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【千葉魂】 お前がマリーンズを引っ張れ サブロー、実践した恩師の言葉

千葉日報オンライン 9/13(火) 11:46配信

 不意に涙がこぼれた。2016年9月1日。サブロー外野手はQVCマリンフィールドで引退会見を行った。マリーンズファンへのメッセージをと問われた時、我慢をしていた感情があふれ出た。うつむくと無言となり数秒、肩を揺らした。「男は泣くものではない」。そう言い続けて、どんな時も上を向いて歩いてきた。しかし、この日は特別だった。多くの人に支えられての現役生活を思い返した。引退を報告しないといけない人はたくさんいる。その一人は「野球界のパパ」と慕った故山本功児氏。1999年から2003年までマリーンズの監督を務め、今年4月に64歳で亡くなった。家族やファン、チームメート。さまざまな人への思いがあふれ、天国の恩師へは、言葉に代えられないほどの感謝の気持ちがこみ上げた。

 「オレにとってこの世界のパパや。オレを使ってくれた人。見出してくれた人。よく怒られたけどなあ。たくさん怒られた。練習中に怒られて、近くに置いてあったボールがたくさん入っていたボールケースごと投げつけられたこともある」

 引退会見を終えて数日が経ったある日。台風一過の空の下で、サブローは懐かしそうに遠い昔を振り返った。2軍時代から目をかけてくれた。1999年に1軍監督に就任をすると、期待をかけて、積極的に1軍の試合に起用をしてくれた。よく言われた。「サブロー、お前がマリーンズを引っ張らないといけないぞ!」。まだ20代前半で、自慢できるほどの実績を兼ね備えていなかったサブローには、重い言葉だった。だが、毎日のように言われ続けていたから、その言葉はハッキリと覚えている。

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 思えば、あの時も人前で涙した。山本氏が退団することになった2003年。ホームでの最終戦を終えると、神妙な表情で監督室をノックした。「ボクのせいですいません」。頭を下げると自然と涙がこぼれ落ちた。期待をかけ続けられた。それでも、その思いに応えられなかった。最後にその指揮下でシーズンを送った03年は初の2桁本塁打を記録したが、不振期間も長く80試合の出場にとどまった。チームは8年連続のBクラスに沈み、山本氏は責任をとって辞任を決めた。指揮官の熱い思いにバットで応えられなかった自分自身を責め、悔い、悔やみ泣いた。山本氏は優しく励ましてくれた。そして言った。「マリーンズはお前が引っ張らないといけないぞ!」。その言葉が、胸の奥でいつまでも響き渡った。

 その後のマリーンズは05年にバレンタイン監督の下、31年ぶりの日本一に輝いた。4番には「つなぎの4番」といわれたサブローがいた。西村徳文監督を迎えた10年もクリーンアップとしてチームを引っ張った。その後の伊東監督の下でも背番号「3」はチームの支柱として若手の多いチームの中で特別な存在感を出した。3位から下剋上を果たし、日本一となった10年。ビールかけが終わった直後。新人ながら開幕から大活躍をしながら右ひざを痛め、戦線離脱をしロッテ浦和球場でリハビリに専念をしていた荻野貴司外野手に電話を入れた。「前半戦のお前の頑張りがあったからここまで来たよ。ありがとな」。傷心の若者の胸に響く言葉だった。打たれて落ち込む投手がいれば、指摘をした。「自信なさそうに投げるな。守っている野手はそういうところを見ているんや。どんな時も堂々と投げろ」。野手にもアドバイスを惜しまなかった。チームが連敗する中、この苦境をどう脱するべきか若きキャプテンの鈴木大地内野手が悩んでいる時も背中を押した。「キャプテン、今こそみんなで話をしようや。そういう時期だと思う」。何度となく選手だけでミーティングを開いた。昨年7月に行われたミーティングでは最後に一言を求められた。「やる事は一つ。みんなの手で監督を男にしようや」。その言葉にチームは結束し、15年は怒涛の追い上げを見せてAクラス入りを果たした。

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 「若い時のオレにはチームを引っ張れと言われてもどうすればいいか分からなかったけどなあ」

 遠い目でそう振り返った。全力で駆け抜けた日々だった。引退会見でサブローは言った。「悔いはない。やるべきことはやった」。そして最後に「マリーンズを愛しています」と言葉に力を込めた。恩師もまたマリーンズ愛に満ちた熱血漢だった。その思いを託されるように背番号「3」はチームを引っ張り続けた。その背中を多くの後輩選手たちが憧れの目で視線を送り続けてきた。9月25日、オリックス戦(QVC、13時試合開始)。サブローは超満員に膨れ上がったファンの前で静かにユニホームを脱ぐ。マリーンズの為に闘い、恩師の言葉を実践し続けた日々。今、振り返ると、充実した最高の毎日だった。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

最終更新:9/13(火) 11:46

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