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「BLOOD+ 10周年ファンミーティング」レポート&キャラデザ箸井地図インタビュー

ねとらぼ 9/12(月) 0:17配信

 2005年から1年間放送されたアニメ「BLOOD+」の放映終了10周年を記念する「BLOOD+ 10周年ファンミーティング」が9月10日、都内で開催されました。

【あの名シーンの原画……!】

 同作の監督・シリーズ構成を務めたProduction I.Gの藤咲淳一さん発案で開かれたファンミーティングには、抽選で選ばれたブラプラファン70人が集結。当時制作スタッフだった匿名のアシスタントさんもかけつけ、会場は熱気に包まれました。

 「ディーヴァのために……」と作中のせりふを引用した乾杯で幕を開けた第1部では、アニメ「BLOOD+」の企画がいかにして立ち上がったのかが講義形式で語られました。原点となる「BLOOD THE LAST VAMPIRE」のゲーム版総監督を担当したことから「BLOOD」シリーズとの縁が始まったという藤咲監督。その後も攻殻機動隊などさまざまな作品の脚本を担当していましたが、2004年10月15日転機が訪れます。

 「BLOODシリーズの新作をやること」が決定し、11月頃には「黒井ツバサ」という企画が始動。当初は「BLOOD THE LAST VAMPIRE」の流れをくんだ作品になる予定で、東京多摩地区から青森県三沢を目指すという「暗い物語」が検討されていました。

 そんな中、毎日放送の竹田 青滋プロデューサー(現・編成局長)から「僕は戦争が嫌いなんです」という話を受けたことで、戦争と経済という視点で「ロスチャイルド家を題材にしてみらた面白いのではないか」という意見が飛び出し、「陰謀と戦争」という方向に進みます。このロスチャイルド案は「お金は世界の血である」という考えから着想を得たとのこと。

 その後舞台が“沖縄”で決定し、スタートを切った「BLOOD+」。当時について匿名のアシスタントさんは「最初は24話完結と聞いていたのが、気付けば50話になっていて。設定数のことを考えて絶望していたので、この辺りはよく覚えています」と笑顔で話します。藤咲監督も「当初アニプレックスさんからお話をいただいた時は2クールだったね。でも毎日放送さんでやる。しかも『土6枠(土曜日18時のアニメ放送枠)』でやる、ということになったから50話の1年ものになったんだった」と振り返りました。

 企画の骨組みが決まっていく中「(脚本は担当していましたが)アニメの演出経験もないし、現場経験もないけれど、竹田さんを信じて“沖縄の物語”をやってみよう」と腹をくくった藤咲監督は2005年1月28日、スタッフ4人を連れて沖縄へ。

 この頃には作中重要な鍵となる沖縄料理店「OMORO」のモデルとなった店舗などを決定し、キャラクターの設定も固まってきたそうです。沖縄取材終了時点では、後に主人公・音無小夜(おとなしさや)の兄として物語の中心人物となる宮城カイが「日本人と黒人のハーフで武器の密輸をやっている」という設定で進行していたという裏話も語られ、会場は笑いに包まれました。

 キャラクターデザインを担当した箸井地図さんの起用については「Webで箸井さんのイラストを見た時に、骨格のある絵が描けるな。この人の絵を動かしてみたらどうかな」と感じ、まず「小夜」など数点のデザインをお願いしたといいます。

 掲載はできませんがスライドで投影された小夜の初期デザインは決定稿のデザインに近いものがあり、この時点から小夜のイメージは固まり始めたのだなと感じました。一方ハーフ案が破棄されたカイのデザインは目元がやや鋭く岡村(作中登場するジャーナリスト)そっくり。「成長したら岡村になりそうな顔ですが……もっとタレ目の方がいいのかな」という箸井さんの走り書きも残されていました。

 さらにヴァン・アルジャーノのモデルとなったのは俳優の及川光博さんであることが明かされたり、本編には登場しませんでしたが25歳になりジョージ風に髪を結んだカイや、顔はリクで眉はデューヴァ似というディーヴァが残した双子のイメージイラストも公開され、第1部は大盛り上がりで幕を閉じました。

