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人間の“本質”を描き出す。山田尚子監督が語る映画『聲の形』

ぴあ映画生活 9月12日(月)12時33分配信

大今良時の人気コミックを京都アニメーションが映画化した『聲の形』が間もなく公開になる。監督を務めたのは『映画 けいおん!』『たまこラブストーリー』を手がけた山田尚子監督で、本作の制作過程は「人間の本質や普遍的な部分を、まっすぐに見ていく作業」と振り返る。

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『聲の形』は、退屈を嫌うガキ大将の小学生・石田将也と、転校生の少女・西宮硝子の出会いから始まり、ふたりの高校時代にドラマが移りながら、ある出来事をきっかけに孤立してしまった将也が、迷ったり、つまずいたりしながら、周囲の人々や自分自身を受け入れようとする物語が描かれる。

原作コミックは全7冊が刊行されており、山田監督は『たまこ…』や『けいおん!』でもタッグを組んだ脚本家・吉田玲子と試行錯誤を繰り返しながら脚本づくりにあたった。「原作のエピソードはすべてが魅力的なんですけど、それらをそのまま並べてしまうと、ただの“ダイジェスト”になってしまう。だから原作の本質を注意深く探って、エピソードを練りこんで映画としてひとつの筋を通していく作業でした」

多くの魅力的なエピソードとキャラクターを前に、山田監督は絵コンテの完成まで「ずっと自問自答しながら、『聲の形』とは一体、どういう作品なんだろうと考え続けた」という。その過程で監督は「この作品は、表面的な部分ではなく、人間の“根っこ”の心を描く」という想いを貫いた。「コミックと違って、映画は強制的に時間が流れていってしまうので、時間のコントロールが本当に大事になるんですね。だから、行ったり来たりしながら何度もコンテを書いて、物語が立体的に見えるようにしていきましたし、人間の本質や普遍的な部分を、まっすぐに見ていく作業でした」

さらに山田監督はストーリーテリングだけでなく、映像表現でも徹底的に『聲の形』の本質を伝えるために心を砕いている。これまでも山田作品は繊細な人物描写が高く評価されてきたが、映像の画角や、フォーカス、カメラワークなど“映像の語り”も緻密に計算されており、本作ではアニメーション的な省略や記号的な表現を封印して「真摯にキャラクターを動かす」ことを基本に演出がなされている。「自分では何が“アニメっぽい”のかよくわかっていなくて、いつも映画に敬意があって、その一心でやっています。だから、どの場所に登場人物を立たせて、何ミリのレンズで、どの構図で撮れば、登場人物が魅力的に描けるのか? その積み重ねなんですね。アニメーションであれば、観る人の感情に的確に訴えるためのレイアウトや、色や空気感をしっかりとコントロールできます。“まばたき”のタイミングひとつ違っても、観客が受ける印象は違います。だから、今回もスタッフの方には本当に尽力してもらいました。“忍耐の作画”だったと思いますが、そのおかげでキャラクターがちゃんと“生きている”気がするんです。そこだけはいつも絶対にハズしたくないところですね」

山田監督は本作でも、センセーショナルな展開や定型の演出を慎重に退け、スクリーンの中で“生きている”人物を描きだしており、キャラクターの心情が観る者にしっかりと伝わってくる。「『聲の形』は、普通の日常や人の心の機微を、ファンタジーを介入させなくても当たり前に描くことができる作品だと思います。だから、すごく難しかったんですけど、とてもリラックスしてつくることができました」

映画『聲の形』
9月17日(土) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー

最終更新:9月12日(月)12時33分

ぴあ映画生活

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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