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【アグネスのなぜいま(6)】アフリカ支援、日本の資金の行方に目をこらそう

ニュースソクラ 9/11(日) 14:30配信

進まぬインフラ整備、蔓延する政治腐敗

 1993年から5年に一度、日本で開催されてきた日本主導の「アフリカ開発会議」(TICAD)6回目の会議が、初めてケニアのナイロビで開催されました。約50ヶ国のアフリカ首脳らを前に、安倍首相はこれからのアフリカの発展は「質の高い産業の開発が重要だ」として、今後3年間で官民合わせて3兆円の投資をする事を約束しました。

 日本政府は前回の会議から「アフリカはもはや援助する大陸ではなく、投資する大陸である」とのスローガンを掲げ、民間の投資を呼びかけてきました。

 もともとアフリカ経済は天然資源に依存していましたが、近年は中国を始めとする世界経済の停滞から輸出価格が下落し、厳しい状況になっています。こうした状況をふまえて、日本政府はアフリカ開発銀行と連携して、新たな産業の開発を支援していく方針を発表したのです。

 一部では今回の支援は、日本が国連の安全保障理事会の常任理事国になるための票集めではないか、と言われています。しかし、こうしたやり方は過去に何度も失敗していて、今回の投資も票集めにつながる保証はありません。

 アフリカは2050年には人口20億人を越える巨大市場になると予測されています。「最後のフロンティア」と呼ばれるアフリカへの支援策は、果してどこまで実を結ぶのでしょうか。

 私はユニセフの視察などで、今までにエチオピア、ソマリア、スーダン、ナイジェリアなど10数ヶ国のアフリカ諸国を訪ねてきました。

 中でも2013年に訪問したナイジェリアは、印象深いものでした。ナイジェリアはアフリカで人口が一番多く、南アフリカに次ぐ経済大国です。しかしナイジェリアで活動している日本企業は減る一方だと言います。

 経済の中心地、ラゴスで働いている日本企業の方に話を聞く事が出来ました。「10年前まで1000人程いた日本人が、今では100人未満です。治安が悪くて強盗事件が日常茶飯事なので、移動には特に気をつけています。車に乗るまでは、自分の運転手にも行き先を教えません。毎日道順を変え、できるだけ同じ行動パターンを取らないようにしています」。住居にもオフィスにもガードを常駐させ、停電が多いので自家発電は当たり前。水の質が悪いので、飲料水のタンクも設置しなければならないと言うことでした。

 もちろん私たちの視察にも、拳銃を持ったガードが同行しました。ちょっとした雨が降った日には、ホテルの前の道が川となり、車の出し入れが出来なくなり、いかに基本のインフラが整備されていないのかを痛感しました。ラゴスはアフリカの都市の中でも一番現代的と言われている街のひとつです。その他の街はもっと厳しい状況だと言ってよいでしょう。

 現地で活動しているある自動車メーカーの方は「治安が改善し、政治の腐敗が正され、インフラがしっかりしてくれば、アフリカ市場は可能性があると思います。ただ残念ながら近年は状況が悪化しているところが多いのです」と言います。

 ナイジェリアは石油の輸出国ですが、国の資源の恵みを受けているのはほんの一部、富裕層は1%と言われています。私は街でブランド品を身につけた奥様がメイドを連れて歩いている姿を見かけました。「富裕層はどこでショッピングしているのですか?」と聞くと、自動車メーカーの方から「彼らは自家用機でパリやロンドンへ行き買い物をするのですよ」という答えが返ってきました。

 スラム街でゴミや汚水まみれで生活している多くの子供たち。働いても働いても苦しい生活から抜け出せない人々。そうした多くの国民の怒りが、北部のテロ組織ボコハラムの勢力拡大につながっていると言われています。

 日本政府は過去にも数兆円規模でアフリカ支援を行なってきました。教育、医療などの人道支援は徐々に成果が上がってきていると思います。しかし、インフラの悪さと政治の腐敗が、相変わらず発展の妨げになっています。これから3年間に投資される3兆円は「質の高いインフラ整備」「感染症などの保健対策」「1000万人の人材育成」などに使われる計画です。そうした投資が一部の人のポケットの肥やしにならないように、国民全体に恵みが行きわたるように、何らかの監視体制を作らなければならないと思います。

 また最近では、IT産業を起業する若者が増え、注目を集めています。こうした分野に直接投資をすることが、アフリカの将来を切り開く大きな契機になるかもしれません。

 今でもアフリカの多くの国は、干ばつや内戦で苦しんでいます。経済開発どころか、食べることも出来ず、明日の命が保証されていないような状況で暮している人々が大勢います。飢えている国民をよそに、自分の利益だけを追い求める指導者もいます。しかし国民の不満や怒りがうずまく所に安定はありません。

 安定がなければ、発展もありません。日本政府は巨額の援助資金が、どのように有効に使われるのか、指導者たちにも目を光らせなければなりません。それがゆくゆくは日本の国益にも繋がるはずです。

■Agnes M Chan(教育学博士)
1955年香港生まれ。本名金子陳美齢。72年日本で歌手デビューしトップアイドルに。上智大学を経て、トロント大学(社会児童心理学)を卒業。94年米スタンフォード大学教育学博士号取得。98年日本ユニセフ協会大使。2016年ユニセフ・アジア親善大使も兼務。

最終更新:9/11(日) 14:30

ニュースソクラ

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。