 第2部はファンから事前に寄せられた質問に藤咲監督が生回答するという一問一答形式で進行。ここでは時間の都合上、回答できなかった質問も含めて藤咲監督の見解を掲載します。

会場で紹介されたエピソードに関する質問

――17話や22話など過去編について詳しく知りたいです。

藤咲:特殊なエピソードではあるんですが、17話の「約束覚えてる?」に関しては実は僕が脚本を担当する予定ではありませんでした。もとは吉田玲子さんの脚本回だったのですが、ほかの案件も抱えていらっしゃったので急きょ僕が脚本を書くことになりました。だから初稿が決定稿になっています。ただ吉田さんには次に良いものを書いてほしいという思いから22話の「動物園」をお願いしました。あの脚本は正直、僕じゃ書けないものでした。

アシ:設定的なことでいうと、当時グーグルアースなどがなかったので「シベリア鉄道」のDVDや資料を観まくりました。ロシア映画を16倍速などで観すぎたために最終的にロシア風の鼻歌まで歌い始めてしまい、周りのスタッフには心配されましたね。

藤咲:ロシアといえば「シベリア超特急」ですが、あの水野晴郎さんから「シベリア鉄道を扱ってくださってありがとうございます」という連絡がきたそうですよ。

アシ:ありましたね。私はその話を聞いて「苦労したかいがありました」と泣いたのを覚えています。

藤咲:懐かしいね。22話については、絵コンテの肝の部分を演出の松本淳さんに直してもらっています。すごく良い絵になったので、僕自身22話は作っていて楽しかったし、すごく満足しています。

――21話についての制作エピソードを教えてください

藤咲:シフについては当初出てくる予定は全くありませんでした。しかしシュヴァリエだけで進行すると、アクションができないという問題もあり、人工翼手を考案しました。「シフ」という名前は脚本に参加していた森田繁さんが付けてくれました。派手なイメージをつけたいということでの当時Production I.Gのプロデューサーだった大松裕くんから高速移動のアイデアが出ました。このアイデアはスマッシュヒットだったなと思っています。

アシ:シフの動きのベースとなっているのは、映画にもなったパルクールという競技だったりもします。

――32話で小夜の弟・リクが死んでしまうのになぜ「ボーイ・ミーツ・ガール」というタイトルなのでしょうか

藤咲:この話はディーヴァの視点で進めたかったというのが、サブタイトルの意味です。だから実際は「ガール・ミーツ・ボーイ」なんですよね。でもそれだと音感に違和感があるので、「ボーイ・ミーツ・ガール」になりました。ただ、一方でサブタイトルを考えているときにTRFの曲が耳に飛び込んできたことも要因しているかもしれません。

アシ:聞いてましたね、TRF。

藤咲:本作のサブタイトルはほとんど僕が決めています。気に入っているのは「ファントム・オブ・ザ・スクール」かな。今思えば、ばかじゃねぇのと思うけど。

アシ:21話の「すっぱいブドウ」はどういう意味だったんですか?

藤咲:あれはキツネのイソップ童話からですね。「あのブドウはどうせすっぱいよ。誰が食べてやるものか」という意味をシフとの関係を三回転半くらいさせたのですが、誰も気付かなかったという……。あとは「摩天楼オペラ」というサブタイトルからバンド名をとったグループもいまして。今日もコメントをいただいております。

――43話でのハジの翼手化が翼だけという設定については最初から決まっていたのでしょうか

藤咲:ハジの翼手化については何も決めていませんでした。ハジ好きの女性スタッフに「ハジが翼手化するとしたらどうしたらいい?」と聞いたら「ない!」と即答されたので人間のままで、翼だけの姿にしようとなりました。

アシ:でもハジが翼手化した時用にボウズの案も作ってくれと言われたので一応Photoshopで作ってみましたよね。提出したところ「ないわ~」ということになりましたが。

藤咲:ありましたね。でもハジは最初からイメージが固まっていたよね。翼手化しないのが彼自身の戒めであるという設定は僕が決めました。あと、この話はキャラクターがキスしまくる話でもあるんですが、物語がクライマックスになだれ込む“転換点の話”でもあるのでさまざまな「こころ」が交錯するさまを見せておきたいと思っていました。残念ながらソロモンだけはキスできませんでしたけどね。

