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【日本の源流を訪ねて】元乃隅稲成神社(長門市)

産経新聞 9月13日(火)7時55分配信

 ■鳥居123基、世界が認めた信仰の場

 初秋を迎えた穏やかな日本海に向かって、123基もの鳥居がくねって伸びる。海の青に鳥居の朱が映えて、今にも動き出すような気配すらある。山口県長門市にある元乃隅稲成(もとのすみいなり)神社は、昨年からパワースポットとして注目を浴び、多くの参拝客を魅了する。

 2代目宮司の岡村頼樹氏(68)によると、昭和30年、岡村氏の祖父で網元だった斉(ひとし)さんの枕元に白狐が立ち、「これまで漁をしてこられたのは誰のおかげか。吾をこの地に鎮祭(ちんさい)せよ」と、お告げがあったという。斉さんは島根県津和野町にある太鼓谷稲成(たいこだにいなり)神社に依頼し、分霊してもらった。

 日本には約4万社の「稲荷(いなり)神社」があるが、当時「稲成」という漢字が使われているのは「元乃隅」「太鼓谷」の2社だけだった。「成」の字は、「成就」に由来し、さまざまな願いがかなうという意味が込められた。

 神社としての歴史が浅い元乃隅稲成神社が注目され始めたのは、昨年3月だった。米CNNのウェブ特集で「日本の最も美しい場所31選」に選ばれた。世界遺産にもなっている厳島神社(広島)や、金閣寺(京都)など日本の名だたる名所と肩を並べた。

 「市役所から『CNNのウェブに載っている』と聞かされ、寝耳に水でびっくりした」(岡村氏)

 それまで休日でも閑散としていた神社が激変する。

 平成25年に年間2万人だった参拝客は、26年に3万人、CNNで取り上げられた27年は7万5千人、そして今年は30万人まで伸びる見通しだ。

 今年のゴールデンウイークには1日2500台もの乗用車が殺到した。170台収容の駐車場はパンク状態になり、周辺の道路が大渋滞に陥った。

 100メートルにも及ぶ123基の鳥居は昭和62年から10年間かけて奉納され、一本一本に奉納者の名前が刻まれている。本数は死人も生き返るとされる「ひふみ祝詞」が由来という。

 裏参道出口には高さ5メートルの鳥居が建っており、なぜか上部に小さな賽(さい)銭(せん)箱が。参拝客が何度も投げるが、一投目で入る人はほとんどいない。岡村氏は「入れにくかったら、また来てくれるかなと」。県内でも有数の観光地になった今でも、賽銭や土産といった“商売”にはまったく無頓着だ。

 岡村さんはいう。

 「どんなに多くの人に来ていただいても、ここはあくまでも信仰の場です」(菊池昭光)

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 山口県長門市油谷津黄(ゆやつおう)498。油谷は「日本の棚田百選」にも選ばれた。参拝時間は日の出から日没まで。夜間の立入禁止。問い合わせは長門市観光コンベンション協会(電)0837・22・8404。

最終更新:9月13日(火)7時55分

産経新聞