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清水建設会長 宮本洋一「日本の社会資本整備と都市インフラ」を考える

日刊工業新聞電子版 9/11(日) 12:49配信

「コンパクト&ネットワーク」の発想が不可欠

 この夏、つかの間の休暇をオーストリアからドイツを周遊する旅で過ごした。雄大なアルプスを背に荘厳なたたずまいをみせるザルツブルクや、ルートヴィヒ2世が威信をかけて築いたノイシュヴァンシュタイン城。中世の面影を残す欧州の町並みを前に、あらためて思いをはせたのは、日本のふるさとの「原風景」であった。諸外国に劣らず、日本にも歴史や文化、豊かな自然に彩られた地域資源が各地に点在している。

 ところが、経済発展の過程でこれらの魅力が薄れつつあるように映る。魅力を取り戻す方策の一つは、行政が民間の活力・知恵を生かした個性重視のまちづくりを進めること。経済界としてその一翼を担いたい。

 心待ちにしていた施設が今春、稼働した。群馬県川場村が地域資源である森林の地産地消を通じ、新たな地場産業の創出を目指すプロジェクトの拠点である。

 地域の風土を反映した産業の典型である林業に、新たな民間の知恵を注入することで、地域活性化に貢献できると考え、当社はこの事業に検討段階から参画。製材設備やバイオマス発電所の建設を進めてきた。

<「エリアマネジメント」に民間ノウハウを>

 地域の主体的な取り組みを促す「エリアマネジメント」においても、民間ノウハウを積極的に活用する動きが広がってきた。

 北海道の清里町と大空町は道路補修や除雪などの業務を共同で民間に委託した。千葉県我孫子市でも、公共施設の保全業務を民間企業に一括委託することで効率化を図っている。

 こうした動きはほんの一例だが、都市計画の検討段階から経済界の発想、民間のノウハウが反映される仕組みを提案していきたい。

 近年の大きな変化と受け止めているのが、熊本地震の被災地で実施されるトンネル工事で、国の直轄事業として初めてECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式の導入が決定したことである。設計段階から施工者のノウハウを取り入れることで、設計と工事発注手続きを同時に進められ、着工を大幅に前倒しできる。

 公共工事の世界ではほかにも「デザインビルド(設計施工一括発注方式)」が、事業迅速化の切り札として広がりつつある。民間ノウハウや総合力が発揮できる象徴的な動きである。

 一方、日本全体に目を転じると、新興国などとの都市間競争をどう勝ち抜くかや、少子高齢化に対応した都市インフラをいかに整備するかといった課題に直面する。これら課題のそれぞれに私なりの「思い」がある。

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最終更新:9/11(日) 12:49

日刊工業新聞電子版