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記憶が抜け落ちることに気付いた時、チェックしたいこと

All About 9月13日(火)7時45分配信

やろうとしていたことをつい忘れてしまったことは最近なかったでしょうか? 例えば朝、郵便ポストに入れるはずだった封筒が、夜に帰宅したらカバンの中に入ったまま……なんてことは時にあるかもしれません。

こうした健忘の多くは日常範囲の現象ですが、日常範囲とは言いがたい心の病気や薬物の影響も考えられる場合を詳しく解説します。

■用事を忘れたのは短期記憶の喪失!
物事を記憶し、必要に応じて記憶していた内容を取り出すことは脳の重要な役目。記憶に携わる脳内の部位としては海馬が有名です。海馬の語源は、その部位がタツノオトシゴのような形状をしていることですが、例えば悪性腫瘍あるいは外傷のために海馬の機能が損傷されれば、深刻な記憶障害が現われる可能性もあります。でも冒頭の例程度の物忘れであれば、海馬の損傷を気にする必要はないでしょう。

ところでポストに封筒を入れ忘れたことは、記憶の分類では短期記憶の喪失です。こうしたことは疲れている時や気持ちが落ち込んでいる時に、程度の差はありますが起こりやすくなります。物忘れが多い時はこうした精神症状の有無はぜひチェックしたいところです。

一方、幼少時の記憶、例えば両親に連れていってもらったデパートで食べたお子様ランチ……といった懐かしい記憶は大人になったあともずっと心に残っていたりします。これは記憶の分類では長期記憶で、認知症においてもその初期段階では長期記憶は比較的保たれていることが少なくありません。

しかし長期記憶の内容は必ずしも事実と一致しないこともあります。例えば学生時代、英語のテストで自分はいつも90点以上、旧友のあいつは50点以下で辛そうな顔をしていた……と記憶がなっていても、実はその逆が真実だったりします。もし同窓会などで旧友と再会した際は自分の長期記憶に改ざんがないかどうか、ぜひチェックしてみたいところです。

■心の不調は物忘れが増える大きな原因!
もしこうした物忘れが最近、急に増えてきたら心の状態はしっかりチェックしたいところです。例えば最近イライラしやすい、あるいは何かショックなことが起きて心が動揺していれば何かをつい忘れてしまうかもしれません。実際、心の不調は記憶力が低下する大きな原因のひとつであると同時に、記憶力の低下は心の病気でも現われやすい症状です。

例えば、うつ病は記憶力の低下が現れやすい症状のひとつです。それは場合によってはあたかも認知症のように見えることもあります。例えば60代以上の方が急に口数が少なくなり、短期記憶に障害が現われれば、周囲の方は年齢のせい、あるいは認知症の症状と勘違いする可能性もあります。でも実は記憶障害はうつ病の症状として現われているのであり、それは基本的には精神科的治療によって元に戻ります。

■ボーっとしていた時のことは何も覚えていないもの
人によっては時に思い切りボーっとしてしまうこともあるかもしれません。もしその最中、不意に誰かから肩を叩かれ我に返ると、それまでいったい何を考えていたかも覚えていないかもしれません。でも実は週末、素敵な誰かと楽しく過ごす白昼夢にふけっていて、肩を叩かれハッと我に返った際、その間の記憶が抜けた可能性もあるかも……。

ボーっとなった状態は精神医学の用語で「解離」と呼ばれます。もしも解離が日常的なレベルを超えて解離性障害のレベルになれば、記憶がすっぽり抜ける時間がはっきり現われてきます。

また、いわゆる多重人格も解離性障害の範疇に入ります。多重人格の正式な病名は解離性同一性障害です。解離性同一性障害では、心が解離していた時に別の人格が出現しますが、元の自分に戻ると、その間の記憶はないものです。

解離性同一性障害はまれな疾患ではありますが、もしも自分に記憶が抜けている時間があり、なおかつ見知らぬ誰かから親しげに呼びかけられるようなことが続けば、その相手は別の人格がよく知っている人物かもしれず、解離性同一性障害の可能性には注意したいところです。

■記憶が抜ける原因にはアルコールなど脳に作用する薬物の影響も!
一般に記憶に限らず脳が携わる仕事は、脳に作用する薬物の影響を受けます。例えばアルコールは嗜好品ですが、中枢神経系を抑制する薬物としての側面もあり、過量に飲酒した際、起こり得る記憶のブラックアウトは、薬物による記憶障害の代表的な例のひとつです。もし過剰に飲酒した翌朝、前の晩の記憶がまるでない場合、それは脳に一時的とはいえダメージが加わった結果です。また服用中の治療薬に中枢神経系に作用するもの、例えば睡眠導入剤などがある場合、記憶に何らかの影響が出る可能性があることはぜひ知っておきたいことです。

ところで冒頭の例で、封筒を郵便ポストに入れ忘れた原因自体はさまざま考えられます。まず朝、家を出た時、カバンの中にその封筒が入っていることを意識していなかったかもしれません。例えばスマホに夢中になっていたり……。あるいは朝、家を出た時には郵便ポストに入れることを覚えていたのに、歩いているうちに頭は何も考えなくなったのか、郵便ポストを素通りしてしまった……。

こうしたことは誰にでも時に起こり得ることです。でも家を出る時、カギをどこへ置いたかまるで思い出せず、見つけ出すのに30分以上かかった……なんて事態は避けたいものです。もしもそんな時、「イライラしやすい」「熟睡できていない」などの他の症状がある場合、心の健康に黄色信号がともっている可能性にはご注意ください。


文・中嶋 泰憲(All About メンタルヘルス)

中嶋 泰憲

最終更新:9月13日(火)7時45分

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