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新女王としての自信と責任が宿る栄冠、ケルバーがプリスコバとの接戦制す [全米テニス]

THE TENNIS DAILY 9月11日(日)23時0分配信

 アメリカ・ニューヨークで開催中の「全米オープン」(8月29日~9月11日)は13日目、女子シングルス決勝と男子ダブルス決勝などが行われ、週明けのWTAランキングで1位になる第2シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)が、第10シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)を6-3 4-6 6-4で破り、全豪オープンに続く2度目のグランドスラム優勝を果たした。

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 男子ダブルスでもジェイミー・マレー(イギリス)/ブルーノ・ソアレス(ブラジル)が全豪オープンに続いて2度目のグランドスラム制覇。

 また、ジュニアの部では、グランドスラムで初の準決勝に臨んだ第7シードの綿貫陽介(フリー)が第5シードのミオミール・ケマノビッチ(セルビア)に1-6 4-6で敗れた。

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 初めてグランドスラムの決勝の舞台に立った者は、その独特の雰囲気の中で多かれ少なかれ平常心を失うという。身近な例で言えば、2年前の錦織圭(日清食品)がそうだったし、あのノバク・ジョコビッチ(セルビア)ですら2007年の全米オープンで初めて決勝に進出したときは、足が地に着いていなかったと明かした。

 決勝どころか、グランドスラムの3回戦を突破したことがなかったプリスコバは、しかし非常にうまく自分をコントロールしていた。立ち上がりのサービスゲームこそダブルフォールトやイージーなミスを続けてブレークを許したが、第2ゲームではすぐにブレークバックのチャンスを得る。第4ゲームも3度のデュースで2度ブレークポイントを握るなど、どれもものにはできなかったが、新女王となったケルバーにプレッシャーをかけ続けた。結局第9ゲームで2度目のブレークを許してセットを落とすが、手応えは得ていたに違いない。

 第2セットの第7ゲームで初めてのブレークに成功した。これを生かしてセットを奪い、試合をイーブンに戻すと、最終セットも第3ゲームで先にブレーク。相手のパワーを利用したカウンター返しと足の速さを生かしてしぶとく返球し続けるケルバーに対し、長いリーチを武器に高い打点から角度のある強打を放ち続けるプリスコバ。その攻撃力は、無敵と称されるケルバーのディフェンスをしばしば打ち砕き、ネット際での足元のボールに対しても鮮やかな処理を何度も見せた。 

 しかし、“ビギナー”にとっての落し穴は立ち上がりではなく、むしろ勝利が見えてからにあるのかもしれない。ワンブレークアップで迎えた第6ゲームのサービスで、プリスコバはアンフォーストエラーを重ね、ブレークバックを許した。4-4からラブゲームでサービスをキープしたケルバーが、次のゲームの1ポイント目でフォアハンドの鋭いパッシングを決めると、プリスコバはそこから自分のミスばかりで3ポイントを連続で失い、終盤の急展開で勝負は幕切れとなった。

 ケルバーは劣勢の間も自分に言い聞かせていたという。「ポジティブに」、そして「自分のテニスを信じて」と。しかし、ウィンブルドン、リオ・オリンピック、シンシナティと、ビッグイベントで続けざまに決勝で敗れていた最近の成績を考えれば、口で言うほどたやすくはなかったはずだ。それができたのは、「自分のテニス」を貫いて“女王”の称号を手に入れたのだという自負、しかもそれを28歳で成し遂げた経験の力だろう。

 ウィナーの数はケルバーの21本に対し、プリスコバは40本。サーブ・アンド・ボレーを含めてネットに出た回数でもプリスコバははるかに勝り、いかに攻めていたかがわかる。プリスコバは「まったくナーバスになんてならなかった」とメディアの憶測を否定し、「攻撃的な選手はミスが多くなる分、ああいう接戦では勝ちきるのが難しい」と、最後まで自分がアグレッシブに攻めたことに胸を張った。

 ケルバーを勝者にいたらしめたものはアンフォーストエラーの少なさだ。トータル17本という数はプリスコバの1セット平均とほぼ同じ。それこそがケルバーのテニスだった。

 新女王の称号に花を添える栄冠。明日からの追われる立場をいっそう明確にする勝利でもあった。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

最終更新:9月12日(月)11時9分

THE TENNIS DAILY