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<熊谷6人殺害1年>妻子返して…夫、眠れぬ夜続く「空っぽの1年」

埼玉新聞 9/13(火) 0:00配信

 埼玉県熊谷市で昨年9月、小学生姉妹を含む6人が殺害された事件から間もなく1年。「家族がいなくなり、実りのない空っぽの1年だった」。妻の加藤美和子さん(41)、長女美咲さん(10)、次女春花さん(7)=いずれも当時=の命を奪われた加藤さんの夫(43)が12日、熊谷市内で報道陣の取材に応じ、時折うつむきながら癒えることのない心の傷を打ち明けた。

 妻や娘の誕生日、クリスマスや正月…。「家族を忘れる日は一日もなかった」。この1年、家族で楽しみにしていたイベントは一人になっても欠かさずに行ってきた。しかし、そのたびに直面する3人のいない現実。「親子連れを見ると、うらやましいと思うばかりで自分が情けなくなる」。事件を受け入れられない気持ちと変わらない生活を送ってあげたいという気持ちのはざまで、絶えず揺れ動いている。

 事件発生の昨年9月16日。仕事から帰宅すると、自宅前には規制線が張られていた。熊谷署に向かう途中は、「早く抱きしめたい」と願った。しかし、署で耳にしたのは、3人が心肺停止の状態にあるということ。「うそであってほしかった」。今も仕事には復帰できず、眠れない夜が続く。

 事件のショックから立ち入ることができなかった自宅に、最近は「3人のために」と一日3時間でも戻るようになった。そこに、「パパお帰り」と迎えてくれたかつての笑顔はない。

 「どうすれば家族は助かったのか。情報があれば、こんなことにならなかったと思う」。事件前に住居侵入を繰り返したナカダ被告の情報が住民に周知されなかったことに、夫の憤りは消えない。県警は事件後、行政などと犯罪情報の提供に関して協定を結んできたが、夫は「私には事前に何も知らされなかった。遺族に話を聞いてもいいのではないか」と不信感を募らせる。

 強盗殺人罪などで起訴されたナカダ被告の裁判は、始まる見通しが立たず、時間だけが刻々と過ぎる。「なんで私の家族だったのか。家族が最後に何を言っていたのか。3人を返してほしい」。夫は被害者参加制度を利用し、公判でナカダ被告にぶつけるつもりでいる。

■熊谷6人殺害事件

 熊谷市の民家3棟で、2015年9月14~16日、小学生の姉妹を含む6人が殺害された事件。14日に同市見晴町で田崎稔さん(55)と妻美佐枝さん(53)、16日に同市石原で白石和代さん(84)、加藤美和子さん(41)と長女の小学5年美咲さん(10)、次女の同2年春花さん(7)の計6人(年齢はいずれも当時)が相次いで殺害された。ペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(31)が今年5月に強盗殺人、死体遺棄、住居侵入の罪で起訴された。事件前の13日、ナカダ被告が熊谷署から立ち去った後、石原地区で2件の住居侵入事件が発生。近隣住民への注意喚起が不十分だったとして、県警の対応が疑問視された。

最終更新:9/13(火) 9:41

埼玉新聞