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8代目・中村芝翫襲名の橋之助、「華やかな襲名披露をして、盤石な成駒屋を築きたい」

スポーツ報知 9月10日(土)6時4分配信

 中村橋之助(51)が10、11月の襲名披露興行(東京・歌舞伎座)で成駒屋の大名跡である8代目・中村芝翫(しかん)を襲名する。長男の国生(20)が4代目・中村橋之助、次男の宗生(18)が3代目・中村福之助、三男の宜生(よしお、15)が4代目・中村歌之助を継ぎ、史上初の親子4人同時襲名となる。兄の中村福助(55)が病気療養中ということもあり、橋之助は「華やかな襲名披露をして、盤石な成駒屋を築きたい」と抱負を語った。

 襲名まで1か月を切り、気持ちの高ぶりを抑えきれない橋之助。「50歳過ぎての襲名ですから、ドキドキしたり、緊張するのとは違う。でも『みなさんのご期待に応えて、盤石な成駒屋を築きたい』と考えていると、夜眠れなくなっちゃう」。来年12月まで続く披露興行をやり遂げるため、裏方の全般を取り仕切る妻・三田寛子(50)と力を合わせ、準備を進めている。

 橋之助として36年間、永谷園のCMやNHK大河ドラマ「毛利元就」(97年)の主演など、活躍ぶりは歌舞伎界にとどまらない。「よく『テレビばかり出て』と言われたこともありますが、知名度を上げないと歌舞伎で役をもらえなかったからです。全ては歌舞伎のためだったんです」。結果的に多くのファンを獲得した橋之助の芝翫襲名は世間の関心が高く、5月に都内のホテルで行われたパーティーは2382人、8月の浅草寺でのお練りには8000人が祝福に駆けつけた。

 襲名は、人間国宝で「女形の至宝」と称された父の先代・芝翫の遺言だった。2011年8月23日、都内のホテルに呼ばれたことを今でも鮮明に覚えている。「父が初めて頭を深々と下げて、『幸二(橋之助の本名)には芝翫を継いでもらいたい』と言ってくれました」。その2か月後、父は肝不全のため他界。5年が経過して、ついに約束を果たす時が来た。

 父は成駒屋の大名跡である歌右衛門を襲名する打診もありながら、生涯を通じて芝翫を名乗った。「できる限り芝翫の名前を大きくして、僕に渡したいという父の愛だったんだと思います」。この1年、襲名に向けたあいさつ回りをすることで、「父は一人の役者としてだけでなく、歌舞伎界をまとめることにも尽力していた。芝翫とは、そういう名前でもある」と思い知り、今後の歌舞伎界をリードする存在としても責任を感じている。

 「大芝翫」と称された4代目以来、117年ぶりの立役(男役の総称)の芝翫となる。「時代物が好きなので、男らしい役柄にどんどん挑戦していきたい」。襲名披露興行の10月に予定されている「熊谷陣屋」では、見せ場となる大見えには団十郎型と芝翫型があるが、もちろん成駒屋に伝わる芝翫型で演じる。2代目・尾上松緑さん(89年死去、享年76)が書き残したメモを中村吉右衛門(72)に協力してもらい、解読して03年の新橋演舞場で演じたものだ。

 史上初となる息子3人との親子4人同時襲名でも注目を集めている。「自分もそうでしたが、息子たちにも歌舞伎俳優になることを強要したことはない。今回の襲名がある意味、意思確認だったのかな。同じ道を選んでくれて率直な気持ちはうれしい。3人ともタイプが違うので、個性的な役者になってもらいたい」。11月公演では親子4人による連獅子が大きな見どころとなりそうだ。

 父であり師匠。息子たちに「謙虚な姿勢で人に感謝して、信念を持って行動しなさい」と心構えを示しているが、手取り足取り芸を教えることはないという。「歌舞伎界には頼りになるお兄さんがたくさんいて、自分の息子じゃなくても親身になって教えてくれる。時には遠慮なく叱ってくれる」。橋之助自身も中村勘三郎さん(12年死去、享年57)、坂東三津五郎さん(15年死去、享年59)を兄のように慕い、しのぎを削って成長してきた自負がある。

 歌舞伎俳優としての技量や風格に加え、愛嬌(あいきょう)のある性格も橋之助が愛される要因だ。インタビューの受け答えも明確でよどみない。歌舞伎座の営業担当が「8代目・中村芝翫」と書かれた襲名関連グッズを売り出そうと計画していることにも協力的で「華やかな襲名披露にして、歌舞伎座を連日、大入りにしたい。芝翫が経済効果にもなればいいですね」と心を躍らせている。(有野 博幸)

 ◆中村 橋之助(なかむら・はしのすけ)本名・中村幸二。1965年8月31日、東京都生まれ。51歳。7代目・中村芝翫の次男。70年、「柳影澤蛍火」で初舞台。80年、「曾祖父5世・中村歌右衛門追善公演」で3代目・中村橋之助を襲名。91年に三田寛子と結婚。NHK大河ドラマ「毛利元就」(97年)など映像でも活躍。兄は7代目・中村歌右衛門の襲名を予定している中村福助。襲名披露興行は10、11月の東京から始まり、来年1月に大阪、6月に福岡、12月に京都で行う。

 ◆歌舞伎座 10月の上演演目

 昼の部「初帆上成駒宝船(ほあげていおうたからぶね)」「女暫」「浮塒鴎(うきねのともどり)」「極付幡随長兵衛」、夜の部「外郎売」「口上」「熊谷陣屋」「藤娘」。坂田藤十郎、尾上菊五郎、中村吉右衛門、坂東玉三郎らも出演。

最終更新:9月23日(金)17時25分

スポーツ報知