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<光星>甲子園タオル回し「全員敵」、エースの今の思いは

毎日新聞 9月13日(火)10時13分配信

 ◇自分の力不足、勝負とは別のこと

 今年の夏の甲子園、第98回全国高校野球選手権大会は、青森の野球ファンにはやや複雑な思いの残る大会だった。「事件」が起きたのは2回戦の8月14日。青森代表の八戸学院光星は9-5と4点リードで迎えた九回裏、東邦(愛知)に5点を奪われ逆転負けを喫したが、最終回は超満員の球場全体が東邦の応援の音楽に合わせてタオルを頭上で回し、手拍子も広がった。バックネット裏招待席の子供たちや光星側アルプススタンドの一部の観客までタオルを回す光景に、光星の主戦・桜井一樹投手(3年)は試合後、「全員が敵に見えた」と語った。その「過度な肩入れ応援」は物議を醸すことになったが、そんな「高校最後の夏」を今、当事者はどう受け止めているのか。桜井投手に話を聞いた。【佐藤裕太】

【大観衆がタオルを回す 桜井投手を追い詰めたスタンドの光景】

 --あの試合をどう振り返りますか?

 打ち込まれ、東邦の応援が三塁(光星)側まで広がってきて、「全員が敵に見える」ような心境にまで追い詰められたのは確かです。試合直後はその印象ばかりが頭に残っていました。でも、投打の勝負とは別のこと。応援が選手の力になることは確かでも、あれは自分の力不足と受け止めています。

 --昨秋の公式戦やセンバツも含め、これまですばらしいマウンド度胸だった桜井投手に初めて弱気な表情が見えました。

 夏こそ「猛打光星」で勝ち上がろうと、自分も「打」に磨きをかけてこの夏に挑みました。その分、「投」がおろそかになっていたのかもしれません。1回戦の市尼崎(兵庫)戦で予想以上に打たれてしまい、ナーバスになってしまいました。フォームの違和感を指摘されることもあり、何かがおかしいと思いながら登板したのが球に表れたのかもしれません。

 --相手側のタオル回しなどはどのくらい気になりましたか?

 投球動作中は奥村(幸太捕手)に集中すればいいのですが、ファウルボールなどで試合の進行が少しだけ途切れる際、相手側の応援が目に入って集中力が途切れることはありました。でも、程度の差はあれ、どの試合も応援はありますから、それも実力のうち。「こんな状況で負けてたまるか」と力んで球が浮いたというのはありますが、修正力もそのうちです。

 --相手への過度な応援となったことを不条理に感じたりは?

 そんなに深刻には考えていません。試合直後は「投手やめたい」と思った瞬間がありましたが、野球が嫌だとは思いませんでした。試合翌日に(仲井宗基)監督に呼ばれて、「練習が足りなかったところはなかったか」と問いかけられ、自分の側に敗因があることを痛感しましたし、次のステージでも投手を目指そうと思いました。

 --甲子園を目指す後輩たちに何か伝えたいことは?

 甲子園には春夏連続で出場させてもらいました。勝敗を決める要因はいろいろあって、正直つらいこともありました。ただ、勝っても負けても楽しかった、プレーできて良かったと思える場所でした。

 ◇「この経験を強みに変えたい」

 光星の仲井宗基監督は常々、選手たちに「野球の悔しさは野球でしか晴らせない」と説いてきた。桜井投手ら多くのメンバーは現在、大学進学やプロ入りを目指し、野球を続けている。「もう怖いものはない、という気持ちで一から鍛え直したい」という桜井投手の言葉は力強かった。バッテリーを組んだ奥村幸太捕手(3年)も大学で野球を続ける予定だ。この試合について奥村捕手も「確かに甲子園は怖い、残酷という印象はある」と語るが、「貴重な体験をした。試合を組み立てる役割の捕手として、この経験を強みに変えたい」と考えている。

 秋風が吹き始めた県内。秋季県大会もまもなく始まり、青森の球児たちの新たな挑戦が始まる。

最終更新:9月13日(火)11時57分

毎日新聞