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DAZZLE主宰の長谷川達也 海外でも絶賛のダンスのルーツ

朝日新聞デジタル 9月12日(月)15時2分配信

【私の一枚】

 これは僕が幼稚園のお遊戯会のときの写真です。インディアンの扮装をして踊っていますが、なんかすごいノリノリですね(笑)。小学生の頃から、人に注目されるのが好きだと自覚していましたが、これを見ると幼稚園の時から、どうやらそうだったみたいです。

【写真】お遊戯会でノリノリの幼稚園時代

 小学校の時は学芸会などの主役に立候補して、舞台で喝采を浴びることをすでに気持ちいいと感じていました。今も昔も本番に強く、小さい頃から練習よりも本番にスイッチが入って演じ切るタイプ。運動も得意で、やはり運動会で目立つのが好きでしたね。

 そんな僕とダンスとの出会いは中学生の頃です。素人が参加するダンスのバトル番組で、踊っている人たちがものすごく輝いて見えて悔しくなり、「こんな思いをさせられるダンスを僕もぜひやってみたい」と。でも実家の近くには習う環境もなく、一緒に続けてくれる仲間もいなかったので、家の畳の上でブレークダンスを自己流に練習し、時々母に披露するぐらいだったんです。

 大学に入学しダンスのサークルに入部、みんなと呼吸を合わせて踊ることが楽しくて。そして最初に舞台に上がった時の喝采の気持ちよかったことといったら。

 こんな世界があるのかと病みつきになり、注目されるにはどうしたらいいかを考え、独自性のある表現をしようと思いました。当時のストリートダンスは、悪っぽい人たちがヒップホップ文化にある不良的な側面を体現するものが多かったんですね。僕はそれとは違う、様々な音楽にのせて、物語性のある表現をストリートダンスの動きで行うことにしました。サークルの中で出会った友人と、大学2年のときに「DAZZLE」を組み、その意味の通り、人々を幻惑させる独自表現をずっと追求してきたんです。就職活動もしましたが、長髪のままだったので、面接で「君、来る気ないでしょ」と見抜かれて。結局就職もせず、バイトしながらダンスの腕を磨いていました。

 新しい表現だったこともあり、コンテストで一般の観客には熱狂的に受けても、審査員からは酷評されることが続きました。一度は大きなコンテストに入賞したものの、その後も僕たちのダンスは異端視されることが多かった。でも結成15年目の2011年に単独公演を成功させたことが転機となり、日本文化を取り入れた幻想的なプログラムなどは、海外でも絶賛されるようになりました。

 今年で活動20周年を迎えていますが、続けてきて本当によかったと思います。今も自分の胸の中にある世界を表現したい欲は枯れることがありません。これまでのダンスの舞台のイメージを覆す、演劇のような物語性のあるステージをこれからも追求しますので、ダンスの公演に行ったことがないという方にも、見ていただけたらうれしいですね。

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はせがわ・たつや 千葉県生まれ。1996年に大学のダンスサークルで出会った仲間とダンス集団DAZZLEを結成。2001年日本最大のストリートダンスコンテスト「ジャパン・ディライト」で準優勝。09年「花ト囮」がグリーンフェスタ演劇祭最優秀作品賞を受賞。昨年は坂東玉三郎が演出の舞台「バラーレ」に振り付け・主演した。

◆長谷川さんが主宰を務めるダンスカンパニーDAZZLE結成20周年記念公演「鱗人輪舞(リンド・ロンド)」が開催される。物語は、大気は汚染され、海も枯れはて、人々が水を奪うために殺しあう世界で、人間不信となったある孤独な男が、人ではないものと出会う。それは千年の時を経て、幾度も繰り返される人間の愚行を見てきた人魚だった。極限状態に追い込まれた時に人は何を犠牲にするのか? 絶望の中から希望を探す物語を、美しく心揺さぶられるダンスで紡ぐステージだ。10月14日から23日まで池袋あうるすぽっとにて開催。

「今回は、物語の結末を2種類用意して、その日の観客の方にいずれかの結末を選んでもらうというマルチエンディング方式にしています。何かを得るためには、何かを失う。そのことを体験してもらいたいと思いました。日本人として今までも物語に日本的なものを入れてきましたが、今回は人魚の肉を食べた八尾比丘尼の伝承を参考にしています。この公演には、僕たちの20年の経験のすべてを注ぎ込み、情景描写だけでなく、キャラクターの心情表現にもこだわって踊りたい。見ていただけたら、ダンスに関する価値観ががらっと変わる体験になると思います」

(ライター・田中亜紀子/朝日新聞デジタル「&M」)

最終更新:9月12日(月)15時2分

朝日新聞デジタル