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もしも、上司が会議で「いいね!」と言い続けたら

@IT 9月12日(月)11時46分配信

●無気力の理由

 主に顧客システムの開発から運用までを担当しているITエンジニアAさんの話を紹介しよう。

【提案する方はドキドキなんです(イメージ画像)】

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 ある日、自分が携わっている業務に関して改善提案をした。しかし、上司とリーダーが同時に「それは無理だ。お金が掛かるし、技術的にもとても手間が掛かる。簡単には実現できない」と反対意見を口にした。一刀両断だった。

 その後も会議の場や上司たちとの個別の会話内で幾つかの業務改善提案を試みたものの、毎回「無理だなぁ」「それは予算が取れないなぁ」「効果が分からないなぁ」など、さまざまな理由で否定された。そのうち、上司やリーダーに改善提案すること自体を諦めてしまった。
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 こういう状態に陥ることを心理学では「学習性無力感」と呼ぶ。心理学者セリグマンが提唱した概念で、「無力であること」を「学習してしまう」と、状況を変えられる場面であっても、自分からはもう変えようとしなくなるというものだ。

 上司やリーダーはAさんのことを「やる気がなく指示待ちだ」と思っているようだが、彼がそうなったのには理由があったのだ。

 もちろん、上司やリーダーから見れば、Aさんの提案が未熟なのかもしれない。考えが具体的でない、改善の理由が分かりにくい、などの理由もあるのだろう。ならば、Aさんは「提案力」を高めることが必要だ。

 しかし、上司やリーダーの「聴き方力」にも再考の余地はある。

●それ、いいねえ。

 別の企業に勤めるITエンジニアBさんの話を紹介したい。

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 社内会議で「次期のビジネスプラン」を検討していた時のことだ。「来年はこんなことをやってみたい」「こういう仕事を手掛けてみたい」と出席者が次々と希望を口にした。すると、司会進行の上司が全ての意見やアイデアに対して、「それ、いいねぇ」「いいなぁ、それ」「それ、面白いじゃない」と肯定的な反応をしてくれた。

 さらに、「そう、そう、そういう感じでもっとない?」「いいねー。もっと他にも思い付かない?」と促した。全員からの発言に全て「いいね」「いいね」と言い続けた結果、各メンバーから多くのアイデアが出された。
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 Bさんは会議後、「どうしてあんなに会議が活性化したのだろう?」と考え、「肯定的な反応があると、気持ちが萎縮せず、発想が広がり、勇気を持って発言できるようになるんだな」と思い至ったと言っていた。

 私も似たような経験をしたことがある。ある企業の経営者と「プロジェクトの進め方」について議論していたときのことだ。彼は私の意見に対して「いいですねぇ」「それは面白い考えですねぇ」「ほぉ、ボクには思い付かなかったなぁ」と全て肯定的に反応してくれたのだ。

 年齢も社会的立場も私よりもうんと上で気後れする相手ではあったが、この反応のおかげで私は臆することなく考え、のびのびと発言できた。このプロジェクトは関係者全員が楽しく取り組み、無事終了できた。

●もっと、もっと!

 人は反対されると委縮するし、自信を失いやすい。「それはダメだ、もっといいモノないの?」と言われると、「いいもの」を考えるより先に「さっきの意見のどこがダメだったのか」を考えてしまう。「今の意見がダメなら、新しく出す意見だってダメではないか」と頭の中でぐるぐる考えてしまい、意見が言えなくなったり、発想がストップしたりする可能性もある。

 「それいいね。他にもっとない?」と「それはダメだ。もっといいのないの?」は、後半が似ているけれど、前半に大きな違いがある。「いいね」「ほぉ」「なるほど」と受け止められた上で「他には?」と訊かれると、「そうだなぁ、もっとないかなぁ」と頭が自由に動くようになる。

 自分の考えと異なることを言われるとつい否定したくなってしまう人は、「そうじゃなくて」「それはダメだね」「無理でしょう」「実現できると思う?」などと「ダメ出し」をしてしまう。ダメ出しされて奮起する人も中にはいるだろうが、委縮してしまうデメリットの方が大きい。

「いいね。それで? それで?」「面白いねぇ。もっともっと」「なるほどー。他にもある?」

 否定より肯定。肯定した上で、さらに先を促す話法は、相手のやる気を高めるのにとても有効だ。人と協働していく全ての人が覚えておいて損はない。

最終更新:9月12日(月)11時46分

@IT

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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