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千載一遇のチャンスだったルネサスのIntersil買収――会見詳報

EE Times Japan 9/13(火) 17:25配信

■文化的な親和性も高い

 Analog DevicesによるLinear Technology買収のように、アナログ半導体業界は寡占化が進んでいる。Intersilの買収は、一石を投じる千載一遇のチャンスだった――。

【写真:4~5年後には、買収によるシナジーで170億円の営業利益を見込む】

 ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2016年9月13日、米国の半導体メーカーIntersil(インターシル)を32億1900万米ドル(約3274億円)で買収すると発表した。同日、ルネサスは都内で記者会見を開き、社長兼CEOの呉文精氏らが登壇した。

 Intersilは、産業やインフラ、車載、航空宇宙向けなど信頼性や性能が重視される市場向けに、パワーマネジメントICや高精度アナログなどのアナログ半導体製品を展開している。売上高は2015年12月期実績で5億2160万米ドル(約522億円)。ルネサスが買収する狙いは、これらのパワーマネジメント関連製品のラインアップ拡充にある。

 ルネサスも製品別割合でみると、約10%アナログ半導体を展開している。同社執行役員常務兼CFOの柴田英利氏は、「Intersilのアナログ半導体と全く別という表現はできないが、相互補完的な関係となっている」と語る。「Intersilもルネサスと同様に、戦略分野に経営資源を集中し、人員削減と非効率の排除を行ってきた。このような歴史的な背景も含めて、文化的な親和性が高いと判断した」(柴田氏)としている。

 買収の狙いは、パワーマネジメント製品の拡充だけではない。呉氏は、ルネサス本体の経営のグローバル化も目指すとする。「Intersilという米国のグローバル企業を買収したが、本社が閉鎖的な日本村の企業では事業がうまく進まない。当社がクローバル化して、意思決定のプロセスが誰から見ても分かりやすい仕組みを作っていかなければならない。具体的には、会議などの英語化を進めていく」(呉氏)とする。

■営業利益170億円のシナジーを

 呉氏は、「最初に得られるシナジーは、クロスセルの強化だ。ルネサスは国内の拡販に強く、Intersilは中国の電機メーカーを中心とするアジアに効率的に拡販を行っている。他にも、ルネサスは車載、Intersilは広い顧客に向けた汎用品に強みを持つ。つまり、相互補完的な関係となっているため、早期のシナジーが期待できる」と語る。

 今後2年間で両社は、クロスセルの強化を進める。その後は、ルネサスのマイコン、SoC(System on Chip)とIntersilのパワーマネジメント製品を組み合わせた1つのパッケージ「組み込みソリューション」として展開していく。

 「組み込みソリューションは、開発から量産に入るまで、産業機器だと約3年、車載機器だと約5年くらいかかるだろう。つまり、フルにシナジーが出始めるのは、4~5年かかる。それ以降は、年間約170億円の営業利益が生み出せると見込んでいる」(呉氏)

■「競争の中、ギリギリの価格で獲得できた」

 会見では、呉氏がIntersil買収に至るまでの経緯についても言及。「買収に至る最後には、競争があった。今回、Intersilの株を1株当たり22.50米ドルで支払うが、0.5米ドルで刻んでいるように、競争の中でギリギリの価格で獲得できたのだ(関連記事:ルネサスにMaximが対抗? Intersil買収で)。Intersilはオンセールの会社ではなかったが、それだけお互いに相性が良かったことが、買収成功の要因といえる。Analog DevicesによるLinear Technology買収のように、アナログ半導体業界は寡占化が進んでいる。Intersilの買収は、業界に一石を投じる千載一遇のチャンスだった」と語る。

 約3274億円の買収額については「高すぎる」との声も出ているが、柴田氏は「かなり短期間で現実的なシナジーが見込める。そこから逆算すると、今回の価格は十分正当化できる」と応じた。

 買収後のIntesilの運営について呉氏は、「完全に(Intesilの経営を)独立させて、株主になるということは考えていない。彼ら(Intesil)をルネサスの中に取り組もうということも考えていない。ルネサスがIntesilから学ぶこともたくさんあり、Intesilの中には優秀なマネジメント層がいる。ブロードベース、広い顧客に汎用品を売ることに強いので、われわれの汎用マイコンの売り方は彼らに教わることが多いだろう。彼らの良さを生かしながら、シナジーを生かすための体制をとっていきたい」とした。

 また、「ルネサスの製造ラインでIntersil製品を生産するか」という問いに対しては、「実際にやるかまでは分からないが、やりたいと思っている。ルネサスもIntersilと同様に8インチのボリュームを増やしているからだ。まだ時間はあるため、当社のラインのキャパシティーを見ながら、今後どうしていくか考えたい」(柴田氏)とする。

 呉氏は最後に、「2016年度の業績は、円高と熊本地震による影響で、足元でみると厳しい。Intersil買収が1つののろしとなり、収益を伴う成長を実現したい」語った。

最終更新:9/13(火) 17:25

EE Times Japan