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世界を跋扈する独裁者たち

ニュースソクラ 9/11(日) 13:00配信

「不寛容」の時代 後退する民主主義

 「容赦ない」が、2人の大統領の共通点だ。

 フィリピンのドゥテルテ大統領が就任して2か月、麻薬犯罪の容疑者700人以上が警察に殺された。7月にクーデター未遂があったトルコでは、エルドアン大統領の粛正で、3万人以上が逮捕・拘束、8万人以上の公務員らが解職されたという。

 100年前の8月公開の無声映画の金字塔、グリフィス監督の「イントレランス(不寛容)」は、当時の米国、古代バビロンの陥落、キリストの受難、中世フランスの新教徒虐殺の4話を並べ、「不寛容」は時代を問わぬと示した。現代世界も例外ではなさそうだ。

 ドゥテルテ氏は、南部ミンダナオ島のダバオ市長を長く務め、治安が最悪だった市の犯罪発生率を手荒な手法で劇的に引き下げた。その違法承知の荒技を、国政に持ち込んだ。国連人権高等弁務官事務所から「超法規的殺人」を批判されると、逆ギレして「国連脱退」を示唆する始末だ。

 首相を長く務めた後、2014年にトルコ初の直接選挙で大統領になったエルドアン氏は、独裁色を強めてきた。クーデター未遂を奇貨として、直接関係のない批判勢力まで粛正している。軍人、警察官、判事、ジャーナリストらが逮捕・拘束され、多数の教職員がクビになった。刑務所の収容余地を増やすため、服役中の一般受刑者3.8万人の釈放も決めた。

 その不寛容が、国際社会の批判を浴びる2人だが、国内には固い支持層がある。ドゥテルテ氏は大統領選で中央政界の著名候補に競り勝った。イスタンブールでのクーデター未遂への抗議集会には、エルドアン支持派が100万人以上集まった。

 強権的でも高支持率と言えば、ロシアのプーチン大統領がいる。原油安で経済は振るわず、表現の自由も、法の支配も、人権もおろそかにされながら、クリミア併合やウクライナへの介入などの強行策が、ロシア国民の愛国心をあおっている。

 中国では、毛沢東以来の権力集中とも評される習近平国家主席が、汚職をタネに政敵を葬り、言論の抑圧や人権派の弁護士や活動家の逮捕で強権を振るうが、人気が落ちたとは聞かない。

 他方、「アラブの春」の独裁者ドミノで民主化したのはチュニジア一国。あとはイラクやリビアのような失敗国家か、エジプトに見る軍政復活。世界に衝撃を与えたシリアの空爆で血を流す5歳男児の映像は、不寛容が連鎖する世界の現実を象徴している。

 米大統領選のトランプ共和党候補の、違法移民やムスリムに対する発言も、不寛容の極みだ。長らく民主主義の守護者を自負してきた米国にしてこれだ。世界にはびこる不寛容の根は深い。

 世界各国の自由度を指数化している米国の人権団体フリーダムハウスは、1月に出した2016年版年次報告で、世界の政治の自由度が10年続けて後退したと発表した。過去10年に後退が105カ国、改善の61カ国を大幅に上回った。特に「表現の自由」と「法の支配」の逆流を指摘した年次報告の表紙には「気がかりな独裁者たち、揺らぐ民主主義」とある。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:9/11(日) 13:00

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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核融合こそ未来のエネルギー問題への答えであり、子どもにだって世界は変えられる、テイラー・ウィルソンはそう信じています。そして彼はそのどちらにも取り組んでいます。14歳の時に家のガレージで核融合炉を作り、17歳となった今、直前の依頼に応えてTEDのステージで自分の物語を(手短に)語っています。