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ココイチが急速に“マンガ喫茶化”しているワケ

ITmedia ビジネスオンライン 9月14日(水)6時40分配信

 通称“ココイチ”こと、「カレーハウス CoCo壱番屋」――。売上高は6期連続で増収、営業利益・経常利益・当期利益は3期連続増益となっており、ともに過去最高と相変わらずの好調ぶりである。店舗数は5月末で、国内1282店、海外162店の計1444店。カレー専門店の圧倒的シェアを握っており、2位以下は80店に満たない状況だ。

【店内にあるマンガ。積極的に冊数も増やしている  全ての画像はこちらから】

 実は、そんなココイチが近年“マンガ”に力を入れ始めている。どういうことか。

 実際にココイチに行った人は、店内に本棚が設けられ数多くのマンガが並んでいるのに気付かなかっただろうか。2010年頃からココイチでは、店舗の快適性向上を目的にマンガを設置し、順次拡充している。

 既に5~6年をかけて全店舗の半分、約700店にマンガの書棚が導入されている。直近1年で200~300店に新規に設置されており、マンガを置く店が急速に増えた。

 都心部にある狭いスペースの店舗では、マンガを置くのは難しいが、可能な限り全店に設置していく方針である。冊数は店によりまちまちだが、1店舗につき平均して1500冊、郊外店では、なんと4000冊ものマンガを置く店もある。4000冊ともなればちょっとした図書館並みで、なかなか壮観だ。

 「設置するマンガの本のタイトルは本部が決めて、スーパーバイザー、店長がその中から手配します。一般的に人気のタイトルをそろえていますね。食事にふさわしくない乱暴なシーンが多いようなのは避けています」と、壱番屋・広報の浅井佳会氏。

 そして、なるべくシリーズ物を置くようにし、男性客が7割を占める顧客層を考慮して、タイトルを選んでいるという。例えば、『ONE PIECE』『NARUTO‐ナルト‐』のように大人でも楽しめる少年マンガだ。

 また、全店ではないが可能な限りコンセントを設置しており、モバイルワーカーやゲーマーに重宝されている。食べている間に充電でき、マンガを読んでくつろいでいるうちに、バッテリーが満タンになる。

 コンセントはテーブルに1セット、カウンターでは2席ごと、または3席ごとに1セットが設置されており、新店ではほぼ全部の店に付いている。さらに、3年前からWi-Fiの導入を進め、現在は98%の店舗で完備している。

 しかしなぜ、このようなマンガ、コンセント、Wi-Fiがそろった“マンガ喫茶化”を推進しているのか。

●アイドルタイムの集客のために“原点回帰”

 ココイチが念頭に置いたのは、ランチとディナーの間のアイドルタイムの集客である。午後の3時~5時くらいまでの顧客が途切れる時間帯に、喫茶店ように使ってもらえないかと思案を巡らせた結果、出てきた答えなのだ。コーヒーを1杯だけ飲んで、マンガを読んでゆっくりしていってもらうのも歓迎だという。

 考えてみればココイチの発祥は、創業者の宗次徳二・直美夫妻が1974年、名古屋市内に開業した喫茶「バッカス」、翌年その近所にオープンした2号店「浮野亭」で提供していたカレーライスが評判となったのをきっかけにカレーライス専門店へとシフトしたものだ。つまり、もともとは喫茶店であり、愛知県清須市内の3号店「CoCo壱番屋 西枇杷島店」から、今日のココイチの歴史が始まっている。

 また、マンガ喫茶の発祥は1980年頃、名古屋で登場したとされており、名古屋では喫茶店が多く競争が激しいために、サービスの一環としてマンガを多く置きはじめる店が出てきたといわれている。といったことから、ココイチのマンガ喫茶化は、発祥である喫茶回帰とも見える。

 これは名古屋発祥の郊外型喫茶「コメダ珈琲店」が人気を博してきた、マーケットの変化をとらえた施策でもあるだろう。コメダ珈琲店ではマンガの棚はないものの、暇をつぶすための新聞や雑誌が数多く置いてある。

 ココイチの顧客もマンガがあることで、同様の効果を生んでいる。なぜ、コメダが新聞・雑誌で、ココイチがマンガなのかというと、コメダの顧客が高齢者中心なのに対して、ココイチの顧客層はもっと若いことに起因するだろう。ココイチの店に行くと、マンガを読みながらカレーを食べていたり、コーヒーを飲んでいる人が多いことに気付く。テイクアウトの人も、マンガを読みながら出来上がるのを待っている。

●ファストフード型から喫茶型のカレー専門店に

 ココイチは10年掛けて、店舗の改装に取り組んできた。その改装が昨年5月に終了している。一番変わったのは、詰め込み型の店舗から、ゆっくりできるように隣の席との間隔を広くしたことだ。従来型よりも改装後の方が、5~10センチ座席の間が広くなっている。また、椅子の幅、テーブルの大きさもゆったりとさせており、体格のいい人でも座りやすくなった。

 こうして、アイドルタイムでも集客できるようにファストフード型から喫茶型のカレー専門店に、シフトさせていった。ランチのような混み合う時間に、マンガを読んで長居されても困るが、顧客は待っている人を見ると自ら察して席を譲るそうだ。またピークのランチ時では基本的に長居できる暇のある人はそんなに多く来ない。

 ココイチは、豊富なトッピングで自分なりにカレーをカスタマイズできるのが、最大の魅力だ。そのシステムに加えて、「スープで食べるローストチキンと野菜のカレー」「チキンと夏野菜カレー」のような期間限定メニューによって、牛丼店よりはるかに高い890円の顧客単価を取りながら繁盛している。

 そうした独特なメニューのシステムのみならず、ここまで述べてきたマンガ喫茶化という新たな取り組みもココイチの成長を後押しているのだろう。



(長浜淳之介)

最終更新:9月14日(水)11時39分

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