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水素の製造を2020年までに開始、「福島新エネ社会構想」が動き出す

スマートジャパン 9月12日(月)9時25分配信

 政府が2016年3月から検討を進めてきた「福島新エネ社会構想」の具体案がまとまり、9月7日に福島県内で開いた会議で実施内容を決定した。「福島全県を未来の新エネ社会を先取りするモデル拠点」として発展させることを目指して、3つの分野で先進的なプロジェクトを推進していく。

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 すでに福島県内で実施中の「イノベーション・コースト構想」を加速させる方向で、「再エネの導入拡大」「水素社会実現のモデル構築」「スマートコミュニティの構築」に注力する。2017年度予算の概算要求では総額754億円を割り当てた。当面は2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目標に、世界で最先端のエネルギー社会のモデルを構築する。

 第1のテーマである再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、最初に取り組むのは送電線の増強だ。福島県の太平洋沿岸から内陸にかけて広がる「阿武隈・双葉エリア」を中心に送電線を増強する。2016年度中に事業ポテンシャルの調査と送電線敷設のFS(フィージビリティスタディ)の調査を実施する。

 調査した結果をもとに風力・太陽光発電事業者と東京電力・東北電力が新事業体を設立して、2030年度までに阿武隈・双葉エリアの送電線を増強する。阿武隈・双葉エリアは風況と日射量に恵まれているため、送電線の整備と並行して風力・太陽光発電所を拡大していく。2017年度に100億円の予算を事業者の支援に割り当てる方針だ。

1万kW級の水素製造設備を2020年までに運転開始

 福島新エネ社会構想では第2のテーマとして、再生可能エネルギーから水素エネルギーを「作り」「貯め・運び」「使う」ことを可能にする未来の社会モデルを構築する。その中で特に注目すべきプロジェクトが2つある。1つは再生可能エネルギーからCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造する実証設備を建設して、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに運転を開始する。

 水素製造設備の規模は再生可能エネルギーによる電力に換算して1万kW(キロワット)級を想定している。合わせて水素を輸送・貯蔵する技術の開発や、風力・太陽光など天候によって出力が変動する電力を水素に転換する実証事業にも取り組む。水素を効率的に輸送・貯蔵するサプライチェーンを2020年までに構築するために、2017年度には55億円の予算を投入する方針だ。

 もう1つのプロジェクトは次世代の火力発電技術である「石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)」と水素を組み合わせて、水素エネルギーの利用拡大を推進する。石炭ガスと水素を混焼して発電する実証事業に2020年代の前半から取り組む予定だ。

 すでに東京電力と常磐共同火力(東京電力・東北電力の共同出資会社)が福島県内の2カ所でIGCCの建設計画を進めている。出力54万kWのIGCCを2020~2021年に運転開始する予定で、この設備を使って水素混焼発電を実施する見通しだ。2016年度内に経済産業省と電力会社が実施に向けた検討に着手する。

 第3のテーマであるスマートコミュニティの構築に関しては太平洋沿岸の4つの自治体(新地町、相馬市、浪江町、楢葉町)で実施することが決まっている。2016~2020年度の5年間をかけて、再生可能エネルギーやガスコージェネレーション(熱電併給)による地産地消型のエネルギーシステムを構築していく。2017年度は55億円の予算を配分する方針だ。

 福島県では復興の大きな柱として「再生可能エネルギー先駆けの地」を目指している。2040年をめどに県内のエネルギー需要の100%以上を再生可能エネルギーから生み出して、沿岸部を中心に新たな産業基盤を創出する計画を推進中だ。福島新エネ社会構想でも2040年度を最終目標に3つのテーマを推進していく。

最終更新:9月12日(月)9時25分

スマートジャパン