家に行くと、いつもザ・ビートルズだけがかかっていたんです。ジョージの曲をギターで弾いて聴かせてくれたりね。それで夏休みに映画を観に行こうと言われて、『ゴジラ』とか“若大将シリーズ”かなと思ってついて行ったんです。中州に。そうしたら最初に入った映画館が満杯だと叔父が言い、次に向かった映画館で『ザ・ビートルズがやって来る ヤァ! ヤァ! ヤァ!』を上映していたんですよ。叔父は僕にザ・ビートルズを観せたかったんでしょうね。だって『ヤァ! ヤァ! ヤァ!』をもう何回も観てたんだから。モノクロで金切り声をあげている金髪のお姉さんが“ギャー!”って言っている中を、ザ・ビートルズが逃げ回っているシーン。それを今でも鮮明に覚えています。このライヴを聴いた時に“あ、この声だ!”と、小学4年生のころにタイムスリップできたような気がしました。

――アルバムは『アビイ・ロード』が好きなんですよね。

Chage:ザ・ビートルズをリアルタイムで聴いたのは、中学3年の時の『アビイ・ロード』だったんです。もう解散後でしたけど。僕はあのLPのB面が大好きでね。未完成の曲を編集の妙でまとめたんでしょうけど、あの流れや組み方がとても気持ちよくて、ちょっと疲れたり癒されたいなという時にはあのB面をかけて、独特な世界観に浸るんです。

――2010年には“チャゲトルズ”というバンドも“結成”されましたね。

Chage:いっそのこと、“トルズ”を付けちゃえとね(笑)。それでソロ・ワークスとして架空のキャラを作って、チャーリーというヴォーカリストのバンドにしました。そういう遊び心も、ザ・ビートルズから教わったことです。レコーディング中にちょっと悩んだ時に、“ここはジョンやポールだったらどうするかな? 転調するかな?”とかそういうことも考えます。そうすると、それっぽいベース・ラインになったりして、みんなに“いいじゃん”って言われたりね。そういうのはもう身に染みついています。新曲の「もうひとつのLOVE SONG」も、ハーモニーは「ツイスト・アンド・シャウト」をイメージしているし、途中で“フー”っていうコーラスを入れたところも、あの4人組を意識して歌いましたから。そういうのが楽しいんですよ。首を振りながら歌うのがね。野外フェスで「YAH YAH YAH」をやった時に、大地が揺れたことがあって、地震かと思ったら、曲に合わせてみんなが“ゴン”ってやってたんです。そんな経験はあるんだけど、このライヴを聴いたらかなわないです。1000倍は凄いなと。若い女性の肺活量の凄さといったら(笑)。

――映像で観ると、耳を塞いで叫んだり、ほとんど観ずに気絶しちゃうわけですからね。

Chage:ファンなら、あれでいいんでしょうね。いま僕の目の前にドラえもんがいて、“ハリウッド・ボウル!”とか言って連れて行ってくれたらうれしいけど(笑)、それに近いことをこのアルバムはやってくれているなと。といって、50年以上前のライヴなのに、まったく古さを感じさせない。歓声が作りものじゃないから、リアリティがある。要するにザ・ビートルズは伝説になれないんですよ。伝説にしてくれない。やめてくれと誰も言わない。永遠の現役感。憧れちゃいますね。

取材・文:藤本国彦
(C)Apple Corps Limited
(C)The Music Center Archives/Otto Rothschild Collection
(C)Capitol Archives
(C)Getty Images

ザ・ビートルズ『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』
2016年9月9日世界同時発売
SHM-CD(日本盤のみ)UICY-15566 2600円+税
24P英文ブックレット、英文ブックレット翻訳、歌詞・対訳付
※LP180g重量盤は輸入国内盤 11月17日発売
1.ツイスト・アンド・シャウト.Twist and Shout(1965年8月30日)
2.シーズ・ア・ウーマンShe's A Woman(1965年8月30日)
3.ディジー・ミス・リジーDizzy Miss Lizzy(1965年8月30日/1965年8月29日--1曲にエディット)
4.涙の乗車券Ticket To Ride(1965年8月29日)
5.キャント・バイ・ミー・ラヴCan't Buy Me Love(1965年8月30日)
6.今日の誓いThings We Said Today(1964年8月23日)
7.ロール・オーバー・ベートーヴェンRoll Over Beethoven(1964年8月23日)
8.ボーイズBoys(1964年8月23日)
9.ア・ハード・デイズ・ナイトA Hard Day's Night(1965年8月30日)
10.ヘルプ!Help!(1965年8月29日)
11.オール・マイ・ラヴィングAll My Loving(1964年8月23日)
12.シー・ラヴス・ユーShe Loves You(1964年8月23日)
13.ロング・トール・サリーLong Tall Sally(1964年8月23日)
14.ユー・キャント・ドゥ・ザットYou Can't Do That(1964年8月23日--未発表)
15.抱きしめたいI Want To Hold Your Hand(1964年8月23日--未発表)
16.みんないい娘Everybody's Trying To Be My Baby(1965年8月30日--未発表)
17.ベイビーズ・イン・ブラックBaby's In Black(1965年8月30日--未発表)

Chageニュー・アルバム『Another Love Song』
2016年8月10日発売
CD+DVD(初回限定盤)UICZ-9068 3,200円+税
CD(通常盤)UICZ-4356 2,300円+税
1.もうひとつのLOVE SONG
2.夏の終わり(2016)
3.迷い猫のシャッフル
4.Make You Feel My Love
5.NとLの野球帽(2016)
6.空飛ぶ電車とPancake
初回限定盤 特典DVD収録内容
・「もうひとつのLOVE SONG」MV
・Fan Meeting 2016~ここがファンミのど真ん中!~ Digest & Making Movei(@品川インターシティホール 2016/6/19ほか)「Hurray! Hurray!」「夏の終わり」「ロマンシングヤード」
・コンサート「僕らのポプコンエイジ」より「終章(エピローグ)」@府中の森芸術劇場 2016/4/29

最終更新:9/11(日) 17:08

BARKS

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