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プラチナゲームズ・佐藤賢一社長インタビューの完全版を掲載!

ファミ通.com 9/12(月) 20:02配信

●誌面の都合で掲載できなかった部分も全部載せます!
 2016年2月に創立10周年を迎えたプラチナゲームズ。4月からは経営陣を刷新し、同社の代表取締役社長には、プラチナゲームズ創立時から経営のキーマンとして手腕をふるっていた佐藤賢一氏が就任。週刊ファミ通2016年9月22日号(2016年9月8日発売)では、そんな佐藤社長のインタビューを掲載した。今回は、誌面のスペースの都合で掲載できなかった部分も含めた、佐藤社長インタビューの完全版を公開する。

●社員全員が会社のビジョンを共通目標として持つことが大切
--社長に就任されたのが今年の4月となりますが、改めてプラチナゲームズの社長に就任された経緯をお聞かせください。

佐藤 弊社は今年の2月に10周年を迎えたわけですが、これまでの10年を振り返ってみると、10年間で10タイトル(海外のみ発売のタイトルを含む)をリリースしてきました。

--10年で10タイトルは、多いですよね。

佐藤 多いほうだと思います。それもあって、ユーザーの方やメーカーの方にもプラチナゲームズという名前は認知されたのかなとは思います。ただ、もともとプラチナゲームズを立ち上げたときに、“ユーザー満足度世界一のゲームスタジオになろう”というビジョンを掲げていましたので、それを達成できたかというと、まだまだ足りていないなと。10年前に50数名で立ち上げて、いまは社員も200人近くまで増えましたけど、社員たちが、つねに設立時に掲げたビジョンに向かってゲーム作りができていたかというと、正直そこまではできていなかったと思っています。

--そこまで余裕がなかったのでしょうか。

佐藤 目の前の仕事だけに没頭することが多くなってしまったというのはありますね。10年という節目は迎えられましたけど、この先10年、20年と会社を存続させることを考えると、いままでと同じスタイルで続けていたら、先行きがないと思っています。10年という節目で、会社の体制も含めて大きく変更して、新しいプラチナゲームズとしてやっていくんだという覚悟を持って、経営陣も刷新しました。

--具体的には、会社の体制をどのように変更されたのでしょうか?

佐藤 会社のビジョンを達成するために足りないことは何かと考えたときに、共通目標を全員で持つということができていなかったと。山登りでたとえると、まずは、みんなでどの山に登るかを決めますよね。そして、頂上にたどり着くことが最終目標になります。

ーーなるほど。ゲーム作りでいうと、それがゲームの完成を意味するわけですね。

佐藤 僕は、頂上にたどり着いたときに、そこでどんな景色をいっしょに見るのかというのを考えることが大事だと思うんです。山登りでは、天候が不順になったり、雪崩などで予定していたルートが通れないなんてこともありますよね。そういうときでも、「頂上であの景色をいっしょに見よう」と最初に決めておけば、当初の予定と多少違っても、バラバラにならずに、みんなそれに向けて進んでいけます。会社の経営も同じで、“ユーザー満足度世界一のゲームスタジオになる”というひとつの目標があれば、たとえ困難なことがあってもブレずに進むことができると思っています。ただ、全員がその気持ちを持っていないと、途中で困難なことがあったときに、みんながバラバラになってしまい、はぐれてしまう人が出てきたりしてしまう。これまでの10年を振り返ってみると、個々のゲームに関しては、みんないいものを作り上げてくれたと思います。ただ、会社のビジョンに向かってつねに動けていたかというと、その意識が少し弱かったんじゃないかと思うんですよね。

--作品はキチンと仕上げていたけれど、目標に対する意識が足りなかったと。

佐藤 そうです。なので、みんなで共通目標を持つことを大事にしようと思っています。

--ほかに、社長に就任されてから取り組まれていることはございますか?

佐藤 自分たちの作っているゲームだけではなく、会社全体の動きに興味を持ってもらうということを大事にしていこうと思っています。そのために、月に1回、スタッフ全員を集めて、各プロジェクトの進捗状況や会社の取り組みなどを共有する会議を設けています。これまでも、年に1回、期の最初に報告会を開催してはいましたが、それを毎月行うようにしました。しかも、映像やスライドも必ず用意して、スタッフ全員が会社の現状をつねに把握できるようにしています。これまでは、自分たちが関わっているプロジェクトのことは把握できても、会社の状況やほかのプロジェクトがどうなっているのかというのは、なかなか見えていなかったんですよね。

--とくに忙しいと、そうなりがちですよね。

佐藤 しかも、当然ながら会社というのは、ゲームを作ること以外にも、いろいろな動きがあります。でも、そこに関わっている一部の人だけが知っている状況だったんですよ。そういったことも含めて、全部をスタッフに公開して、会社に興味を持ってもらうということを今後も継続していきたいです。あと、開発に関しては、稲葉(プロデューサーの稲葉敦志氏)を責任者として意思決定のスピードアップを図るなど、より効率化していますが、もうひとつ大きく体制を変更した点があります。6月からは裁量労働制に移行し、その上で土日祝日と22時以降の深夜勤務を原則禁止にしました。

--えっ、それはかなり思い切りましたね!

