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<1面コラム>井上靖が描いた真田一族

伊豆新聞 9月13日(火)15時6分配信

 NHK大河ドラマ「真田丸」が佳境を迎えている。天下分け目の関ケ原を前に、親子兄弟が敵味方に分かれる「犬伏の別れ」を岐路に、真田一族の命運が決していく

 ▼折りしも、長泉町の井上靖文学館で今月から「真田軍記」展が始まった。一族を取り巻く人々の短編4作品のうち「本多忠勝の女(むすめ)」は、凜とした月姫(稲)=信之の正室=を描いている。犬伏から沼田城に孫の顔を見に立ち寄る義父・昌幸に対し「こうなりましたからには…」と入城を拒む

 ▼関ケ原後、昌幸、幸村は死罪を免れ、高野山に蟄居[ちっきょ]させられ、信之は上田の城をそのまま領した。「信之の武功のためではあったが、その陰に本多の娘がいることは明らかであった」と結ぶ

 ▼「戦国時代ほど人々の運命があらわに見える時代はない」と、井上は初期の頃に多くの戦国物を残している。しかも真田軍記も、武田の軍師・山本勘助を主人公とした「風林火山」も“歴史の脇役”から歴史を探っている

 ▼真田軍記展では「歴史は名もなき人たちの努力によってつくられる」という井上の歴史観とともに純文学やエッセー、詩集に加え、時代小説も手掛けた郷土の誇る大作家の多才な一面を垣間見る。来年3月14日まで。

最終更新:9月13日(火)15時6分

伊豆新聞