アシ:うーん。

藤咲:でもね、ソロモンはそういうことをやっちゃいけないと思うんですよね~まぁ彼は報われないからソロモンなんだって僕は言っているんですが。ただ構成が二転三転したこともあってバランスが悪いところは反省材料です。今ならいろいろできるのになと思います。

アシ:当時は勢いが大事でしたよね。今だと書けないせりふもたくさんあるでしょうし。

藤咲:そうじゃないとオペラなんて使えないもんね。

――47話の「すべての血を超えて」について、小夜はソロモンのその後を知っているのでしょうか

藤咲:ハジと小夜、ソロモンが3人でジェイムズに立ち向かう場面で「これが早く見たかった」という意見が多くありました。でも3人がそろっちゃうと「勝っちゃうな、終わっちゃうこの話」というのがあって。ソロモンってシュヴァリエの中で一番人間らしいんです。医者になったのに大きな力の前では無力であるということに直面した彼にアンシェルが「私の元へ来ないか」と誘いに来る、あのシーンですよ。

アシ:はい。

藤咲:彼は世界を平和にしたいと一番思っていた男だと思います。大きな力をもって平和にしたいと。でも小夜に会ってしまうんですよね、そこで彼の中で初めて道が見えたと。ここからが彼の不幸の始まりで、茨の道の入り口だったんだと思います。最終的にはアンシェルの腕の中で結晶化していきましたが、もちろん小夜はそのことを知りません。ハジは同じシュヴァリエとして自分もこうなるであろうと同情しつつ、その結末を知っています。顔までは結晶化したソロモンですが、その後のことは僕も知りません。アンシェルの「馬鹿者が」というせりふが全てだと思います。

――50話「ナンクルナイサ」で小夜がハジにキスをした意味を教えてください

藤咲:僕が脚本で描いたのは、小夜が導き出した答えを小夜から言ってほしかったからです。200年近くも変わらない関係でそばにいて、未来を奪ってもなおついてきてくれるハジを「いとおしく」思ったんでしょう。哀れみもあったかもしれませんが、やっぱりいとおしかったんではないかなと思います。ついでですが、ハジのせりふ「ナンクルナイサ」、もともとは脚本にはありませんでした。カイが使っていた魔法の言葉でもとは50話でカイが数回言っていたせりふではあったんですが、あえて削ってハジに使っています。

――物語の最後に小夜が沖縄で眠りにつくということは最初から決まっていたのでしょうか

藤咲:決めていました。沖縄編の構成が見えてきたときに小夜は沖縄に戻るべきだと決めました。そしてその時小夜の傍にいるのは、恐らくカイであろうと考えていました。

――オープニングとエンディングに関する演出について詳しく教えてください

藤咲:これは完全に担当の演出家に任せています。例えば3クール目のUVERworldさんが歌うColors of the Heartに関しては後に「PSYCHO-PASS サイコパス」の監督を務めた塩谷直義くんの演出が爆発しています。塩谷くんは本作が演出デビュー作だったので「好きにやってみれば」ということでまるっとお任せしました。そしたらビー玉とか色んな演出が出てきたので、良いなと感じました。ほかにもさまざまなアニメーターの力に支えられています。

――長い制作期間のなかで、プランが大きく変わったキャラクターはいますか?

藤咲:研究員Aこと、アーチャーですかね。今日来てくれたアシスタントのお気に入りで、彼女のテンションを保つためだけに生かしておいたようなキャラクターです。

アシ:「このキャラクターは素晴らしいですよ」と言い続けたら皆さんが使い続けてくださったっていうことですよ。

藤咲:でも声が遊佐浩二さんだとは気づいていなかったんだよね。

アシ:すみません、昨日気づきました。顔が好きで顔が好きで、顔しか見てなかったんですね。でも皆さんも、自分の好きなキャラクターがいるなと思ったら声を大にして言い続けると死ぬはずだったかもしれないキャラクターが最終話で、名前付きでせりふ付きで出ます!

