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秋のトレンドは80年代風 重要なのはバランス

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月13日(火)17時17分配信

 ゼブラ柄のパンツや蛍光カラー、そしてコーンブラ。秋のトレンドとなっている1980年代のファッションを思い出す時、頭に浮かぶのはそんなイメージではないだろうか?

 パリで行われたイヴ・サンローランのショーも、まさにそのレトロな時代を再現した内容となった。登場するモデルたちは髪をオールバックにし、アイメークはスモーキーに統一され、リップはクリムゾン色。まるでロバート・パーマーのビデオかヘルムート・ニュートンの写真から飛び出してきたようないでたちだ。服の方も大きく張った肩や短いふわふわのスカート、そしてお菓子の包み紙を思わせるようなパレットカラーが主役。パリ第7区にある会場には巨大なシャンデリアも設置され、やりすぎ感があった時代を思い起こさせた。

 イヴ・サンローランのクリエーティブ・ディレクターを務めるエディ・スリイマン氏はショーが開催された数週間後にブランドを去ったが、彼がここ数年テーマとしていたロック・テイストのデザインは評論家から支持を得られていなかった。しかし今回のショーでは1980年代を参考にして大正解。自らを批判した人たちに対する強烈なメッセージとなったといえる。

 「1980年代はファッションが純粋に楽しまれていた時代で、独特なクチュール文化もあった」と話すのはダラスのブティック、フォーティ・ファイブ・テンのオーナーであるブライアン・ボルク氏。「あの時代はきらびやかで、グラマラスで、いろいろな工夫が見られた」

 ファッション工科大学(FIT)のミュージアムでディレクター兼館長を務めるバレリー・スティール氏も「1980年代のファッション界はいろいろな面で過激さがあった」と振り返る。

 しかし当時のスタイルのすべてがどれも過度に派手だったわけでもない。クリスチャン・ラクロワの色鮮やかな服が売れた時代であった一方で、当時は女性の社会進出が進んだ時期でもあった。そんな女性の需要にうまく対応したのが、ダナ・キャランが提唱した「セブン・イージー・ピーセス」のコンセプトや、ジョルジオ・アルマーニが提案したソフトながら力強さも感じるスーツだった。

 また1980年代の女性たちはスポーティーなデザインや男性用のファッションなどをカジュアルに組み合わせ、その発想は今の時代にも引き継がれている(1983年の映画「フラッシュダンス」を見れば、使われているコスチュームが今でも通用するほどモダンであることに驚くはずだ)。さらにあの時代はゲスやカルバン・クライン、ジョーダッシュといったブランドによってデニムがファッション界で注目されるようになった頃でもある。

 今も意見が割れるアスレイジャー(アスレチックとレジャーを組み合わせた造語)なファッションも、その起源は1980年代にある。「フラッシュダンス」を担当した衣装デザイナーのマイケル・カプラン氏によると、エクササイズ用の服とファッションが初めて融合しはじめたのは当時のことだったという。

 今年のドリス・ヴァン・ノッテンのパンツスーツや大きめのトラウザーは1980年代にアルマーニが作り上げたスタイルから影響を受けている、とFITのスティール氏は話す。デムナ・グバサリア氏がアーティスティック・ディレクターに就任して注目されたバレンシアガのショーも、21世紀の働く女性を強く意識した内容となった。ヴェトモンではストリート風のデザインで話題を呼んだグバサリア氏だが、バレンシアガのショーではシルクのブラウスの上にチェック柄のスカートスーツを選び、そこにゴールドのジュエリーととがったパンプスを合わせたファッションなどを披露した。映画「ワーキング・ガール」でメラニー・グリフィスが扮したテス・マクギルが喜びそうなファッションだ。

 なぜ今、ファッション業界が1980年代からインスピレーションを受けているのか。ここ数年をかけてトレンドは1960年代、1970年代、そして1990年代へと移っていったことを考えると、1980年代が採り上げられるのも時間の問題だったとも言える。またブティック店ウェブスターを設立したローレ・ヘリアード・ドゥブレウィル氏は、「デザイナーは自分が育った時代から影響を受けることが多い」とも話す。しかしそれだと、35歳のグバサリア氏が1980年代のファッションから影響を受ける理由にはならない。

 いずれにせよドゥブレウィル氏はシルエットを強調したグバサリア氏のデザインを高く評価し、「秋シーズンは、主張のあるジャケットを使って全体のトーンを決めるのが流行だ」と指摘した。

 1980年代のファッションを採り入れる場合に注意したいのは、単調でつまらなくなることを避けるためにも趣味がいいか悪いかを基準にしないことだ。ファッション的に見ていて楽しいのは、「あり」と「なし」の境界線ぎりぎりにあるデザインだ。そういった服は自己満足に走る傾向があるミレニアム世代を刺激する。そしてその枠に当てはまるのが、イサベルマランのゼブラ柄のジーンズであり、サイズ感に特徴があるステラ・マッカートニーのタイダイ染めデニム・ジャケットであり、ドリス・ヴァン・ノッテンのクリケット・セーターだ。

 今も昔も、洗練されたものと少しレイドバックしたものを融合させることが重要だが、「ポイントとなるのはバランスだ」とフォーティ・ファイブ・テンのボルク氏は話す。「肩がしっかりとあるジャケットは、セクシーなスリップドレスに合わせると一番いい。プリーツがしっかりと入ったズボンを穿く場合は、体にぴったりと合った上着がいい」。服の費用は大きな出費だが、1980年代を意識した衣類はコスチュームっぽいような服と比べて長く使える傾向があることも覚えておきたい。

By ESTHER ADAMS ACHARA

最終更新:9月13日(火)17時17分

ウォール・ストリート・ジャーナル

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。