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2017年、極右の大統領は誕生するのか?【フランス】

ZUU online 9月10日(土)17時10分配信

2017年の春頃(4月の最終日曜日と5月最初の日曜日)に予定されているフランスの大統領選挙。

フランス政治は、社会党(左派)、共和党(中道右派)、国民戦線(右派)の三つどもえ。現大統領で社会党所属のフランソワ・オランド氏の国民・党内双方における人気低下により野党第一党の共和党の優勢が当初より予想されていたところまでは既に各国メディアが報道してきた。

ところが、共和党の最有力候補アラン・ジュペ氏の支持率がここに来て伸び悩む一方で、着実に支持者を再獲得しつつあった元大統領サルコジ氏が立候補を表明するに及んで、大統領選挙の動向は混迷してきている。

こうなるとマリーヌ・ル・ペン氏率いる国民戦線の地方一次選における躍進も侮れない。フランス政治は今後どのような展開を見せるのだろうか?

■決選投票では誰が対立候補に?

現状では、第二次投票まで進めるのはおそらく共和党候補だろうと推測されている。それがジュペ氏になるかサルコジ氏になるかという点は未確定であるが、いずれにしてもこの二者の中の一人がル・ペン氏の対立候補となるとみられており、左派系候補はいずれの場合でも一次選を突破できない可能性が高い。

これはオランド氏個人の責任のみならず、オランド政権下において相次いだテロによって国民の間で安全保障に対する不安感が広がったことや経済政策における「右傾化」の結果として社会党に対する信用そのものが急速に低下したこと、および社会党系の候補の中で急速に支持率を高めていたエマニュエル・マクロン氏が社会党を脱党し新党を立ち上げてしまったことで社会党支持層内が分裂していることなどに起因する。

日本でも民主党政権の支持率は2009年の選挙前後に70%を超えピークに達したのを最後に低下し続け、2011年の再選挙時には20%代を下回るなど非常に低い支持率にとどまったが、背景が異なるとはいえ、左派政党の経済政策の失敗が右派を勢いづけたという点では同様の現象がフランスでも生じたと言えるだろう。

それだけではない。オランド政権下で経済大臣を勤めたマクロン氏が社会党を離脱し新たな新党En Marche!を立ち上げたが、マクロン氏がEn Marche!の候補として大統領選に立候補する場合、オランド氏や他の社会党候補者を上回る支持率を得ることが予想されていることからもわかる通り、フランスの社会党支持層は今守旧派とマクロン氏による変革を期待する革新派に分裂している。

これではマクロン氏が個人的に支持を集めることはあり得ても、マクロン氏を失った社会党が国民の支持を再び得ることは絶望的に困難であろう。

■共和党の指名候補は誰に?

話を共和党候補に戻そう。もしジュペ氏がサルコジ氏を破って共和党内で指名を獲得する場合には、ジュペ氏が決戦投票まで進む可能性が高く、かつ決選投票でもジュペ氏がル・ペン氏を破ることが予想される。

というのも、より多くの選択肢がある中で敢えてジュペ氏に投票したいと思う人がル・ペン氏に投票したい人ほどいなかったとしても、ル・ペン氏かジュペ氏かの二択を突きつけられた時には、そもそも共和党候補に見向きもしない左派層や無党派層が挙って中道寄りのジュペ氏を選ぶことが予想されるからだ。

実際、既にバイルー氏を中心とする中道派各候補は、ジュペ氏が出馬する場合には自らは出馬せず、間接的にジュペ氏支持に回ると表明しているので、想定されているシナリオでも中道派は共和党候補がジュペ氏の場合には出馬しないことになっている。

他方、「極右政党」扱いされその拡大を「警戒」するメディアも多い国民戦線は、マリーヌ・ル・ペン氏の努力で少しずつ自己変革を続け現在では「極右」的側面はあまり目立たせず、むしろ社会党政権の労働法改正で見捨てられたと感じている貧困層に訴えかけるような「社会正義実現」を前面に押し出している。

だが左派系支持層からは依然危険視され、特にイスラム系移民層や「政治的正しさ」を重視する層(つまり英米の「リベラル派」と重なる層)から敵視されている。

この種のリベラル層は当然一次選では左派系候補を支持することが予想されるが、決戦投票では対立候補が誰であれル・ペン氏の勝利を阻むために対立候補に投票することが予想されるため、ル・ペン氏のカリスマによる相対的優位は左派層の団結の前には無力化されてしまうのだ。

