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【辻にぃ見聞】鈴木愛、栄冠の要因は…重いグリーンをものともしない“激芯パット”

ゴルフ情報ALBA.Net 9月13日(火)11時6分配信

 鈴木愛の2度目の栄冠獲得で幕を閉じた『日本女子プロゴルフ選手権大会』。2014年の同大会で鈴木が勝利して以降、国内メジャーは海外勢の独壇場だったが、日本勢のメジャー連敗を“7”でストップさせた。

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 3日目を終えて首位とは5打差。最終日は序盤2番で1つ落としたものの、そこからは3番で7mのバーディパットを沈めると、強気のパットでさらに3つのバーディを奪取。この日のベストスコアタイとなる“69”で大逆転を果たした鈴木の勝利の『深層』を、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。

■ 生きた音を放つ激芯パット…鈴木のスタイルが有利に働いた

 8月に北海道を襲った台風の影響で想定していた100ミリを超えて約150ミリ程度まで伸びた“長すぎるラフ(※場所によっては25ミリまで)”が選手たちを苦しめたが、台風の影響はグリーンにも…。辻村氏は10フィート程度しか出せていなかった重いグリーンが鈴木の大逆転への道筋に有利に働いたと見る。

 「4日間通して重かったグリーン上では、多くの選手がカップをショートする場面を散見しました。重く、さらに台風の影響で状態が決して良くないグリーンでは、普段よりも大きい振り幅で打っていく必要があります。ショットで疲労したあとに待ち受ける試練といいましょうか。そんな状態のなかでも、自分の持ち味である強気のパットスタイルを貫けていたのは彼女くらいだったと思います」

 鈴木のパットスタイルは、辻村氏いわく“激芯を食らわせるパット”。練習日から試合前日の夕方までとにかくパッティンググリーンでひたすら打ち続けることで有名な“パット練習の虫”を見ていると、ほかの選手との違いがあるとか…。

「パッティンググリーンでもボールとパターの音が一番いい。“音が生きている”といいましょうか。撫でて打っているプロは、芯と芯が当たってもフェース面がズルっと滑って音が逃げます。一方彼女は“コツン!”という激芯を食った音を出している」

 パット巧者はイ・ボミのようにストロークの延長でスッと押し出すタイプは多いが、鈴木は当てるや打つではなく“打ち抜く”を普段から意識。芯を貫く球で、誰よりも薄めにラインを読んでカップの幅+数センチで勝負する姿勢は、今大会の“我慢比べの最後の砦・重グリーン”では大きな強みとなった。

 鈴木は現在平均パット1位だが、“激芯パットスタイル”を突き詰めていくことで徐々に“決められる距離=パットの射程圏内”が広くなり、さらなる進化が期待できると辻村氏。「パット巧者といえる選手の射程圏内が4mとすると、彼女は7mを想定していると思います。7mを外して“本気で”悔しがっている選手はそうはいないですから」

 鈴木は練習量全体の6~7割をパットに費やすといっても過言ではないが、おもな練習は両ワキにスティックを挟んでショルダーストロークで打つ意識を高めるもの。この練習が“フェースに乗る時間=球持ちの長さ”を生んでいる。

「スティックを挟んで打つメリットは、左ワキがつねに締まったままストロークできることです。アマチュアのみならずプロでも起こりえることですが、左ワキが空いて左ヒジが目標方向へ流れてしまうとパターヘッドは外に動いて出球は右へ。左ワキが締まっていれば左ヒジが後ろに引けて、フェースは真っすぐ動きます。彼女はインサイドに振っていくので、ややダウンブローに入っている証拠。だから人よりもフェースに乗る時間=球持ちが長いのです」

■ 今大会で得た“粘り”をやさしいコースセッティングでも貫けるか

 つねに全力で1打1打に向き合わなければならない“粘り”を求められた今大会のコースセッティングで、優勝した鈴木を含めた全選手に意識して欲しい部分として、やさしいセッティングでも同じような思考で戦えるかどうかだと辻村氏。

「プロゴルファーはプレー中に悩み事を反芻する選手は多いですが、このようなセッティングだとスイングの細かい部分に目を向ける余裕はありません。“次の1打に全力”の繰り返しになります。一方、伸ばし合いの“やさしいセッティング”であれば、自然と気が抜けてしまうという場合も…。毎試合、今大会のような意識を持てる選手にどんどん成長していって欲しいと願っています」


解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。コーチ転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、濱美咲らを指導。今季は上田の出場全試合に帯同し、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

(撮影:米山聡明)<ゴルフ情報ALBA.Net>

最終更新:9月13日(火)11時43分

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