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海の次は空の覇権?習主席悲願の航空大国に爆走する中国 なりふり構わぬ開発姿勢に危険な匂いも…

産経新聞 9月12日(月)10時0分配信

 中国が航空機産業を急ピッチに拡大させている。8月末、習近平国家主席の悲願である“航空強国”実現に向けたPRを矢継ぎ早に展開。6月に就航した初の国産旅客機「ARJ21」が好評であるほか、国産の航空エンジンを開発する巨大企業が設立されたことをアナウンス。ステルス戦闘機「J20」が実戦へ向け配備が始まったこともアピールした。なお三菱リージョナルジェット(MRJ)開発など日本の航空技術に優位にあるとみられるが、中国による開発態勢整備の“爆速”ぶりは脅威となりそうだ。

 ■乗り心地「快適」も、なお世界に通用せず

 「とても広くて、それに静か。快適だ。この飛行機の未来は輝かしい」

 6月28日に中国国内で商業飛行に就いた同国初の国産旅客機ARJ21について、開発した中国商用飛機(COMAC)がソーシャルメディアを通じ、8月末に就航から2カ月の現状をリポート。乗客がその乗り心地を礼賛するとともに、開発者らの自信みなぎるコメントを披露した。また、2カ月で52回フライトし、2855人が搭乗。平均搭乗率が9割を超えるとのデータも公表し、極めて順調に推移していることを強調した。

 ARJ21は、悲願の国産ジェットとして国家を挙げて開発を進めるも、不具合などによる遅延を繰り返した。もともとは2006年に商業飛行を開始するはずが、予定より10年も遅れて今年ようやく就航した経緯がある。このため新型機ながら、「すでに設計が古い」というのが業界共通の見方。受注こそ多いが、ほぼすべてが中国国内需要で、欧米で商用飛行を可能とする型式認証取得のめどはたっていない。

 中国側がライバル視する日本のMRJは、同サイズながらも最新鋭の技術と低燃費を誇り、現時点でARJ21は敵ではない。だが、米国での型式認証取得へ向け、前段階となる同国での飛行試験に向けたフライトで2度失敗して日本に引き返すなど、盤石とはいえない状況だ。こうした中で、今回の中国側のPRは、いかにMRJに比べARJ21が順調であるかを内外にアピールする狙いがあるとみられる。

 ■国策エンジン会社は三菱重工より巨大

 また、8月末には、中国の航空機開発で重要な転換点となるイベントもあった。国産の航空エンジン開発を実現するため、当局が国内の航空部品関連企業を寄せ集め、新たに「中国航空発動機集団」という巨大企業を設立したのだ。

 新華社(新華網日本語版)によると、習国家主席は同社の発足大会で、「共産党中央が中国航空発動機集団を組織することを決めたのは、富国強兵戦略の(中略)ために取った重要な措置である。(中略)軍民が深く融合・発展し、イノベーションによって駆動する戦略を堅持し、(中略)航空エンジンとガスタービンの自主開発と製造生産の実現を加速し、わが国を航空強国に建設するためにたゆまなく奮闘することを希望している」と勇ましいあいさつをしたという。

 新会社は資本金500億元(約7700億円)、従業員約10万人と巨大。民間機や軍用機などそれぞれのプロジェクトごとに開発を進めてきた部品会社などを統合する。ARJ21はほとんどの部品が海外製で、エンジンは米ゼネラル・エレクトリック(GE)製。軍用機でも、現在、国を挙げて開発を進めている中国国産ステルス戦闘機「J20」のエンジンはロシア製のようだ。

 日本のMRJもエンジンは海外製だが、国産哨戒機などでは日本のIHI製。中国製の航空エンジン開発は遅々として進んでおらず、部品会社を寄せ集めたからといって信頼性が上がるはずもない。なにしろ中国では、日本をはじめ各国から技術導入をしても、まだ世界市場に通用するまともな自動車エンジンを作れていない状況で、大きな脅威はないとみられる。ただ、新会社は資本金、従業員数とも規模では日本の三菱重工を上回るだけに、不気味な存在であることも確かだ。

 ■日本に対抗、ステルス戦闘機を配備?

 一方、8月末には、開発状況がベールに包まれているステルス戦闘機「J20」が中国の空軍に引き渡され、一部が配備されたと同国のネットメディアでまことしやかに報道された。日本のステルス戦闘機「F35」の初号機が同月に完成し、10月にも航空自衛隊に引き渡される予定であることから、これに対抗したものとみられる。ただ、当局は何もアナウンスしておらず、真偽のほどは定かではない。

 海洋覇権に並々ならぬ意欲を燃やす中国が、次は空の覇権確立に向けて勢いを増している構図は、わかりやすいといえばわかりやすい。高速鉄道の例にもあるように、数十人が死亡する大事故が起ころうが、おかまいなしに開発を推し進める姿勢は、海も空も一緒だろう。

 日本としては、そうした姿勢をまねする必要はないし、先進国としてそもそもできない相談だ。だが、慎重さばかりが先行しては、“爆速”開発態勢で突き進む中国にいつ足をすくわれるかわからない。これも気に留めながら、中国の動向については注視していく必要がある。(池誠二郎)

最終更新:9月12日(月)10時0分

産経新聞