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焦点:緩和バブルの修正開始 日本株にもグローバルマネーの売り

ロイター 9月12日(月)18時44分配信

[東京 12日 ロイター] - 世界的な金融緩和バブルが、修正されようとしている。米国の利上げ観測に加え、日欧の金融緩和政策の転換点も意識されるなか、長期金利が上昇。リスク資産は大幅安となり、日本株にもグローバルマネーの売りが押し寄せている。

世界的な景気は弱く、金融緩和環境は維持される見通しだが、過度な織り込みはいったん見直しを余儀なくされそうだ。

<日米欧で相次ぐ金利上昇材料>

足元の世界同時の金利上昇は、9月の米利上げ観測だけでは説明がつかない。まず、政策金利の上昇観測に反応しやすい米短期金利の方が、米長期金利よりも上昇幅が小さい。それだけではなく、金融市場が織り込む9月利上げ確率(CMEフェドウォッチ)も9日時点で24%と、わずか3%ポイントの上昇にとどまっている。

では、世界的に金利が上昇したのはなぜか。1つは欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁発言だ。ドラギ総裁は8日のECB理事会の会見で、理事会では資産買い取りプログラムの延長について討議しなかったと発言。市場の緩和期待に水を差した。ドイツに財政措置を促したことも、当面の緩和期待を後退させる要因となった。

9日の欧米市場における金利上昇は、ハト派の米ボストン地区連銀総裁が、利上げを待ち過ぎることのリスクが大きくなりつつあると発言したことがきっかけとされる。だが、世界的な金利上昇は同発言の前から始まっている。「発言はあくまで世界的な金利上昇の補強材料にすぎない」(国内銀行アナリスト)との見方がもっぱらだ。

もう1つの金利上昇要因は、日銀による金利スティープ化観測だ。ロイターは9日、日銀が9月20─21日に議論する総括検証を踏まえ、イールドカーブのフラット化の修正策を検討すると報じた。これを受けて円債市場で長期金利が上昇。「スティープ化の流れが世界的に広がった」と、りそな銀行・総合資金部チーフストラテジストの高梨彰氏は指摘する。

<市場は緩和の限界を意識>

米連邦準備理事会(FRB)はいち早く昨年末に利上げに動いたが、量的緩和(QE)時代に膨らんだバランスシートは、そのまま維持されている。日欧はその間も金融緩和を強化してきた。多くの国で国債金利がマイナス圏に沈む様相は「金融緩和バブル」と呼ばれることも多い。

しかし、中央銀行が国債を大量に買うことで、マネーを市場に放出する金融緩和手段は、限界が意識されるようになってきた。ECBは金利が低下したドイツ国債をほぼ買うことができなくなったほか、日本でも国債購入の大幅な積み増しは難しくなっているとの見方が市場では多い。金利スティープ化の議論が浮上するのは、金融機関におけるマイナス金利の副作用が大きいからに他ならない。

日本や欧州の金融緩和フレームが、限界を迎えたのか議論の余地はある。だが、少なくとも市場では「これまでの金融緩和バブルが修正され、金利低下を背景に株価が上昇してきた金融相場がいったん調整を迎えることになりそうだ」(JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏)との見方が広がり始めている。

米利上げ期待によるドル高/円安が進めば、日本株下支えが期待できる。だが、9日の米ダウ<.DJI>は400ドルに迫る大幅安。リスクオフムードが強まる中で、円安の勢いも102円台で減衰してしまった。12日の日経平均<.N225>は一時364円安。「グローバルマネーの売りが日本にも押し寄せている。日銀のETF買いで止められるものではない」(外資系投信)という。

<景気不安強いなかでの金利上昇>

これまで金融緩和後の金利上昇局面では、景気が回復し、物価も上昇した。企業業績も拡大するという、金融相場から業績相場への移行が想定されたため、金利上昇の悪影響を抑えることができた。しかし、今回は金融緩和の限界が取りざたされるなかでの金利上昇だ。金利上昇のショックを吸収できる余地は乏しい。

FRB高官のタカ派発言に神経質に市場が反応したのも、日欧発の金利上昇局面が強まっていたというだけでなく、8月のISM米景気指数が製造業、非製造業ともに市場予想を下回るなど米景気への不安が台頭していたためだ。「ハト派発言を予想していただけに驚きだった」(邦銀ストラテジスト)という。

「金融緩和が長引いたことで、不動産市場などのゆがみが強まることへの警戒があるのだろう。9月米利上げが実施されるかどうかはともかく、最近のFRB高官の発言からは金利正常化への強い意思を感じる」と三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏は話す。

景気改善による金利上昇ではないだけに、金融緩和環境は維持せざるを得ない。マネーはまた、債券市場に帰ってくる可能性は大きい。20─21日の日米中銀会合で金融政策の不透明感が払拭されれば、金利上昇はいったん打ち止めになるかもしれない。金利が上昇すれば、投資家のイールドハンティングの動きも強まるとみられている。

しかし、長引く超金融緩和でバブルは大きくなっている。崩壊に至らないにせよ、その修正は市場に多大な影響を及ぼしかねない。

12日の東京株式市場で銀行株<.IBNKS.T>は2%下落した。日経平均の1.73%を超える下落率だ。円債市場では金利のスティープ化が進んだが、それを素直に好感する動きではなかったことは、投資家の警戒心を示していると言えそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

最終更新:9月12日(月)18時44分

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