ここから本文です

クラフトビールに「デザイン権」大阪・オフィス街に醸造所…「自分だけの味」実現

産経新聞 9月13日(火)14時56分配信

 平成6年の酒税法改正で全国的なブームとなった「地ビール」。一時は下火となっていたが、最近では「クラフトビール」と呼ばれてブームが再燃している。日本地ビール協会によると、全国には約260カ所もの醸造所があり、来店客を対象にした醸造体験といったサービスを打ち出すなどあの手この手で差別化を図る動きが活発化している。(高橋義春)

 ◆全国で5カ所だけ

 大阪市中央区のオフィス街の一角にある「ブリューパブ テタールヴァレ」。店内に設けられた醸造所で、オーナーで醸造士の松尾弘寿(こうじ)さん(33)がスタッフの指導にあたっていた。

 来店客を対象にした醸造体験では、麦芽を湯に漬けて麦芽に含まれるデンプンから糖分を作り出す「糖化」▽麦芽と水が混ざった状態から麦芽だけを取り除く「濾過(ろか)」▽残った麦汁にホップを加えて沸騰させる「煮沸」-の3つの工程が楽しめる。

 そのなかで、風味に影響する重要な工程とされるのが糖化だ。湯の温度を65~70度に保つことがポイントで、「70度寄りにするか、65度寄りにするかでも糖分の質が変わってしまうデリケートな作業」と松尾さんは解説する。

 その後、約1週間の発酵期間や約1カ月間の熟成期間を経れば、「自分だけ」の“自家製オリジナルビール”が完成だ。仕込みのすべてを体験できる醸造所は全国でもわずか5カ所しかなく、同店では9月下旬から自家醸造を本格化させる予定だ。

 ◆ブーム再燃追い風

 酒税法改正で、ビールの最低製造数量基準が2千キロリットルから60キロリットルに緩和され、にわかにわき上がった「地ビールブーム」。当初は物珍しさもあってファンも急増した。しかし、少量生産ゆえの高価格に加えて醸造技術の未熟さもあり、平成12年ごろにはブームは収束したとされていた。一方で、危機感を募らせた醸造所が、味や香りのバランスが取れたビール製造に励み、醸造技術が飛躍的にレベルアップ。それに伴ってブームも再燃した。

 日本地ビール協会によると、近年は自分好みのビールを求める人が増えてきたことから、クラフトビールを専門的に扱うビアパブが全国で相次いでオープン。一昨年ごろからは、店内で醸造される自家製ビールを手ごろな値段で味わえる「ブリューパブ」の開業が増えているという。

 松尾さんもクラフトビールの魅力にとりつかれ、今年8月には酒類製造免許を取得。「ビールづくりと試飲を身近に楽しんでもらいたい」と、醸造体験とデザイン権というアイデアで他の醸造所との差別化を図っている。

 デザインとは好みのビールを製造することを意味しており、インターネットで小口の出資者を募る「クラウドファンディング」による支援者が対象。ホップの種類から香り、アルコール度数、色の濃淡などが選べるようになっており、支援者各自が持ち込むレシピをもとに松尾さんらが味の実現に取り組む。

 「関西のクラフトビール業界は全国的に後れを取っていますが、大阪は国産ビール発祥の地。鮮度の管理など大手ビール業界に負けないクオリティーで、味やアイデアで勝負するしかありません。各醸造所の創意工夫に、消費者がどんな対応と価値を見いだすかにかかっています」と松尾さんは話している。

最終更新:9月13日(火)15時9分

産経新聞