佐藤 とくに日曜は、セキュリティーカードをかざしても会社の中に入れないようにしたので、ナイショで働くこともできません(笑)。これまでの10年間、がむしゃらに働いてきましたが、それだと疲弊してしまいますからね。働くことはもちろん大事ですけど、自分の時間も大切で、それもあっての人生じゃないですか。ここは思い切らないと、いつまで経ってもこれまでと何も変わらないので、中途半端なことはせずにスパッと。こうなると当然、使える時間がこれまでよりも限られてきますから、いままでとは違うスタイルでゲームを作らないといけなくなってくると思うんですよ。そんななかで各々が創意工夫しながら、かつ心身ともに健康的に働ける環境を作っていけたらいいと思っています。

--プラチナゲームズをよりよく変えたいという、佐藤社長の気持ちが伝わってきますね。

佐藤 僕は、行動してから考えるタイプなので、いいと思ったことはすぐに直感的に実行していますね。当然失敗することもあるだろうし、読み違いもあるかもしれないけれど、とりあえずやってみて、うまくいかなかったらまた考えればいいやと。失敗から学ぶこともありますので、失敗を恐れずにいいと思ったことをどんどん取り入れていくことが大事だと思っています。

--まだ体制を変更してから日も浅いですし、効果が見えてくるには時間が必要ですからね。

佐藤 といっても、あまり悠長には考えていません。とにかくこれまでと同じだと会社は存続できないと思っていますので、できるだけ早く成果を出したいと思います。

●サイゲームスとの新規プロジェクトが始動!
--8月21日に開催されたサイゲームスさんの発表会で、サイゲームスさんとの新規プロジェクトが明らかになりました。こちらの経緯をお聞かせください。

佐藤 まずは『ロストオーダー』ですが、もともと、松野さん(クリエイターの松野泰己氏)と「何かおもしろいことができたらいいですね」という話をしていて、松野さんのアイデアによる作品の企画・開発を進めていました。そうした中で、スマートデバイスの進化のスピードがとても速く、プラチナゲームズの開発力や技術力を十分に発揮できるプラットフォームになってきたと感じるようになってきたのと、いわゆるネイティブアプリのユーザー数も、とくに国内では増えていますよね。僕らはこれまで、コンシューマー(家庭用)向けにゲームを作ってきましたが、ネイティブアプリのユーザーとコンシューマーのユーザーを見てみると、重なっていないユーザーもたくさんいるわけです。僕らが掲げる“ユーザー満足度世界一のゲームスタジオ”というのは、すべてのゲームユーザーに僕たちのゲームを楽しんでもらいたいという想いですので、この作品はスマートデバイス向けに作ろうということになりまして。

--最初からスマートデバイスありきで開発していたわけではなかったんですね。

佐藤 そうですね。最終的にはサイゲームスさんにも乗っていただけたので、正式にプラチナゲームズとサイゲームスさんの共同プロジェクトとして、協力しながら作り上げています。

--プラチナゲームズさんといえばコンシューマーのゲームというイメージが強いので、とくにインパクトがありますね。

佐藤 これが、ただ普及しているからという理由だけで開発したら絶対にうまくいかないと思いますが、先ほども言った通り、スマートデバイスでも我々の技術力や開発力を発揮できるというのがわかっていますからね。コンシューマーとかスマートデバイスとかは関係なく、我々が作るおもしろいゲームを、世界中のひとりでも多くの人に遊んでもらって、笑顔の輪を広げていきたいと考えています。

--とてもすばらしい話だと思います。続いて『グランブルーファンタジー Project Re:Link』ですが、こちらはサイゲームスさんの『グランブルーファンタジー』をアクションRPGとして制作すると発表されました。

佐藤 発表会で稲葉も申し上げましたが、昨年の秋ごろに、サイゲームスの渡邊耕一社長と春田さん(プロデューサーの春田康一氏)が弊社にいらして、「『グランブルーファンタジー』で何かおもしろいゲームを作れませんか?」というお話をいただいたのがきっかけですね。もともとサイゲームスさんも、“最高のコンテンツを作る会社”というビジョンを掲げておられますし、そういう意味ではプラチナゲームズと共通する考えかたを持っていると思いますので、新しい『グランブルーファンタジー』をファンの方はもちろん、より広い範囲のゲームユーザーにも届けたいという想いにも共感しました。あとは、『グランブルーファンタジー』という、あれだけ人気のタイトルを、僕たちがどのようにゲーム化できるのかということに対して、非常に刺激的な企画だなと思って、「いっしょにやりましょう」ということになりました。

--ゲームの仕様に関しては、プラチナゲームズさんのほうである程度自由に考えられるのですか?

