ここから本文です

社説[県民投票20年]今に続く政治の不作為

沖縄タイムス 9月9日(金)7時25分配信

 米軍基地の整理・縮小と日米地位協定の見直しの賛否を問うた1996年の県民投票から20年が過ぎた。投票率59・53%で賛成は89・09%。県民の圧倒的多数が、米軍基地集中の解消を求めている事実を国内外にはっきり示した。

 だが、今も米軍基地の整理・縮小は進まず、地位協定の改定は一度も実施されていないことに、20年前の投票の効果を疑問視する声もある。それでも県民投票で示された結果が、それまで基地問題を「沖縄の問題」と片付けていた本土側の意識に風穴を開けたのは確かだ。

 当時の橋本龍太郎首相は、遊説先の青森県で「沖縄県民投票は、長い間、負担をいただいてきた皆さんのおしかりだ」と異例の言及。本土紙は相次いで「県民投票の結果を汲(く)み取るべきだ」とする社説を展開した。

 投票結果は、米国でも報じられた。ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ボストングローブなど米主要紙は当時、「(県民の)メッセージははっきりしている」と特集を組んだほどだ。

 県民投票の結果が驚きをもって報じられた背景の一つには、投票実施までのハードルが高いことにある。投票条例案の作成、条例制定を議会に提案するための署名活動、議会での議決を経てようやく実現する。都道府県レベルでは、後にも先にも沖縄県民投票が唯一であることを鑑みれば、希少さと結果の重さが分かろうというものだ。

 投票結果に拘束力がない点をもって、県民投票の意義を過小評価する向きもある。だが法的な手続きを経て示された民意を、政治が軽んじて良いはずがない。

■ ■

 選挙で当選した議員が公約と異なる判断をすれば、世論の厳しい追及を受け、次の選挙で審判を受ける。県民投票も然(しか)り。問題は、民意を顧みない政治のあり方そのものにある。

 沖縄で2度目の県民投票の可能性が報じられた昨年、菅義偉官房長官が「政府としてとるべき道はしっかりとっていくことに変わりはない」と述べたのは記憶に新しい。民意を無視する安倍政権の姿勢に通じる。

 県民投票から20年たっても変わらぬ基地負担の背景に、そんな政治の傲慢(ごうまん)な態度が影響していることは間違いない。「国策に有無を言わさない」という雰囲気の蔓延(まんえん)は、辺野古新基地建設や高江ヘリパッド建設を巡る政府の強硬姿勢につながっている。

■ ■

 その異様さは、中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」取材班が、高江の抗議活動に「これだけの反対の中、建設を強行する光景は日本の他の場所では見たことがない。話し合いで解決できないものか」と驚いたことでも明らかだ。

 政府は、翁長雄志知事が求める話し合いをないがしろにし、訴訟を起こした。

 傲慢な政治が沖縄で通れば、その手法はいずれ他県にも及ぶだろう。

 国内で唯一の県民投票結果が踏みにじられてきた20年は、硬直化したこの国の政治の危機的状況を示している。

最終更新:9月9日(金)7時25分

沖縄タイムス