ここから本文です

「耐クマ製品」の認証で活躍する8匹の検査官

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月13日(火)11時12分配信

 【ウェスト・イエローストーン(米モンタナ州)】人間の食物を初めて盗んだクマは30マイル(1マイル=約1.6キロメートル)離れた場所に移される。2回目は60マイル、3回目は100マイルと長くなる。そして最終的には消費財のコンサルタントになってしまう。

 イエローストーン国立公園に近い「グリズリー・アンド・ウルフ・ディスカバリー・センター(GWDC)」では、ゴミ箱を襲撃したり、駐車中の車に侵入したり、鶏舎に押し入ったりする能力が証明された8匹のクマが、製品の耐用試験として利用できる技術を披露している。

 これは単純なアイデアだ。アウトドア用品メーカーが自社製品をクマからの攻撃にも耐えられる「耐クマ性」として売り出したいなら、確認する方法は一つある。

 クマの飼育担当者がピーナツバター、魚、肉などのごちそうを容器に入れ、クマを囲っているおりの外に設置する。その後、クマをおりから出して飼育員はその場から離れる。

 製品がクマからの攻撃に60分間耐えることができれば、めでたく「耐クマ性」の認定証を獲得することになる。

 この認定証は、ゴミ箱メーカーは言うまでもなく、キャンプ用品やゴムボート用品のメーカーが切望しているものだ。ただ、簡単にはいかない。耐用試験に参加したクマの「コバック」は、ふた、ラッチ(掛け金)、側面から食物容器を壊すほど器用で、「デストロイヤー(破壊クマ)」の異名が付けられている。

 アリゾナ州のメーカー、ノースランド・プロダクツのオーナーであるビル・マイケル氏は過去5年間、さまざまな種類の自動ゴミ箱をコバックによる検査にかけてきた。そして、最終的にコバックとその仲間たちの裏をかけるようになるまで、何度も設計を見直してきた。

 野生のクマが人間の食料庫やゴミ箱、鳥の給餌箱、犬用の食物にしつこくつきまとえば、野生生物の保護係員が鉄製の長いカルバート(筒状の通路)におびき寄せてわなで捕らえ、タグを付けた上で別の場所で野に放つ。

 通常、クマには3回のチャンスが与えられる。ある妊娠中のクマには6回のチャンスが与えられたが、何度もゴルフコースに戻ってきた。そこでは一部の人間が写真を撮るためにピザを与えたことがあったのだ。何度も攻撃を繰り返し、人間に危害を加える恐れのあるクマは安楽死させられるか、動物園に送られるか、あるいは一部が耐用試験の検査員に抜てきされる。

 GWDCでの試験が目指すのは、クマでも開けられないほど頑丈な食料庫を開発することだ。なお、GWDCとイエローストーン国立公園との間につながりはない。

 簡単には「耐クマ性」認定証を与えないよう、8匹のクマはGWDCで一連の技を披露する――ツメで攻撃したりかみついたりするだけでなく、製品を岩に投げつけたり、転がして下に落としたりするのだ。

 実績のあるクマの動きは、一心不乱に心肺蘇生措置を行っているようかのようにも見える。横にゴミ箱が置かれるとクマは後ろ足でそびえ立ち、どう猛に箱を上下に振り回して破壊しようとする。

 1時間に及ぶクマの猛攻撃を受けた後でもラッチが無事で、コンテナに付けられた歯やツメの傷が1.5インチ(約3.8センチ)以下であれば、その製品は合格だ。GWDCでは、この乱暴な耐用試験を年に40回から80回行っている。検査料は1回500ドル(約5万円)。試験を見たい人にはチケットまで販売されている。

 5歳のクマが149.99ドルのアイスボックスを引っかき回している間、GWDCで耐用試験を実施するランディー・グラバットさんは「アイスボックスの合格率は60%で、この製品は非常に良く持ちこたえている」と話した。1時間にわたり打撃を加えられ、突き刺され、引っかかれた後、この製品は合格となった。

 クマの関心を継続させるため、GWDCは簡単に開けるプラスチック製のダミー製品を与える。

 グラバットさんは「10回連続で試験を行い、その全てが攻撃に耐えて中の食料を獲得できなければ、クマは11回目に挑戦しないかもしれない」と語る。

 GWDCの耐久試験に合格することが、組織間グリズリーベア委員会(IGBC)から「耐クマ性」の認定証を得るための最高基準となる。IGBCは、米国とカナダでグリズリーを監視する州および連邦機関を代表するグループだ。

 一方、米農務省林野部のスコット・ジャクソン氏は「『認定証を受けた製品』でもクマには耐えられないことを警告している」と指摘。クマは「驚くほど強く、いろいろと工夫を凝らしてくるのだ」と述べた。

 ジャクソン氏は「(耐用試験に)十分な時間が取られれば、どんな製品でも『耐クマ性』になるのは難しくなる」と締めくくった。

By HARRIET TORRY

最終更新:9月13日(火)11時12分

ウォール・ストリート・ジャーナル