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外来種の侵入、絶滅の危機に対抗するには

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月12日(月)18時12分配信

 ニュージーランド政府は7月、同国固有種の鳥キウイなどを守るため、2050年までにネズミやオコジョ、フクロネズミを国じゅうから完全に駆除するとの方針を発表した。この野心的な計画をいまある手段だけで実行することはおそらく不可能だが、世界中の動物にとって、外来生物の侵入が絶滅をもたらす最大の脅威であることを再認識させるものだ。

 絶滅危惧種の鳥を救うために活動する慈善団体バードライフ・インターナショナルによると、1500年以降に絶滅した140種の鳥のうち、少なくとも71種は外来生物が要因になったとみられる。これは狩猟や森林伐採、農業、火事、気候変動よりも影響が大きかったということだ。

 絶滅した生物の大半は島に生息していた。モーリシャス島にいた大型の鳥ドードーが滅んだ原因は、船乗りの腹を満たすためというよりも、彼らが連れてきたネズミやブタ、ネコのためだった。ハワイにはかつて55種のミツドリが生息していたが、現在は17種しかいない。ネズミと外来の蚊が媒介するマラリアが大きな原因だ。

 大陸も無害ではない。米ミシシッピ川ではアジア原産のコイ、オーストラリアでは南米のオオヒキガエル、ドイツでは中国のチュウゴクモクズガニ、カリブ海では太平洋のミノカサゴが勢力を拡大している。

 外来種が本国を離れたとたんに有害生物と化すのは、新天地にいる生物が無防備な状態でこれと遭遇することが大きい。グローバル化がこの流れを後押ししている。長い船旅では生き残るのが難しい昆虫も、飛行機なら容易に密航できる。一方、生物に対する安全対策であるバイオセキュリティに真剣に取り組んでいるのは、固有種が特に外来種に弱いとされているオーストラリアとニュージーランドだけだ。

 ただし、外来生物が必ずしも脅威になるわけではない。ある地域の生物多様性を高めるというプラスの効果もある。大西洋に浮かぶアセンション島はかつて不毛な火山岩に覆われていたが、森林の生態系を築くために他の熱帯地方から植物を持ち込むというダーウィンの考えに沿った方法に取り組んだ結果、はるかに緑の多い島となった。

 別のメリットとして、外来生物が生態系を損なうのではなく、水や土壌、大気の質を改善する場合もある。米五大湖の1つであるエリー湖に生息する外来種カワホトトギスガイ(ゼブラガイ)は水をろ過する役割を果たし、湖水の透明度が増したという。

 侵略的な外来生物に対処する最善の手段は、他の外来生物であることが多い。原産地に戻り、その生物を食べる昆虫やカビ・キノコなどの菌類を見つけて持ち込むのだ。正しく行えば、こうした生物学的なコントロールは必要不可欠な方法だ。

 そして外来生物への最新の対抗手段は、ゲノム科学だ。米州でデング熱やジカ熱をはやらせたネッタイシマカやヒトスジシマカはアフリカ原産の外来生物で、英バイオ企業のオキシテックは遺伝子組み換えを行ったオスの蚊(オスの蚊は血を吸わない)を大量に放つことによって個体数をコントロールする方法を開発。その蚊の子どもは成熟しないため、ブラジルで行った試験では90%以上、蚊の数を減らすことに成功したという。

 「遺伝子ドライブ」と呼ばれる最先端のゲノム編集技術によって、徐々に不妊状態を引き起こす可能性にも期待が集まる。そうした技術が自然界で実際に有効か、また安全にコントロールできるどうかは分かっていない。科学者は今後数十年にわたり、外来生物の影響を減らしたり、侵入を防いだりする研究に多忙を極めそうだ。

(執筆者のマット・リドリー氏は作家。最新刊に“ The Evolution of Everything: How New Ideas Emerge”がある。英国上院議員でもある)

By MATT RIDLEY

最終更新:9月12日(月)19時8分

ウォール・ストリート・ジャーナル

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。