藤咲:僕の作品そういうの多いね。

 制作について振り返った藤咲監督は「女性スタッフの方々に助けていただいたことが多かった」と語り、「こんなのハジじゃない!」「どうして私にハジが回ってこないの!」とキャラクターに対するこだわりを持ったスタッフがいたからこそ成立したアニメだったのかもしれないと第2部を締めました。

 と、ここで藤咲監督からのサプライズプレゼントが登場! 小夜とハジをあしらった赤薔薇ケーキと、ディーヴァとソロモンをあしらった青薔薇ケーキがファンのみなさんに振る舞われました。

 藤咲監督がColors of the Heartを口ずさみながら登場した第3部では、引き続き監督への質問に答えるコーナーからスタート。

監督に質問

――主役である小夜に喜多村英梨さんを起用したきっかけのエピソードを教えてください。

藤咲: 80人くらいの方がオーディションに来ていて、最後の4人に絞り込んだ時に「こういう子がいます」と持ってこられたのがキタエリさんのテープでした。リクとの会話のシーンが課題だったんですが一番お姉ちゃんっぽい話し方ができていたんですね。そこで「この子にしたい」と決めました。キャストへの演技についてはやりながら固めていきました。キタエリさんは最初声が出ていなかったので、山田稔さんに特訓してもらいましたね。あとソロモン役の辻谷耕史さんにはかなり無理を言っています。

――ハジと小夜の間で血を授ける行為は「口移し」の設定なのでしょうか。また「目覚めの血」の設定は最初からありましたか

藤咲:割と早い段階で、翼手の女王は女王蜂であるという案が出ました。その女王には働き蜂的な守護者・シュヴァリエがいて、眠りにつく案が出た時点で最初に血を飲むのはそのシュヴァリエの血であろうと思いました。

――1部と2部の間にあった「空白の一年」について教えてください

藤咲:実は何にも決めていません。ただハジと小夜が各地で発生する翼手を狩っていたとは思います。でもそれ以上は決めていないので、ハジがチェロを弾いて日銭を稼ぎ、小夜のためにソーキそばを作っていたとかは、二次創作自由です。この期間で小夜たちは成長はしていますけれど、彼らの時間が止まっていたという方が良いのかなと思います。あとチェロも弾くし、踊りも踊るけれどハジは料理だけはできないはずです。

――小夜が序盤に病室で食べていたサンド状のおにぎりの正体はなんでしょうか

藤咲:(実際のシーンを出しながら)ポークサンドおにぎりです。沖縄の取材で食べました。スパムが入ってるんですよね。

アシ:おいしかったですね、四角くて。

――ソロモンのプロポーズに勝算はあったのでしょうか

藤咲:ありません。彼は自分の思いをぶつけてみたかった。言わずにいられなかったんですね。彼の性格を考えると争ってまで何かを勝ち得るよりも誰もが幸せになれる世界を考えてしまうため、最終的には相手の気持ちを優先させてしまうでしょう。

――ネイサンは一体何者だったのでしょうか

藤咲:最初はただのシュヴァリエで、ヒトラーの画家の友人という設定でした。しかしデューヴァがオペラを歌うということもありプロデューサー的な奴が居てもいいのかなと。裏設定的には頭をつぶされて死んでいたSAYAのミイラのシュヴァリエで、「観察者」の立ち位置になりました。

――翼手の女王は必ず双子とのことですが、SAYAにも姉妹がいたのでしょうか

藤咲:世界のどこかには小夜と同じような翼手がいると思います。ただその数は少ないでしょう、いたとしても隠とん生活だと思います。

――シフたちが口にしたのが、ディーヴァの血であれば延命できたのでしょうか

藤咲:難しいと思います。あらかじめ「滅びる」ようにされているので、ディーヴァの血を手に入れても延命は一時的なものだったかもしれません。小夜もそうですが、シュヴァリエやシフたちは兵器であるという設定がありました。特にシフは戦争の道具に使われるため全員滅びるというイメージでしたね。ただルルゥに関してはジュリアの第5塩基の研究のおかげで定期的な透析治療を受けているため、「赤い盾」の保護を受けて元気です。沖縄の太陽の下で、モーゼスたちの思い出を語り継いでいます。

