ここから本文です

マクドナルドが「使っている卵は100%国産」という謎アピールを始めた理由

ITmedia ビジネスオンライン 9月13日(火)7時56分配信

 先日、急ぎでメールを送らなくてはいけない場面に遭遇し、近くにあったマクドナルドへ飛び込んだら、思わず二度見をしてしまうような斬新な広告に遭遇した。

【マクドナルドの「100%アピール」が気になる】

 トレイに敷かれたペーパー(トレイマット)にバーンと大きく卵の黄身があり、「100%国産卵」という刻印のようなロゴがのっけられ、こんな解説文が添えられているのだ。

 「マクドナルドが使っている卵は、100%国産卵。キッチンでひとつずつ手で割っています」

 正直、混乱した。メッセージの「真意」がよく分からなかったからだ。

 世の中のほとんどの人からすると、卵といえば、「国産」というイメージが強い。一般の人からすると、当たり前のことを、異物混入騒動の記憶も新しい今、誇らしげにアピールをすれば、「そんな程度のことを偉そうに自慢するな」と逆に反感を買う可能性が高い。

 実際、マクドナルドの公式Twitterアカウントを見ると、7月12日に『マックの卵、100%国産ってご存知でしたか?しかも、キッチンでひとつずつ手で割って使っているんです』とツイートしていて、たちまち「当たり前だと思っつていたのにドヤ顔されても」「国産じゃない卵探す方が大変だよね」という批判的なツッコミが殺到している。

 ただ、よく見ると、このトレイマットの端っこには「配布期間8/30~」とある。1カ月半以上前に一部消費者がSNSで違和感を表明しているにもかかわらず、こういうトレイマットをバラまき始めたということは、マクドナルド的にはこのメッセージがイケているという自負があるのだろう。

 そこで調べてみると、「国産卵100%」というのは、マクドナルドの「100%のこだわり」という情報発信キャンペーンの一環だということが分かった。

●「100%アピール」をしている背景

 公式Webサイトをのぞくと、卵だけではなく、「無添加ビーフ100%」「まるごとじゃがいも100%」「100%プロセス管理」と100%くくりのポイントを紹介し、『100%の品質を追求していく。これがマクドナルドのこだわりです』としめられている。

 この背景には、2015年7月に自社で行った消費者調査がある。

 ここで、「ビーフ(パティ)はビーフ100%、つなぎも添加物も入っていないと知らなかった」という人が86.9%、「卵は100%国産であると知らなかった」という人が96.1%にのぼったそうで、「商品情報の到達の問題を向上」(2015年10月13日ニュースリリース)を宣言した。それが、どうやらこの「100%のこだわり」キャンペーンにもつながっているようなのだ。

 そう聞くと、マックもいろいろがんばっているのねと思うかもしれないが、個人的にはかなり危うい気がしている。

 消費者の声に耳を傾けようという姿勢は決して悪いことではない。さまざまな消費者調査でも、マクドナルドに求めるのは、「食の安全」という結果が多数になっているので、方向性としては間違っていない。

 ただ、ひとつ大きな思い違いをしているのは、「知らなかった」という商品情報を伝えたところで、消費者が振り向いてくれるとは限らない点だ。

 ビーフ100%、国産卵100%であることを9割の人が知らなかったというが、それは裏を返せば、世の大多数は、そんなことはまったく意に介さずマクドナルドを利用していたということだ。

 そもそも、「ビーフ100%」なんて宣伝文句は日本進出当時から用いている。40年近くうたってきたことが10%程度しか認知されていないということは、そもそも今の消費者に響くポイントではない、という可能性もあるのだ。

 床に落ちた鶏肉や、人の歯やネジがポテトやらに混入していた強烈なイメージが、「へえ、ビーフ100%、国産卵100%だったんだ、そりゃ安心だね」とチャラになるだろうか。たぶんならない。

 品質を問われ、「100%安全。従業員の衛生管理をしっかりしている」(2003年1月9日 朝日新聞)と胸を張れたのも今は昔。「100%」とは言い難い現実が明るみに出たにもかかわらず、かたくなに「100%品質」をゆずらないその姿は、不倫がバレたにもかかわらず、「お友だちです」と貫くベッキーさんのような見苦しさを感じてしまう。

