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「なら国際映画祭」 映画監督・河瀬直美さんに聞く 若手が世界へ挑戦する場に

産経新聞 9月14日(水)7時55分配信

 ■開催危機で思い伝わった

 今年で第4回目となる「なら国際映画祭」。奈良市からの補助金が全額カットされたことで、一時は開催さえ危ぶまれた。「ピンチをチャンスに変える」と寄付などを募り、予定通りの開催にこぎつけた今回の映画祭について、その魅力や今後の展望を、提唱者でエグゼクティブディレクターの映画監督、河瀬直美さん(47)に聞いた。 (山崎成葉、石橋明日佳)

 -開催が危ぶまれたが、当初の予定通り実施される運びになりました

 河瀬 潜在的な支援者がかなりいたことを実感している。今回の(奈良市の)補助金全額カットを受けて、広くみなさんに知っていただく機会になり、私たちの思いも伝わったんだと思う。決して「河瀬直美の映画祭」ではなく、「みなさんがわくわくする体験になる」ということが伝わったと思う。レッドカーペットクラブ会員は例年の10倍集まり、協賛企業も倍増した。

 --カンヌ国際映画祭のシネフォンダシオン(学生映画)とのパートナーシップ協定も締結されました

 河瀬 今年はカンヌの「シネフォンダシオン」部門で審査委員長もさせていただいたご縁で結べた。奈良にアクセスすればカンヌにつながり、カンヌのものも奈良で見られるということになる。今年は短編部門の最高賞・パルムドールの作品を奈良へもってきて、監督もお呼びする。つまり、奈良でカンヌが体験できる。作品が見られて、監督とも会える、ほかではない体験だと思う。

 -日本映画界の若手の現状をどうみていますか

 河瀬 若手を世界に発表できずにいると思う。ここ10年以上、新しい監督が出ておらず、韓国や中国にもどんどん追い越されている。ここで歯止めをかけないと、日本映画が世界に認められない形になっていく。若手がどんどん出ていく場を作らないといけない。潜在的にはいるが、「どうしたらいいのか」という状態になっている。

 今回、若手を対象に、国際的に活躍できる監督などを育成するプロジェクト「Road to Cannes~カンヌへの道」にディスカッションの機会を設けたら、50人の申し込みがあった。みんな、短編を作って、海外で受賞経験がある若手。これだけいるのに、日本映画界は活用できていない。若手が映画を作れない、作っても配給できないという現状だ。そこを底上げする役割も「なら国際映画祭」は担っている思う。今年が最初のチャレンジなので、種を植えたい。

 --今回の楽しみ方は

 河瀬 2年前に「4日間だと見たいけど見られない」という声があったので、6日間に会期を延ばし、コンペ会場も2カ所に増やした。式年造替の年でもあり、春日大社での奉納上映など、奈良らしい取り組みもチェックしていただければ。

 --ほかの映画祭とのコラボもあります

 河瀬 「市民生活に直結していない」と市議会で補助金がカットされたので、広く多くの世代に認識してもらおうと、小さな子供も楽しめるコンテンツとして「キネコ国際映画祭」とタイアップした。関西初で認知度もまだ低いので、奈良県内在住の子供連れのご家族には、「1家族千円」にした。「親子で楽しめる」「映画ファンだけが対象じゃない映画祭なんだ」と認めてもらうことで、奈良市にもまた補助してもらえる可能性を広げられるのではと思っている。

 --今後の運営体制はどう考えていますか

 河瀬 チケット収入を増やさないといけない。関連企画の移動型映画館「シネマテーク」などをしっかり土台にし、また2年後もやっていきたい。

 -河瀬監督にとって「なら国際映画祭」とは何でしょうか

 河瀬 映画祭に参加した人は、その土地の魅力も自分の国やまちに持って帰る。奈良で行われる映画祭に参加した各国の人は、奈良の魅力を自分たちの国に持って帰ってくれるわけです。これは、都が置かれた1300年前から奈良で行われてきたはずのことで、本当の意味での「国際交流」だと思う。

 映画祭のコンテンツは映画。継続するには、自分が映画を作るだけでなく、地域の人とともに作ることで、みんなが「自分の地元でも何かできる」と認識でき、自分たちのまちに誇りを持つことになる。私にとっては、一つのライフワークです。

 --17日からの開催に向け、メッセージを

 河瀬 星空上映会も奈良公園内でやりますし、まち全体が映画館になります。秋の良い季節、奈良の空気を吸って、まちを楽しんでください。

最終更新:9月14日(水)7時55分

産経新聞