――小夜以外のキャラクターを主人公にして話を作るとすればどうされますか

藤咲:外伝的なもので良いのであれば、シフかなと思っています。何度も考えてはいますが、終わりが悲しいので……精いっぱい生きた感というのは出せるかもしれませんね。

――主要キャラクターが非業の死を遂げることもありますが、スタッフの皆さんはどう感じておられましたか

藤咲:リクやイレーヌなどのシフたちが死ぬことは当初から予定されていました。ただ視聴者の方からの反響は大きかったです。

――絵コンテを切る際に気を付けていることはありますか

藤咲:画期的な意味での分かりやすさと、テンポです。「BLOOD+」は沖縄の時間を意識してゆっくりめです。

――作品をBlu-rayで出すことは考えていますか

藤咲:現時点は予定はありません。しかし全ては皆さん次第です。

――ハジはピーマンが苦手という設定があったと思うのですが、どこから出てきた話なんでしょうか

藤咲:ピーマンに関しては後付けですね。今日来ているアシスタントがピーマン嫌いなので、その影響だと思います。

――今の技術を使って作品を作るとしたら使ってみたい技術はありますか

藤咲:VRですかね。小夜の視点でハジを見てみたりしたら面白いかもしれません。

――キャラクターが大きく動いたり、揺らぐ演出でこころがけていることはありますか

藤咲:本作のキャラクターは一度決めたことでも揺らぐことがあるということです。やっぱりみんな人間ですから。

 また会場には、ヤマザキコレさん、石井明治さん、箸井地図さん、摩天楼オペラさん、 喜多村英梨さんらのメッセージが届いており、会場には石井さんの姿も。当時、藤咲監督からの「版権物は基本的に断らずにどんどんやる」という方針からアニメージュやアニメディアなどのアニメ誌に数々の版権イラストを掲載していた本作。アニメ誌でも作画を担当していた石井さんに当時のイラストを見せると「懐かしいです。いろいろやったなぁ」と笑顔で話してくれました。

 またイベント前に、本作のキャラクターデザインやエンディングイラストなどを担当した箸井地図さんにもインタビューを行いました。

箸井地図インタビュー

――「BLOOD+」の魅力のひとつといえばキャラクターのデザインです。どのキャラクターも本当にステキなのですが、主人公・小夜のイメージについてはどのような要望がありましたか

箸井:当初は「BLOOD THE LAST VAMPIRE」の続編になると思っていたので、小夜はカッコイイ路線のキャラクターになるんだろうとイメージしていました。しかしまずは「そこを切り離して考えてください」と最初に言われました。メインキャラ数体と同時に案を出していたのですが、やっぱり一番時間がかかったのは小夜でしたね。ぽってりした唇には(監督から指定があったかもしれませんが)「(無印の)BLOOD」へのリスペクトとして小夜というキャラクターに残したいという思いがこもっています。髪型も、ロングバージョンやショート、ボブ等色々考えたんですが最終的にショートに決まりました。後のディーヴァとの対比を考えてもショートにしたことは大正解でしたね。

――ハジのイメージはどのようにして作り上げられましたか

箸井:ハジはわりとすんなり決まったように思います。藤咲監督から「長身痩躯、翼手の手を持つ」などのイメージをデザインに入る前に説明を受けたうえでデザインしました。顔の造形は「ビヨルン・アンドレセンのような感じで」と言われ、イメージ的には納得したのですがあの「この世のものとは思えないような美しい顔」を自分の絵柄で再現するのは難しく……結局、自分の絵柄の中で「ハジらしい顔」を模索しました。OKが出た後も正解だったのかどうかしばらく不安だったのですが、石井(明治)さんの絵になって動いているハジを見たときにその不安は一気に消し飛びました。

