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一つ二つじゃない。全部駄目・・・ 継続か離農か 突き付けられる現実 関東・東北豪雨きょう1年

日本農業新聞 9月9日(金)7時0分配信

 鬼怒川の堤防が決壊し、広範囲で水害が発生した「平成27年9月関東・東北豪雨」から9日で1年。深刻な被害を受けた茨城県常総市では、先祖代々続けてきた農業を諦め、離農を決めた住民は少なくない。大きな災害のたびに離農は相次ぐ。営農継続を決めた農家も再起に向け、厳しい現実と向き合う日々だ。

 常総市若宮戸地区。小林恵一さん(63)が収穫を間近に迎えた稲穂を見詰める。今年初めて稲刈りをしない秋を迎えた。朝、田んぼを見ると「そろそろ刈らないと・・・・・・」と思うが、「ああ今年はもう、米を作っていないんだ」。そのたびに現実に引き戻される。

 1年前。自宅と作業小屋、トラック、コンバイン、田植え機、乾燥機2台、トラクター、もみすり機・・・・・・。全て水害で使えなくなった。妻と今後10年は農業を続けるつもりで、農機の一部は新調していた。収穫したばかりの新米も、袋ごと流された。

 小林さんは利用権設定していた1.5ヘクタールも含め4.5ヘクタールで米を作っていた。小林家は少なくとも江戸時代から米作りを絶やしたことはなかった。

 営農再開も考え、農機メーカーに依頼し、見積もりをしたが、全ての農機を新調すると総額3000万円は掛かることが分かった。農機具を収納する倉庫もない。米価安を考えると、離農を決断せざるを得なかった。

 90歳近い両親に離農することを明かした時の悲しそうな顔が、忘れられない。「一つや二つではなく、全部が駄目になったんだ。もう営農継続は無理だった」。小林さんはうつむく。

 農地を引き受ける中間管理機構に申し込み、小林さんの農地は、JA常総ひかりの子会社が米や大豆を栽培する。

 今、田んぼを見ると胸が締め付けられるような気持ちだ。「まだ気分的に駄目なんだよ。ダメージが大きくて」

 営農継続を決めた農家も、壁が立ちはだかる。同市で5ヘクタールで米を作る小林邦栄さん(73)は「結局はお金がなければ、農業は続けられない。農家をやっても良いことはない」と漏らす。トラクターやコンバインなどを新調し、「相当な投資をした」。

 水没したが使えると思っていた農機は故障し、想定外の出費を強いられることもある。離農を考えたが、後を継ぐと言う48歳の息子が支えとなった。投資に見合う農業収入は現在のところ見込めない。それでも「息子がやると言ってくれたことがうれしい。同じ方向を向いていることが唯一の救い」と思い直す。

 離農か、営農継続か――。激しさを増す気象災害。被災農家は選択を迫られている。(尾原浩子)

 <メモ>

 国などは営農継続を条件に、水没した農機の修繕や新規取得の際、6割を補助する支援策を取った。だが、被害が大きかった鬼怒川の東側にある農家約2000戸のうち、支援を申請したのは約410戸。

 一方、農地中間管理機構に農地の貸与を申し込んだ農家は2015年度は77戸、計64ヘクタール。この中には、小林さんのように水害をきっかけに離農を決めたケースが含まれている。

日本農業新聞

最終更新:9月9日(金)7時0分

日本農業新聞

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