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林信行の「iPhone 7」先行レビュー

ITmedia PC USER 9月13日(火)19時8分配信

 新たに発表された2モデルのiPhone。シリーズ名こそ「iPhone 7」だが、実は21世紀のスマートフォン革命を巻き起こしたiPhoneシリーズの10世代目の製品にあたり、それだけにAppleの開発もいつも以上に力が入っている。

【ジェットブラックが美しい】

 ここしばらくiPhoneは偶数年に飛躍し、奇数年に洗練するという進化を続けてきた。その進化を振り返ると、ここ数年は薄型化と画面サイズの大型化に重点を置いていたが、今回は本体サイズはほぼそのままに製品のデザインや使い勝手、搭載技術、そして機能の面でこれまでにない大きな跳躍を見せている。

 日本では、10月から始まるApple Pay、特にSuicaに対応することから、日常生活における活躍の場がさらに大きく広がることは間違いない。ただ、現時点で分かっている情報は既に別の記事として形にしているので、横に置こうと思う(関連記事:ついにiPhoneでSuicaが利用可能に――AppleとJR東日本が協力して生み出したSuicaの新しい姿)。

 その代わり、せっかく発売前の実機が手に入ったので、決済機能の話題の影に隠れてきちんと伝わっていなかったiPhone 7の魅力に迫りたい。

●サイズ以外のすべてが新しく

 iPhone 7とiPhone 7 Plus。大きさは、これまでのiPhone 6/6s、6 Plus/6s Plusとほぼ同じだが、それ以外は外観も中身も全く異なる製品になっている。

 この新しいiPhone 7は、その優美なデザイン、圧倒的な描写力を実現する最新のカメラ技術、シネマ品質を実現した新しいRetinaディスプレイ、スマートフォンオーディオの新スタンダードとなりそうな数々の挑戦、防水対応、生まれ変わったホームボタン、圧倒的なパフォーマンスとiPhone史上最も長持ちするバッテリー、さらに本稿ではあえて触れないSuicaを含む日本版Apple Pay対応など、もはや空ですべてを挙げることができないほど数々の魅力が凝縮されている。

 もちろん、進化したSiriやメッセージ機能、日本の列車の情報にも対応した地図、家電をコントロールするHomeKitなど、iPhoneの使い道をさらに広げる最新OS「iOS 10」を最大限に享受できる端末としての魅力もある。

 年に1度のiPhoneの進化は毎年の楽しみだが、今回は久々に大きな興奮を覚えた。これらすべての魅力を1つの記事で紹介することはできないし、この記事の掲載と同時に、同じITmediaや他の媒体、海外の媒体においても一斉に大量のiPhone 7/7 Plusのレビューが掲載されるはずだ。

 1つのレビューですべての趣味趣向の人を満足させることはできないので、技術やこまかな話題は他の記事にまかせ、この記事では筆者が個人的に強く感じた「製品デザインの魅力」と「カメラの魅力」、「オーディオ機能の果敢な挑戦」の3点に焦点を当てて紹介できればと思う。

●工芸品の域に達した仕上げの美しさ

 今回、レビューに当たり貸し出しを受けたのは話題の新色、「ジェットブラック」のiPhone 7と通常の「ブラック」のiPhone 7 Plus。いずれも新色だ。どちらの色も美しく、最初から悩まされるハメになった。

 硯(すずり)の上に薄く平らに伸ばした墨汁のようなジェットブラックのiPhone 7は、高光沢を楽しむ漆黒のアート作品にも通じる無限の美しさを感じさせる。個人的にこれまでのiPhoneの中でも最も美しい部類に入ると感じた。

 これだけ心を吸い寄せられる黒はなかなか作れないだろうと思っていたら、Appleはこのジェットブラックの背面をデザインするために、大量生産品とはおよそ思えない9つの工程、時間にして約1時間の製造プロセスを開発したという。

 ジェットブラックのiPhone 7の見た目は、光沢感のある黒いエレガントな板。目立つ色と言えば、背面のフラッシュの白色とマナーボタンの奥のオレンジ色だけ。画面を消すとディスプレイは完全に本体の色に溶け込んでどこにあるのかすら分からなくなるし、背面のAppleロゴマークも光を反射させないとどこにあるのか分からない暗い鏡面仕上げだ。製品名やホームボタンさえ、使う時以外は完全に溶け込んでしまう。

 頑丈なアルミ素材でありながら、かつてiPhone 3Gシリーズのような軽さを目でも感じさせる。もちろん、指紋がつきやすいという問題はあるものの、趣味のいいクロスを出して、美しい所作で汚れを拭き取るオーナーの姿を連想させる、そんなエレガントさがある。手にした時の「ヌメっ」と「ヒヤっ」が共存した触感も心地よい。