 ただ、そのようなポイントのズレよりも、かなり危うい気がするのは、この「100%のこだわり」キャンペーンが、壮絶なブーメランになるかもしれないからだ。

●自分で自分の首を絞めることに

 ご本人たちにその気がなくとも、「国産卵100%」「キッチンで割ってます」というアピールは裏を返せば、「キッチンで卵を割っていない店も山ほどいるんですよ」と言っているに等しい。

 そんなのよほどヤバいやつらでしょ、と思うかもしれないが、実はわりと多い。先ほど「卵は国産が常識」と申し上げたが、それはあくまで一般消費者の感覚であって、一部の業界の方たちからすれば逆に、「卵は輸入」と相場が決まっているのだ。

 日本の鶏卵生産量はおよそ250万トンだが、実は年間12万トン程度の卵が輸入されている。7割はかまぼこなどの練り物に使われる卵白粉だが、残り3割はケーキや菓子パンの製造に使う乾燥した全卵や冷凍液卵だ。

 そして、それらは外食産業でも重宝されている。一部チェーン居酒屋や大手ファミレスなどで出るオムレツなどの卵料理に使われているのだ。

 こういう現実はあまり世で知られていない。

 なんだ、じゃあマクドナルドの「国産卵100%」はいい問題提起になるじゃない、と思う人もいるだろう。確かに、異物混入で信頼を失ったマクドナルドでさえ、「国産卵100%」なのに、輸入卵を使う店なんていかがなものか、と叩く人もいるかもしれない。

 ただ、もし仮にそのような世論ができたら、それはマクドナルドに再び跳ね返ってくる恐れがある。

 「100%のこだわり」をうたうマクドナルドの主要原料原産国をみると、完全に原産国が「日本」とだけなっている食材は、卵しかない。肉も野菜もあらゆるものに輸入品が含まれている。

 つまり、「国産卵100%」アピールは、短期的にはドヤ顔ができても、長期的には自分で自分の首を絞めることになるのだ。

●「マクドナルド」というビジネスモデル

 さらに言えば、「100%」アピールも今後「裏目」にでる恐れもある。

 実は、本国アメリカでマクドナルドは大変な窮地に立たされている。米消費者団体専門誌『コンシューマー・リポート』によると、全米21のハンバーガー・ブランドの中でマクドナルドは最下位。もちろん、健康志向の高まりもあるが、これは米国で最近、食材を一切冷凍せず、その場でつくった「グルメバーガー」と呼ばれる高級ハンバーガーが、若者を中心に人気を博しているからだ。

 この流れは、日本にも押し寄せている。昨年秋に上陸し、近く東京・有楽町にもオープンするニューヨークの「シェイクシャック」は、高級食材として知られる「成長ホルモン剤をつかわないアンガスビーフ100%」をうたって人気を博してきた。やはりこの秋に上陸するロサンゼルスの「ウマミバーガー」も、「高級ステーキ店で提供する品質の高い肉」をセールスポイントとする。

 このように競合が独自の品質の高さをうたうなかで、「卵は国産100%なんです、すごいでしょ」「ビーフも100%なんです。90%じゃないんですよ」と声高に叫べば叫ぶほど、自慢する次元の低さが際立ってしまうのだ。

 なんて感じで「100%こだわり」キャンペーンの行く末を案じているところへ、過去に行った「昼マック」を思わせる「ランチ割引」を復活させるというニュースが飛び込んできた。消費者の節約志向の強まりで、外食産業の値下げ圧力が広まり、マクドナルドとしても客単価を下げ、客数を上げるための路線変更らしいが、経済誌で「迷走」などとバッサリやられた。

 コスト高によって収益が圧迫している中で、単価を下げつつ、品質を上げていくというのは、財源がないくせに、社会福祉を充実します、というのと同じくらい支離滅裂な話だ。

 Pokemon GOという「神風」に頼っても、効果は限定的だったという。

 個人的には、「マクドナルド」というビジネスモデルを根本から見直すべき時期にさしかかっている気がしている。まずは手始めに、「100%を訴求しなくてはいけない」という強迫観念から一度解き放たれてみてはいかがだろうか。

(窪田順生)

最終更新:9月13日(火)7時56分

ITmedia ビジネスオンライン

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

地球外生命を宿しているかもしれない1つの惑星と3つの衛星
地球外にも生命はいるのでしょうか?NASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星科学部門の部門長であるジェームズ・グリーンと一緒に、地球外生命を宿していそうな場所を太陽系内の中で探してみましょう。 [new]