ところが、ジュペ氏ではなくサルコジ氏が共和党候補となる場合には若干事情が異なってくる。サルコジ氏は共和党候補の中でも「右寄り」とされる場合が多く、左派系支持層からはル・ペン氏ほどではないにせよ白眼視されている 。

共和党候補の中でも穏健中道派として以前より知られているジュペ氏が左派層からも一定の信用を得ているのとは異なり、サルコジ氏は富裕層におもねり、状況次第で政策をコロコロと変えてしまう人と思われている。

のみならず、サルコジ氏は近年イスラム系住民や過激派に対する強硬政策を公約するなど、従来国民戦線のみが主張していたような「極右的」政策を堂々と掲げるようになってきている。サルコジ氏vsル・ペン氏となった場合には、サルコジ氏が消去法的に勝利することはアンケート調査によれば確実だとしても、サルコジ氏の勝利それ自体が左派層には決して喜べるものではない。

■リベラル・左派層はどう動くのか?

現状で左派層にできる、サルコジ氏あるいはル・ペン氏に対する最も有効な抵抗は、ジュペ氏を大統領にすることだ。

もちろん、オランド氏の下に再び一致団結するか、あるいはマクロン氏支持層を拡大するという選択肢もあるが、オランド氏に対する左派層を含む国民の不信感は根強く、仮にオランド氏が決選投票に出る場合にはル・ペン氏に敗北する可能性さえあると言われている。

マクロン氏の場合は決選投票でル・ペン氏に敗北することは恐らく無いだろうが、そもそもマクロン氏が社会党ではなく新党En Marcheの候補として出馬する場合は社会党支持層の支持を十分に得られないので、その条件で共和党候補を上回る支持率を得られるかという点に疑問がある。

かといって、マクロン氏が今さら社会党に復帰し社会党候補として出馬するだろうか。あり得ないわけではないが、非常に可能性が低い。左派層に残された現実的選択肢は以下の3つとなるだろう。

ル・ペン氏に敗北するかもしれないという「リスク」を負ってまでオランド氏を支持するか、ここはむしろ「極右政党」の勝利という「最悪の事態」を避けるためにジュペ氏またはサルコジ氏支持に回るか、あるいは決選投票で棄権し選挙結果に反映されない自己の信念を敢えて貫くか。

従って「フランスは人権の母国である」という建前を守りたいのであれば、ジュペ氏を支持するのが最も現実的という結論になる。

■保守層・共和党支持層にとっては何が最も大切か?

他方、右派層にとっては次期政権が右派中心になることまでは確実だとしても、実際に誰を大統領にすべきかという選択をしなければならない。

無論、国際的評価やバランスを重視するならジュペ氏を支持するのが自然だろう。
だが、ジュペ氏のようなバランス型では結局オランド氏と同じ失敗を繰り返すのではないか、変革すべき現状を変えられないのではないかという不安の声もある。特に安全保障という喫緊の課題に対してジュペ氏がどこまで切り込めるのかという点に関しては、それほど多くを期待しない人がほとんどだろう。

だからこそサルコジ氏はまさにその点を突いて攻勢に出ているのであり、ル・ペン氏は逆にこの絶好の機会を逃すまいとより広い支持を獲得するために党内変革を着々と断行してきたのだ。

ル・ペン氏は時に「フランスのトランプ氏」などと揶揄されることもあるが、それはマリーン氏の父ジャン・マリー・ル・ペン氏には当てはまるとしてもマリーヌ・ル・ペン氏には当てはまらない。彼女は実父を党内から追放してまで国民戦線の従来の「極右」方針を転換し、数年かけて支持率をここまで高めてきた堅実で現実的判断の出来る有能な政治家である。

サルコジ氏も大衆迎合的と批判されがちとはいえ、大統領経験があるというのは大きな武器だ。この二者のいずれかにジュペ氏にはできない改革を期待する声は、フランス国民の日常を脅かす治安悪化の中で強まりこそすれ弱まることはない。

また、安全保障面に眼を奪われて忘れられがちな経済政策という面では、ル・ペン氏の主張する救貧型政策を望む者も多い一方で、マクロン氏による新自由主義型の改革を望む声も決して小さくないという点も考慮すべき点だろう。

ともかく現状を維持するか、テロや移民・難民の横暴という現代ヨーロッパのタブーに本格的に取り組むか、はたまた経済の再生か。フランス国民はそのどれを選択するのだろうか。(ZUU online 編集部)

最終更新:9月10日(土)17時10分

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