佐藤 当然、世界観などはサイゲームスさんの担当になりますが、ゲーム性などに関しては「プラチナゲームズらしさを出してほしい」と言われております。僕らの得意とする部分をしっかりと出して、期待に応えたいですね。弊社のスタッフにも『グランブルーファンタジー』のファンは多いですから、楽しみながら作っていると思いますよ。

--御社の場合は、すでに『Scalebound(スケイルバウンド)』や『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』が動いておりますし、もしかしたら、まだこの世に出ていないタイトルもあるかもしれませんが……。

佐藤 あるかもしれませんね(笑)。

--そんななか、今回のビッグプロジェクトがふたつも判明しました。ますますお忙しくなりそうですね。

佐藤 稲葉を中心に開発スタッフががんばってくれますから大丈夫です(笑)。先ほども申しましたが、現場の体制も改めて、士気も上がっていますし、会社のビジョンの実現に向けて、みんなのモチベーションを高めていくのが僕の役目だと考えています。

--期待しています。あと、これもお聞きしておきたいのですが、10月にプレイステーション VRが発売されます。これまでゲームに興味がなかった人も、ゲームに興味を抱くきっかけになる可能性も秘めていますよね。

佐藤 その通りだと思います。

--ゲーム業界にとっても非常に大きなトピックだと思いますが、御社としてはVRというものをどのようにお考えでしょうか?

佐藤 ゲームが2Dから3Dになったときもそうでしたが、VRというのは大きなエポックメーキングになると思いますし、今後ますます注目を浴びるでしょうから、社内でも研究・開発はずっと続けております。まだ具体的な話はできませんが、我々が得意とするアクションも、VRを使うことでおもしろい展開ができそうですし、当然VRというものを無視するわけにはいかないと考えています。

●プラチナゲームズのIPを3年以内に完成させたい
--最後に、すでに11年目に突入しておりますが、今後のプラチナゲームズをどのようにしたいとお考えですか?

佐藤 僕は社員の皆がプラチナゲームズで働いていることを誇りに思ってくれるような会社にしたいと思っています。会社で仕事をすることが楽しくてワクワクドキドキするような、刺激のある会社にしたいです。そのためにも、いろいろなプロジェクトや、刺激のあるものをつねに考えて、新しいことをやっていきたいですね。より具体的な話をすると、僕たちはまだ理想的な意味でのAAA(トリプルエー)のタイトルは作れていないと思うんです。“ユーザー満足度世界一のゲームスタジオ”になるためにも、これまで以上に世界に通用するようなタイトルを作り続けていきたいですね。我々は、ゲームスタジオと言うとかっこよく聞こえますが、要は請負なんですよ。請負にはいい点も悪い点もありますが、相手があってのことですので、経営的な観点からすると、どうしても不安定な状態に陥る場合もあるわけです。そこは脱却していきたいというのと、会社のビジョンを実現するためにも、自分たちのIP(知的財産)はどうしても持ちたい。

--ずっとおっしゃっていますよね。

佐藤 とはいえ、具体的に動けていたわけではなかったのですが、いまは実現に向けて動いています。すでに社員には、「3年以内に実現する」と公言していますし、社内で企画コンペも行っています。いままでとは違い、ただ持ちたいと言っているだけではなく、期限も決めて、実現に向けてみんなで動き出しているということです。IPを持てれば経営基盤が安定して、さらに新しいチャレンジがしやすくなりますので、率先して進めていきます。

--ゆくゆくは、作ったIPを自社でパブリッシングしていくことも考えておりますか?

佐藤 パブリッシングと言ってもいろいろなやりかたがありますが、まずは自分たちのIPを作ることです。作った後で、自分たちで売るのがベストならそうするかもしれません。自分たちのIPができてからベストなパブリッシングの方法を考えればいいわけですから。

--“あれを作った会社”といった感じで、プラチナゲームズさんの名前をより多くの人に
知ってもらえたらうれしいですよね。

佐藤 それが究極の理想ですね。おかげさまで、いまも多くのユーザーの方に応援していただいておりますが、プラチナゲームズという会社を知らないという方もまだまだたくさんいますので、ゲームを遊んでいる誰もが知っているような会社を目指して、ゲームを遊んだ方たちの“笑顔の輪”を広げていきたいです。

最終更新:9/12(月) 20:02

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