――キャラクター原案初期から放送まで(決定稿まで)でもっとも印象が変わったキャラクターは誰ですか

箸井:ネイサンはオネエ言葉だったりして当初どんなキャラクターになるのかが読めませんでした。髪型案が大量にあったりして、イメージする際に悩んだ形跡がみられますが結果的にすごく深みのある面白いキャラクターになりましたね。デザイン時と放送でもっとも印象が変わったキャラクターというとなんといってもルルゥでしょうか。彼女があんなにかわいくなるとは全く思ってなかったんです。シフは人数も多いし衣装も全員同じということもあって、それぞれ個性的な特徴をつけないとと考えたときに日野日出志先生の恐怖漫画のような顔のキャラクターが1人くらいいても面白いんじゃないかと。あとソロモンは当初の案では線のような目(常に笑っているような顔、目を開けない感じ)だったんですよ。意外かと思いますがそういう案もあったということで……。

――このキャラクターはここがコダワリ! というものがあれば教えてください

箸井:メインキャラではありませんが、リーザの下睫毛とカルマンの眼鏡でしょうか。リーザは最初の登場回以降、ほぼ中身がアンシェルにすり替わっていた訳ですが、あの下睫毛が怪しさを演出していて素晴らしいなと思いました。またカルマンはシフだから必要ないのかもしれませんが、眼鏡にしたかったんです。藤咲監督、カルマンってだて眼鏡なんでしょうか(のちに筆者が確認したところ、だて眼鏡とのことでした)。あと個人的にはテッド・A・アダムスが大のお気に入りです!

――最終回をはじめ、BLOOD+はED絵は放送当時から大きな話題となりました

箸井:EDは藤咲監督や演出の松本淳さんのコンテをいただいて、それに沿った絵を描きました。どれも思い入れが深いです。

――今回の10周年イベントでは「箸井さん直筆のオリジナルイラストをプレゼント」という企画がありますが、どのように思い立たれたのでしょうか

箸井:なんせ10周年ですから! 10年も応援して下さるファンの方がいるのは本当にうれしいことです。私自身もBLOOD+に特別な思いがあるので、10周年のイベントをやるのであれば微力ながら何かできるることがあれば……と考えました。

――最後にファンの皆さんへメッセージをお願いいたします!

箸井:BLOOD+のキャラクターを愛してくださってるファンの方に喜んでもらえたらと思い、今回色紙を描きました。BLOOD+をずっと好きでいてくれるファンの皆さん、本当に有難うございます!

 イベントでは藤咲監督によるプレゼント抽選会が行われ、藤咲監督デザインのキャラクターカード全種セットや箸井地図さん直筆の色紙、石井明治さん直筆のメッセージカードなどがプレゼントされ、引き当てたファンはとびきりの笑顔を見せていました。

 抽選会の後には新作となる続編小説「BLOOD#(仮)」と朗読劇「BLOOD+ 1945(仮)」が藤咲監督により発表され、会場から割れんばかりの拍手が贈られました。「BLOOD#(仮)」に関するものとしてスクリーンには、肩まである髪に優しい目をした奏とショートヘアーに落ち着いた雰囲気で眼鏡姿の響が並ぶイラストでが投影されました。

 もちろんデザインは箸井さんで、制服姿の2人はともに中高生くらい。舞台は東京になり、デヴィッドとジュリアの息子・アダムと新たな物語を紡いでいくとのことです。最終的には沖縄を目指すという話も……?

 今回新作発表の場を「ファンミーティング」としたことについては、「やっぱりファンの皆さんに一番にお伝えしたかったからです。僕の宿題をこれで片付けられるのではないかと考えているので、楽しみにお待ちください」語った藤咲監督。

 元ちとせさんの「語り継ぐこと」が流れるなか「この作品は私が初めてアニメ作品に関わった作品で、自分の人生を決めた作品でした。今日ファンミーティングに参加させていただけて本当にありがたかったです。ありがとうございました」とアシスタントさんもあいさつ。「本当に10年もの間応援してくださってありがとうございます。今日やっとこの言葉が言えました」と話す藤咲監督はこの日一番の笑顔を見せていました。

 2017年2月には新たな物語が展開する「BLOOD+」シリーズ。翼手と人間の未来はいかにして紡がれていくのでしょうか。新たな物語のスタートまで、小夜とディーヴァの物語はファンによって語り継がれていきます。

最終更新:9/12(月) 1:54

ねとらぼ