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豪州「ベーコンエッグ」、パイに町名変更か

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月12日(月)17時32分配信

【エッグズ・アンド・ベーコン・ベイ(オーストラリア)】卵とベーコンから名前をとったオーストラリアのある町が、町名変更の動きを受けて揺れている。問題となっているのは、その奇妙な名称ではなく、名前が高コレステロールな印象を与えることだ。

 エッグズ・アンド・ベーコン・ベイを含む豪タスマニア島フオンバレーの市長を務めるのは、ピーター・コード氏。よりヘルシーな印象を与えるために町名を変更するべきだと話す同氏は、「健康的なライフスタイルを推奨できるだろうからぜひそうするべきだ」と言う。フオンバレーの一角にあるエッグズ・アンド・ベーコン・ベイの名称を変えれば、これまでとは違って採れたての農産物やシーフードを楽しめるスポットとして食通にアピールできるともコード氏は話す。

 「ベーコンエッグに含まれる飽和脂肪やコレステロールの量を考えたら、町名を心臓発作ベイとでも改めるべきでしょう」と主張するのは、動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」の広報担当者だ。ビーガンとして知られる厳格な菜食主義を提唱する同団体が提案する新たな名前は、「アップル・アンド・チェリー・パイ・ベイ」だという。

 この改名問題について地元の意見は固まっていない。

 エッグズ・アンド・ベーコン・ベイでベーコンエッグ・パイを朝食に食べていた大学生のエリザ・ウィザースさんは、「そもそも自分の生活を改めようとしている人がわざわざここを訪れるとは思えない」と指摘。「(町に来ることで)卵とベーコンを食べたくなることはあるかもしれないけど、アップルやチェリーを名前に入れたところで、突然ジョギングに行きたくなるわけでもない」と彼女は話す。

 地元の女性団体が営むお店でお茶を楽しんでいたナオミ・スミスさんも、変更には反対の立場。「もう長いことエッグズ・アンド・ベーコン・ベイと呼ばれているので、名称を変更したら人が迷うことになる」と彼女は言う。

 地元で精肉店を営むグラハム・ビクターさん(67)は自らを「肉食主義」と呼び、当然のように町名の変更には反対だ。ヘルシーさを至高とする考え方にも同調できないと言うビクターさんは「健康志向を重視した生活についてもう100年以上もいろいろと議論があるが、誰かがよりヘルシーなものを提案すると、他の誰かがそれを一蹴している」と指摘。精肉店の前には看板が設置され、そこには「エッグズ・アンド・ベーコン・ベイを守れ! 狭量な人の意見に負けるな」と書かれている。

奇妙な町名の歴史

 エッグズ・アンド・ベーコン・ベイがなぜこのような名前になったのか、正確な経緯は定かではない。地元の知事を務めていた人物の妻がこの町を訪れてベーコンエッグを食べたことに由来するという説もあれば、卵とベーコンのような黄色と赤色の花が地元で咲くから、と説明する人もいる。

 近くの町フオンビルでチョコレート店を営むアンディ・アブラモウィッチさんは、この地域を発見したとされているフランス人冒険家がムッシュ・ウフ・ラルドン(訳注:フランス語で卵とベーコンという意味)という人物だったからという持論を展開する。

 アブラモウィッチさんの店ではチョコレートに加え、入浴に最適だという「ベーコンせっけん」も販売中だ。店舗のカウンターには「ベジタリアンの方が肉を食べる人より9年も長生きだ」と記されたサインが置かれている。ただしそのサインには「ベーコンを食べられないなんて、むごく、価値のない9年間だ」とも付け加えられている。

 オーストラリアにはこのほか、ニューサウスウェールズ州にローストビーフ・クリークやビーフステーキ・クリークと言う地名が存在する。また西オーストラリア州には、ラム肉のロースト料理のような地形をしていることから、地図製作者がレッグ・オブ・ラム・バンクと名付けた場所もある。

 エッグズ・アンド・ベーコン・ベイで教師を務めるピップ・バンクス・スミスさんは、「おいしそうな食べ物を想像しながらも、自由に食べられなかった」開拓者たちが地名に料理名をつけたのではないか、と話している。

観光に力入れるタスマニア

 豪南部にあるタスマニア島は流刑地として利用された歴史を持ち、以前は農業、林業、そして採鉱などが地元経済を支えていた。しかし最近はグルメツアーを売りにして観光業に力も入れ、ワイナリーだけでなくおしゃれなレストランも増えてきている。農家のコテージや果樹園が並ぶ通りには、地元産カンガルーのケバブといった料理を提供するレストランが営業する。

 コード市長は、自宅裏の桟橋で、網を使って夕飯用のサーモンを獲ることもあるという。「この先を南に進むと、そこはもう南極だ。この町はとてもユニークな場所にある」と同氏は話す。

 ベーコン・アンド・エッグズ・ベイの名前を最終的に変更するのは、政府が任命した委員会だ。プロセスとしては、まずコード氏が代表を務めるフオンバレー評議会が変更の承認を与えなければならない。ただし評議会では名称変更が治安などの面で問題がないか、それまでの不便さを解消するものかどうか、そして地元民からの支持を得られているかどうかなどを審査しなければならないという。

パイにしてもカロリー変わらず

 評議会の公式フェイスブックにはさまざまな意見が投稿されているが、そのすべてが建設的なものではない。仮にアップル・アンド・チェリー・パイ・ベイに改名したところでコレステロール値には変化はないとする意見もある。

 オーストラリアの栄養学協会によると、平均的なベーコンエッグ(目玉焼き2つとベーコン2切れ)は、約255カロリーだ。それに対し、既製品のリンゴとベリーのパイ(1切れ113グラム)は、274カロリー。「特にどちらかのほうが栄養学的に良いということはなく、ほとんど同じようなもの」と協会の広報担当者は話している。

 エッグズ・アンド・ベーコン・ベイを訪れていた菜食主義者のレックス・ビューガニーさんは、リンゴとチェリーのパイを食べながら「これはおいしいけど、町の名前を変えてほしいとまでは思わない」とコメント。その横で友人のジム・ファーレーさんはベーコンエッグを食べながら「何か問題があるわけでもないんだから、変える必要はまったくない」と話していた。

By RACHEL PANNETT

最終更新:9月12日(月)17時32分

ウォール・ストリート・ジャーナル