 ジェットブラックは、5種類あるカラーバリエーションの中で、間違いなく際立った存在だ。しかし、もう1つの新色、通常のBlackも美しい。

 こちらは、シルバー、ゴールド、ローズゴールドの3色同様、きめ細かな梨地(つや消し)加工が施されており、普段は深い炭のような黒でありながら朝陽の青みや、夕陽の赤みを受けてほのかに色づく楽しさもある。

 もちろん、サラっとした触感のツヤ消し加工のおかげで、指紋もつくにはつくがそれほど気になることはない。また、再設計によって本体の上端と下端に寄せることができたアンテナ部が黒く塗られているため、ジェットブラック同様にほとんど目立たなくなっているのもうれしい。

 ちなみにアンテナ部の配色は、シルバー、ゴールド、ローズゴールドの3色ではこれまで通りだが、位置が端に寄せられたおかげで本体を引き締めてみせるアクセントの役割も果たしている。

●均整のとれた形状の美しさも復活

 と、ここまでは外装の仕上げの部分の魅力の話だったが、これに加えて、iPhone 7では製品の形状も洗練され、大きく魅力を増した。既にあげたアンテナ部の小型化とエッジへの配置はその筆頭だが、さらにカメラレンズの配置にも美しさを感じさせる。

 iPhoneシリーズの新たな特徴となりつつある突起したレンズだが、ジェットブラックのiPhone 7では、このレンズがまるで硯の上に一垂らしした墨滴のような、製品の美しさを象徴する見た目上の特徴になっているのではないかと思わせる。

 このレンズを美しく感じさせるのは滑らかに隆起した正円という、その形状はもちろん、本体背面の上端までの距離と左端までの距離がほぼ均等という配置バランスの影響もあるだろう。もちろん、美醜の感じ方は人によって大きな個人差がある。ただその一方で、「多様な人々が共通して美しいと感じるものには『数理的な裏付け』がある」と話すファッションデザイナーの松井エリさんの言葉を思い出さずにはいられない。このiPhone 7を眺めているときに感じるのが、まさにそれだ。

 歴代iPhoneの中で、実はiPhone 4シリーズのレンズがこのように配置されており、精巧さを感じさせる美しさを醸し出していた。しかし、LTEに対応したiPhone 5シリーズ以降はAppleもアンテナとレンズの配置に苦労したのかこのバランスが崩れていた。そして今回、iPhone 7になってようやく内部技術や製造技術が追いつき、再びバランスの美を取り戻すことができたようだ。

 一方、iPhone 7 Plusは、画期的なデュアルレンズの採用により、どうしても正円にすることができなかったこともあるのだろう。滑らかな隆起こそ同じだが、まるでゴーグルの中からのぞくロボットの目のような造形になっていて、こちらはこちらでSF未来的なアピールがある。

 見た目の美しさでは個人的にはiPhone 7に軍配が上がるが、iPhone 7 Plusも5.5型サイズの大型iPhoneの中では、傑出した美しさを持つ製品と言っていいのではないだろうか。

●機械学習も導入、カメラの圧倒的描写力

 iPhone 7シリーズの外観の美しさは、それだけで十分、購入を決意させる要素だ。それに加えて、本製品にはSuicaを含めた新しい決済手段のApple Payへの対応、そして多くのデジタルカメラを凌駕(りょうが)した描写力という2つの抗しがたい魅力がある。

 前者の魅力は先に掲載した記事を参照してもらうことにして、ここではiPhone 7シリーズのカメラについて話そう。

 iPhone 7のカメラは、レンズを含めた光学系の性能が大きく見直された。

 まずはレンズがより明るいものに変わった(F1.8のレンズで、従来に比べ50%多くの光を捉えることができる)。一般にカメラは、暗い場所での撮影では、シャッターを長く開かねばならず、手ブレが起きやすくなるが、Optical Image Stabilization(光学式手ブレ補正)という、センサーとソフトの技術で手ブレを軽減する工夫もしている。要するに暗いところの撮影にものすごく強くなったのだ。

 下の写真は暗い部屋でiPhone 6sとiPhone 7をくっつけて持ち、モデルを撮影したものだが、そもそも確認画面の時点で大きな明暗の差が出ていることが分かるだろう。これに加えてフラッシュ(True Tone Flash)も50%明るくなっており、夕暮れや夜のパーティーシーンなどでもこれまでのiPhone以上に進化を発揮してくれそうだ。また、オートフォーカスが高速化し、色のグラデーションもしっかり捉え、ホワイトバランス調整が進化している点もiPhone 7カメラの魅力である。

 そしてそれ以上にすごいのが新開発の画像処理エンジンだろう。iPhone 7で写真を撮影すると、近ごろ話題の機械学習技術を応用して、写っている人の顔と体を瞬時に認識し、最適な露出、最適なフォーカス、最適なホワイトバランス、ワイドカラー、トーンマッピング(輝度調整)、ノイズ除去、必要なら複数の撮影画像の合成といった処理を行い、とにかくその瞬間、iPhone 7で撮りうる限りの最高の写真を捉えるべく、1000億を超える膨大な処理をわずか25ミリ秒の間に行うという。

