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なぜはしか(麻疹)が流行し始めたのか…原因と対策法

All About 9月10日(土)20時45分配信

■大阪と千葉ではしか(麻疹)が流行
日本は2015年3月27日に世界保健機構(WHO)からはしか(麻疹)の土着株が存在しない「排除状態」であると認定されました。排除状態とは、国内に由来する麻疹ウイルスによる感染が3年間確認されなかった場合に認定されるものです。

しかし今回、関西国際空港の職員、幕張メッセのコンサートの参加者、関西国際空港の近くのアウトレットショッピングセンターで、はしかの患者が報告されています(2016年9月現在)。なぜ、今になって日本国内ではしかが流行しているのでしょうか? 現時点で考えられているのは、アジアの国々(インドネシア、モンゴル等)で流行しているはしかの株が、日本国内に輸入されてしまった可能性です。

また、流行している原因の1つに、MR(麻疹、風疹)ワクチン接種回数が関係しています。MRワクチンは2006年から「2回接種」になりました。これは2007年~2008年に10歳から20歳代を中心にはしかが流行したのを受けての変更です。ここから5年間に限って、中学1年生(第3期)と高校3年生(第4期)に1回接種し、さらにそれまで1回だったMRワクチンを、1歳から2歳までに1回、5歳から6歳までに1回の2回接種に行われることになったのです。この5年間限定の中学1年生(第3期)と高校3年生(第4期)の接種率があまり高くなかったこと、さらに、20代後半の人は1回のみしか接種していない可能性が高いことが関与していると思われます。

■1人で12~18人に感染? 非常に強いはしかの感染力
1人の感染者が周囲の免疫を持たない人に感染させる人数は、はしかの場合12人から18人にも上ると考えられています。毎年流行して注意喚起されるインフルエンザですら2~3人ですから、いかにはしかの感染力が強いかが判るかと思います。さらに、はしかは空気感染します。したがって、同じ部屋にいた場合、距離に関係なく、感染する可能性があるわけです。

このように感染力が強いために、はしかは流行する危険が高い病気といえます。集団における感染を防ぐためには、集団免疫をしておくことが重要なのです。はしかの場合、90~95%の人がはしかに対する抗体を十分に持っていれば、流行が防げます。

■予防接種をしていれば大丈夫? はしか感染に有効な抗体の数値
では、どの程度のはしかの抗体があればよいのでしょうか?

日本環境感染学会が医療従事者に求めている抗体は、EIA法と呼ばれる方法で測定され、16.0以上であれば、望ましいとされています。

私は、幼少のころに麻疹ワクチンをして、はしかにかかりました。小児科になって何人もはしかの診療しましたが、現在まで感染したことはありません。抗体も24.1という値でした。もし、一般の方で昔に予防接種を受けたかが思い出せない、あるいは抗体が残っているのかを知りたいという方は血液検査で、はしかに対するIgG抗体を測定するという方法があります。費用は、抗体検査だけなら保険診療ではありませんので、自費になります。参考までに東京医科歯科大学付属病院の妊婦健診での麻疹抗体検査は3000円でしたので、おおむね3000円から5000円程度が目安です。

■はしかの症状
はしかは、麻疹ウイルスによって起こる全身の病気です。感染してから発症までの潜伏期間は10~12日で、感染力を持つ時期が発症1日前から発疹出現後4日後まであります。症状としては38度以上の高熱、鼻水、咳、結膜充血、目やにが見られ、発熱してから数日後に、耳の後ろや首から赤いやや盛り上がった湿疹が見られ、だんだん赤くなり、湿疹同志がくっついて、大きくなり、最後は暗い赤色が残った湿疹になります。

はしかで問題になるのは、合併症です。中耳炎、気管支炎、肺炎、ノドが腫れてしまうクループ症候群、脳炎、角膜の炎症です。特に問題になるのは、麻疹肺炎、100例に1例ある麻疹脳炎、麻疹が慢性的に脳炎を起こす亜急性硬化性全脳炎で、麻疹脳炎の死亡率は10~20%で、生存できても重篤な後遺症(精神発達遅滞、痙攣、行動異常、神経聾、片麻痺、対麻痺といった神経的な問題)が20~40%も残ってしまうことがあります。亜急性硬化性全脳炎は進行性の病気でもあります。そして、はしかに対しては有効な治療方法はありません。

つまり、はしかは感染力が非常に強いうえに、感染・発症してしまった場合は、治療方法がなく、最悪の場合は死亡する可能性や、重篤な後遺症が残ることがある怖い病気なのです。

■はしかの予防法・対策法
まずは自分の予防接種歴を確認しましょう。麻疹ワクチンまたはMRワクチンを2回接種していると、感染する可能性が低くなります。昔、はしかにかかったかどうかですが、よく似た病気で実際は違ったというケースもありますので、ワクチンをしたかどうかの方が重要です。余裕があれば、一度、私のように抗体検査をしておくとよいかもしれません。抗体検査は血液検査で結果が出るまで数日かかります。

もし、抗体が不明でワクチン歴も不明ではしかの人に接触したかもしれないようなときには、接触から72時間以内のワクチン接種、あるいは4日以上6日以内のガンマグロブリンという免疫の血液製剤を筋肉注射する方法があります。ガンマグロブリンは血液製剤なので、その使用については、メリットとデメリットを考えたうえでの使用が望ましいです。

はしかに限らず、感染力の強い感染症に対しては、ワクチンがあるものについては、今回のような流行が起きてから慌てるのではなく、常日頃からワクチンをしておくことが重要です。できれば2回接種を行うなど、個人ができる限りの予防を行って、社会全体で感染拡大を食い止めていくことが大切なのです。


文・清益 功浩(All About 医療情報・ニュース)

清益 功浩

最終更新:9月10日(土)20時45分

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