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ロシア下院選2016 極東に与党不信「何も変わってない」

産経新聞 9月13日(火)7時55分配信

 ロシア極東では、プーチン政権による近年の極東重視政策を背景に与党「統一ロシア」への支持率は回復したとされていたが、同党は今回の下院選で再び苦戦を強いられていた。住民たちは政権への不信感を口にし、将来の生活への不安から人の流出も止まらない状況が続いていた。

 ウラジオストク市中心部から車で約30分。「ゼリョーヌイ・ウーグル(緑の角)」と呼ばれる小高い丘には、大量の日本の輸入中古車が並べられていた。

 「政府や与党は何も支援してくれないし、われわれを自動車市場から閉め出そうとすらしている。選挙? 行かないね。結果は決まっているんだろう」。1990年代から中古車輸入ビジネスを手がけるという男性(50)は、強い政治不信を口にした。

 ソ連崩壊後、中央政府から見放され、混乱を極めた極東経済を立て直したのが日本製中古車の輸入ビジネスだ。政府に頼らず生活を切り開いた住民らは、輸入を規制しようとする政府・与党への反発心が根強く、2011年の下院選で統一ロシアの得票率は露全土で最低水準の約33%(沿海地方)にとどまった。

 ◆テコ入れ奏功せず

 プーチン政権は12年のウラジオストクでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議開催を機に、中央主導の極東開発を本格化させた。深刻な汚職で知られる地元政界には元官僚のミクルシェフスキー知事を送り込み、政治・経済のテコ入れを進めた。結果、与党の支持率は大幅に改善した。しかし今年8月に約50%だった沿海地方での与党支持率は9月には40%まで急落。ウラジオストクでは35%にまで下がったという。一体なぜなのか。

 同市在住の政治専門家、ハナス氏は、9月に極東を襲った台風への地元政府の対応の悪さなどに加え「知事の実績の低さや、APECまでのインフラ建設以外、生活環境が何も変わっていない」ことへの住民の根深い不満が与党不信の背景にあると指摘する。

 ◆止まらぬ人口流出

 「新型経済特区」など政府の新施策は対象地域以外を潤してはおらず、物価高や収入減が続く状態に住民は落胆した。野党ヤブロコの下院選候補者、マルコフツェフ氏(65)によれば、「APEC以降だけで沿海地方から2万4千人の人口が流出した」という。

 さらに通貨ルーブルの暴落で、極東に多い中小輸入業者の生活が一気に悪化したことも与党の支持率を押し下げているもようだ。元缶詰輸入業者の男性(53)は「政府や与党は中小企業を支援するというが全くのウソだ。プーチンは軍や特務機関ばかりを重用している」と憤った。

 ウラジオストクでは今月初めに経済フォーラムが開催され、プーチン氏は日韓の首脳とともに出席した。ハナス氏は、それでも与党の党勢が落ちる状況に「プーチン氏のカリスマすら、与党の助けにはなっていない」と指摘した。(ウラジオストク 黒川信雄)

最終更新:9月13日(火)8時6分

産経新聞