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米大統領選終盤、トランプ氏に「十分勝機」―WSJ編集局長が語る

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月13日(火)17時22分配信

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は12日、米大統領選挙をテーマにしたトークイベントを開催し、来日したジェラルド・ベーカー編集局長が終盤を迎えた選挙情勢について講演。投票日まで60日を切った今なお支持率が拮抗(きっこう)する中で、共和党候補のドナルド・トランプ氏にも「十分に勝機がある」とした。

 その大きな理由として、世論調査では両氏ともに不人気であることが示されているが、その中身には違いもあると指摘。トランプ氏が有権者から「嫌われている」一方で、クリントン氏は有権者から「信頼されていない」という差があると述べた。そのうえで、クリントン氏に対する不信感は同氏の長年の政治活動を通じて蓄積されたものであり、簡単には解消されにくいものである一方、トランプ氏は討論会などで言動を修正すれば支持率が上向く余地は十分に残されているとした。

 クリントン氏は8月の党全国大会後、トランプ氏に8ポイントの差をつけて優位に選挙戦を進めていたものの、わずか1カ月でその差が2ポイント程度に狭まってきている。

 この背景にはクリントン氏の私的メール問題などに対する有権者の不信感があるが、投票日までのわずかの期間でこの「不信感」を拭い去るのは難しいというのが、ベーカー編集局長の見方だ。また直近では、9・11同時多発テロ追悼式典をクリントン氏が途中退席
したが、その理由についての陣営からの説明は「脱水症状」や「肺炎」などと二転三転し、健康状態への懸念を広めただけでなく、「真実を語らない」とする同氏のイメージをさらに悪化させる要因になったとしている。

「変化」を求める声

 さらにベーカー編集局長はクリントン氏に対する逆風として、米国民の間で「変化」を求める声が高まっていることも指摘。1940年代以降に3期連続で同一政党が政権を維持したことは1度しかなく(共和党レーガン元大統領とジョージ・H・W・ブッシュ元大統領)、長期的に見て有権者はリーダーシップに変化を求め続ける傾向があるとした。その点、クリントン氏は大統領夫人、上院議員、そして国務長官として25年近くも米国政治の表舞台に立っていた経歴を持ち、現状維持の象徴でもある。政治には関わってこなかったトランプ氏が変化のイメージをアピールするのは容易だが、クリントン氏はそれがしにくい立場にいる、とベーカー編集局長は語った。

 過去30年にわたる経済のグローバル化から恩恵を受けられなかった層が声を上げた結果、最近では英国が欧州離脱を決め、欧州の他の国でも右傾化が見られる。世界から見れば比較的安定していると思われがちな米国も、経済成長はまだ弱々しく、所得格差の問題も渦巻く。外交面では中国やロシアの台頭が米国の地位を脅かし、さらにテロ増加への懸念も高まる中で、政治のリーダーシップに対する不満は米国内でも募っているとベーカー編集局長は話した。

クリントン氏への追い風も

 ただしクリントン氏にとってプラスに働く点もいくつかある。民主党支持者が多いヒスパニック系の有権者が増加するなど長期的に人口動態が変化したことに加え、高学歴の有権者や若者も民主党候補に投票する傾向が高い。その結果、過去6回の大統領選のうち5回で民主党候補者の一般得票数が共和党候補者を上回っている。「今の人口動態ならば、1980年の大統領選挙でレーガン大統領は当選できなかったはずだ」とベーカー編集局長は語った。

 米大統領選は538人の選挙人を通じた間接選挙方式で勝敗が決まるため、過半数の270人を獲得できれば当選が決まる。人口動態の変化を背景に民主党は安定した支持を有権者から得ており、過去6回の大統領選では少なくとも242人の選挙人を毎回獲得している。それら盤石とされる州に加えて、28の選挙人を獲得するだけでクリントン氏は当選確実となるとベーカー編集局長は試算する。

 今回の大統領選において鍵を握るのはペンシルベニア州、フロリダ州、オハイオ州、そしてノースカロライナ州。トランプ氏はこの4州全てを獲得しなければ当選が見えてこないが、民主党人気を支えとするクリントン氏は4州のうち1州でも勝てば当選が近づくとベーカー編集局長は語った。

ポイントは討論会とウィキリークスか

 選挙戦終盤の情勢を見ても、まだ勝者を予測するのは難しいとベーカー編集局長は語った。トランプ氏当選にも「現実的な可能性」が残る中、この先は最終決戦の場となる両候補の討論会が控える。また民主党幹部間の私的な電子メールを流出させた内部告発サイト「ウィキリークス」の動きにも注目だとし、今後クリントン氏にダメージを与える何かしらの新たな情報が公開される可能性もあるとした。

 歴史的に見ても群を抜いて不人気の2人が僅差で争う今年の選挙を、ベーカー編集局長は「最も異常な大統領選」と表現。米国民の間でも注目度は高く、テレビ中継される討論会は高視聴率を獲得するだろうと予測した。

By JUN HONGO

最終更新:9月14日(水)11時7分

ウォール・ストリート・ジャーナル