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1ポイントの執念の奪い合い----王者ジョコビッチは力尽き、ワウリンカがグランドスラム3度目のV [全米テニス]

THE TENNIS DAILY 9月13日(火)7時30分配信

 アメリカ・ニューヨークで開催された「全米オープン」(8月29日~9月11日)の最終日は、女子ダブルス決勝に続き、男子シングルス決勝で14日間の戦いを締めくくった。

【全米オープン14日目_WOWOW動画】男子シングルス決勝 ワウリンカvsジョコビッチ、女子ダブルス決勝、表彰式

 最後の勝者となったのはスタン・ワウリンカ(スイス)。王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に6-7(1) 6-4 7-5 6-3で逆転勝ちし、2014年全豪、2015年全仏に続き3度目のグランドスラム優勝を果たした。

 女子ダブルスでは第12シードのベサニー・マテック サンズ(アメリカ)/ルーシー・サファロバ(チェコ)が第1シードのカロリーヌ・ガルシア/クリスティーナ・ムラデノビッチ(ともにフランス)を2-6 7-6(5) 6-4で破り、昨年の全仏オープン以来のグランドスラム・タイトルを手に入れた。

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 ジョコビッチが第1セットを取った試合の勝率は、過去1年間に限れば100%である。その統計だけで見るなら、第1セットをジョコビッチが取った時点で勝負はあったと考えるのが自然だ。しかし、ワウリンカにそのセオリーは通用しない。ジョコビッチに勝った2015年の全仏オープン決勝、2014年の全豪オープン準々決勝ともに、第1セットを奪っていたのはジョコビッチだったのだ。

 ここまでの6試合での試合時間はジョコビッチが8時間58分で、ワウリンカはほぼ倍の17時間54分。ジョコビッチは不戦勝や相手の途中棄権により、6試合中3試合しかまともに試合をしていない。対照的な勝ち上がり方の二人のラリーは立ち上がりから白熱した。

 ワウリンカが息をのむショットで攻め立てれば、ジョコビッチは1ポイントに対する不屈の執念で追いついてみせる。いったいどこに打てば、何球攻め続ければ、この王者にダメージを与えることができるのか……気が遠くなりそうな1ポイントにワウリンカは挑み続けた。そうやって過去にジョコビッチに勝った経験、グランドスラムを制した経験が自分を信じる根拠になっていたのだろう。ワウリンカが第2、第3セットを連取。1ポイントに労する負担はジョコビッチにとっても同じだった。

 試合時間が3時間半になろうとする第4セット、ジョコビッチは異例のタイミングでメディカルタイムをとった。ワウリンカが第2ゲームをブレークし、その後1-3としたところだった。エンドチェンジではないから、急を要する治療のためにのみ許されているのだが、ジョコビッチはそれを主張した。「爪がはがれて血が出ていた」という。最初の2セットで見せていた動きのキレは衰え、明らかに異変を物語っていた。

 しかし、1ゲームに2本のダブルフォールトをおかしたり、ファーストサービスの確率が50%を切るセットが2つもあるようなサービスの不調は、足のケガのせいではなかった。夏に手首を痛め、肘にも痛みが広がり、それらをかばおうとしてフォームが乱れたという。この夏のケガの代償だったジョコビッチ陣営が大会前に不安視していたことが、すべて表れ始めたのだ。

 それにしても5割程度の力に落ちても、ジョコビッチからポイントを取るには情けは禁物だった。最後までリスキーなショットで攻め続けなくてはならず、メディカルタイムのあとも実際ブレークされそうな場面もあったが、耐え、3時間55分の試合を締めくくった。

 一昨年から毎年一つ、異なるグランドスラムのタイトルを手にしてきたワウリンカは31歳。実に効率的に生涯グランドスラム(キャリアを通じて4つのグランドスラムのすべてで優勝すること)にリーチをかけた。もうワウリンカを「ビッグ5」と呼ぶことに異論を唱える者はいないだろう。しかし本人は首を横に振る。

「ビッグ4とはかけ離れているよ。彼らがどれだけ長い間、あの位置を守っているか……僕は3つグランドスラムを獲ったけど、ノバクは1年に3つ、マスターズも5つ勝ったりする。とうてい及ばない」

 世界1位も目標とするところではない。ジョコビッチのようなコンスタントな成績には叶わないと思っているからだ。

「いつも言っているように、その日できる最大限の努力をして、一歩一歩、一日一日頑張っていくだけだ」

 謙虚な姿勢は、ロジャー・フェデラー(スイス)という存在が身近にいたせいだろうか。これでツアーの決勝11連勝。気負いのない31歳は、それゆえまだ大きな可能性を秘めている。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

最終更新:9月13日(火)7時30分

THE TENNIS DAILY