 標準のカメラアプリでは、細かなマニュアル撮影ができないのは相変わらずだが、その一方で専用のデジタルカメラで操作に迷いながら重要なシーンを取り逃がすくらいなら、さっとiPhoneを取り出して撮影したほうがよほど思い通りの絵が撮れる、というのがこれまでのiPhoneカメラの魅力だったが、それをさらに画質の面でも前進させたのがiPhone 7だ。

 ちなみに、iPhoneには既にマニュアル撮影をするためのさまざまなカメラアプリがリリースされている。iOS 10からはセンサーが捉えたそのままの映像情報(RAW DNG)を他社製アプリが直接、編集できるようになるので、かなり高性能なカメラアプリの登場も期待できそうだ。

●デジカメ超えの絵作りを実現する先進のデュアルレンズ

 ここまででもiPhone 7のカメラの魅力は十分に感じてもらえたと思う。しかし、ここまではiPhone 7と7 Plusのカメラに共通する改善点の話だ。大型のiPhone 7 Plusはレンズを2つ搭載したデュアルレンズ機になっており、さらに優れた撮影ができる。

 この2つのレンズは、標準レンズと、像を2倍大きく写せる望遠レンズの組み合わせだ。写真撮影時、画面に「1x」と表示されるので、この部分をタップすると表示が「2x」に切り替わりクローズアップになった像が映し出される。操作が違うだけで従来のiPhoneと変わらないように見えるが、これまでのiPhoneは「1x(等倍)」で撮った像をデジタル処理で引き伸ばすデジタルズームだったため、やや像が荒くなっていた。iPhone 7 Plusの2倍撮影は、通常、望遠レンズを使って撮影するので、拡大してもきれいな写真となっている。

 また、カメラ撮影時に映像を2本指で広げるピンチ(つまむ)操作をしたり、「1x」と表示されている部分を左右にスワイプすることで10倍までのズーム変化を楽しむこともできる。この10倍ズームの絵は、実際には2倍レンズの絵を5倍表示にしたもの。しかも、レンズの性能や画像処理の進化で元の絵もきれいになっているので荒れが圧倒的に少なく、10倍ズームでも、ソーシャルメディアへの投稿なら鑑賞に耐える画質だ(暗所などでは荒れが目立つので条件による)。

 10倍までのズーム撮影がある程度実用的になると、カメラの使い方はまったく変わってくる。例えば、写真が好きで、望遠目当てでコンパクトデジタルカメラを持ち歩いていた人も、iPhone 7 Plusを手にするとコンパクトデジタルカメラを持ち歩く機会が大幅に減るのではないだろうか。

 ちなみにカメラ機能を試していてちょっと面白い発見があった。最初はiPhone 7 Plusで2倍以上のズーム撮影をする時には、勝手に望遠レンズ側で撮影しているのだろうと思い込んでいたのだが、どうやら必ずしもそうではないらしい。ズーム撮影をしながら、指で望遠レンズ側を覆ってみると、一瞬だけ画面が暗くなるものの、すぐに景色が映し出されたりすることがあるのだ。どうやら、ズーム時は2つのレンズが常に動いていて、どちらがより良い絵が撮れているかを瞬時に計算して仕事の引き継ぎをしているらしく、この辺りの仕組みからして裏側ではかなり高度な処理を行っていることがうかがえる。

 そんなiPhone 7 Plusのカメラ機能でもう1つ楽しみなのが「ポートレート」撮影モードだ。発売直後は利用できないものの、その後のソフトウェアアップデート(iPhone 7では利用できない)で追加されることが発表されており、こちらにも期待が集まる。

 ポートレート撮影は、iPhone 7 Plusの広角、望遠の2つのレンズが被写体となる人物を同時に捉え、その顔や身体をレンズからの距離も含めて認識し、自動的に背景と切り離して背景だけをきれいにぼかすことでドラマチックな人物写真を撮れるようにする機能だ。実際、発表会で披露された写真は、まるでファッション雑誌の写真のようなドラマ性と迫力を感じさせた。

 以上、望遠やポートレート撮影など、カメラとしてみたときのiPhone 7シリーズは、iPhone 7 Plusに軍配が上がる。これがiPhone 7シリーズ選びの難しいところだ。

 デザインのバランスや、Suicaへの対応がより生かせる携帯性の優位さで、個人的にはiPhone 7を選びたいところなのだが、その一方で、iPhoneで写真を撮影する機会が多いことを考えると、iPhone 7 Plusが欲しくなってしまう。

 さて、大幅に進化したオーディオ機能やiPhoneの使い方をさらに広げる防水機能は、実際の使用感を交えながら、続く後編で紹介していこう。

(モデル:市川渚 /撮影:井上直哉、林信行)

最終更新:9月13日(火)19時37分

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