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グアルディオラとモウリーニョ 水と油のようでありながら、近親憎悪の関係

AbemaTIMES 9月12日(月)12時0分配信

グァルディオラの師でもあるヨハン・クライフは、常に選手と一緒になってボールを蹴る監督としても知られていた。FCバルセロナの担当記者にその理由を問われた彼は、大まじめにこう答えたという。
「わたしより上手い選手が一人もいないからさ」

あの時、もう50歳になろうとしていたクライフから“自分より下手”とされてしまった選手の中には、グァルディオラもいた。だが、彼を含めたバルサの選手から反発の声が上がった、という話は聞かなかった。
確かに、「シルキー」としか表現のしようのないクライフのトラップに比べれば、グァルディオラのそれは「象の尻」だった。それは、ワールドカップの得点王になったロマーリオにしても同じこと。選手としては、反発する余地はまったくなかっただろうし、何より、自分たちの指揮官が天上天下唯我独尊の人物であることを、彼らはよく知っていた。実に興味深い。

ジョゼ・モウリーニョがバルセロナにやってきたのは、クライフが解任された翌年だった。後任のイギリス人監督ボビー・ロブソンの通訳としてチームに入った彼は、当然、クライフの薫陶を受けてはいない。にも関わらず、「クライフの子供」と言われ、目指すサッカーの方向性もそのまま師のスタイルを受け継いだグァルディオラより、モウリーニョの方がクライフ的な匂いを漂わせている。
嫌いだという人からはとことん嫌われる、あの鼻持ちのならないところあたりは、特にだが、クライフがチームを追われた直後のバルセロナで、鼻持ちならない気配を漂わせていたのは、グァルディオラの方だった。ベンチからの指示を聞く際の態度などは、明らかにクライフ時代のものとは違っていた。指示を伝えていたのは、むろん、通訳である。
何の後ろ楯も持たず、単身ビッグクラブに乗り込んできた名もないポルトガル人通訳の目に、前任者への思慕を捨てられず、現監督をないがしろにしていると取られても仕方のない態度を取るチームのスターは、どう映っただろう。
後に大監督へとのし上がったモウリーニョが、チェルシー時代からバルサを、というよりグァルディオラを目の敵にしたのは、だから、わたしにはわかる気がする。

20世紀を代表するスーパースターとされたクライフも、もともとは弱小国オランダの無名選手だった。そこからのし上がるためには、人間として攻撃的にならざるをえない部分もあったのだろう。モウリーニョにとっても必須で、しかし若いころから地元のスターとして注目を集めてきたグァルディオラには、必要のなかった資質である。

クライフの元で育った、クライフ的資質を必要としなかった男。
クライフと無縁だった、クライフ的資質なくしてはのしあがれなかったであろう男。

水と油のようでありながら、近親憎悪の意味合いも持つこの関係。
果たしてペップのマンチェスター・C監督就任なくして、ジョゼのマンチェスター・U入りがあったかどうか。つまり、マン・Uのフロントは動いただろうか。そして、チェルシーへの深い思いを公言してきたモウリーニョが、オファーを受けたかどうか──。
わたしの知る限りの過去までさかのぼってみても、選手同士のライバル関係は数えきれないほどあるが、監督同士がここまで火花を散らす関係というのは、ちょっと記憶にない。そういう意味では、いま現在を生きるサッカーファンは、歴史上極めて珍しい対決の構図を楽しめていることになる。

率直にいって、試合内容には失望させられた。マンチェスター・Cの方に、特にガッカリさせられた。
確かに強かった。ただ、衝撃はなかった。バルサでも、バイエルンでも、選手たちがびっくりするほど化けたのがペップのチームだったが、いまのところ、16年のシティには15年の匂いが色濃く残っている。
ブスケッツ? 誰だそりゃ──といった驚きや、ボールをボカスカ蹴っていたバイエルンの選手たちが徹底的にサイドキックにこだわるようになっていた衝撃は、残念ながらほとんどない。
ダイレクトパスの割合も、過去のペップのチームに比べればずいぶんと少ない。それでも勝ててしまうのだから必要がないのかもしれないが、ボールポゼッションの極みを目指した時代に比べると、確実に“純度”は落ちている。

だが、正直いってそんなことはどうでもいい。
試合前、ジョゼとジョゼップは握手を交わした。モウリーニョは満面の笑みで、グァルディオラは硬い表情で。
そもそもありえるのか、という報道もあった中、あっさりと実現した両者の握手。2人のこれまでの経緯や、これからまた続いていくであろう絡み合う関係を考えただけで、わたしは十分に満足できてしまった。
いまは、リターンマッチがとにかく楽しみである。

文・金子達仁

最終更新:9月12日(月)12時0分

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