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東京ゲームショウをゴールとした人材育成プログラムを 「第1回 プロから学ぶ! “はじめての”ゲーム開発インターンシップ」リポート

ファミ通.com 9月14日(水)13時32分配信

文・取材・撮影:ライター 戸塚伎一

●初開催となる人材育成イベント
 ゲーム業界に興味を持つすべての学生のためのワークショップ 「第1回 プロから学ぶ! “はじめての”ゲーム開発インタ-ンシップ」が、2016年 8月22日(月)・23日(火)の2日間、パシフィコ横浜会議センター(神奈川県横浜市)にて行われた。一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(以下、CESA)の新たな人材育成イベントの模様と、その展望についてのインタビューをお届けする。

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 “CEDEC 2016”開催直前の2日間、同じ会場で行われたこのインターンシップは、全国各地からエントリーがあった約100名の学生(高等専門学校生、専門学校生、大学生、大学院生)が、“ゲーム開発を行ううえでこれだけは知っておきたい”という仕組みを学び、実際にゲームデザイン制作の演習を行うという参加費無料イベント。1日目は、『ことばのパズル もじぴったん』シリーズ(バンダイナムコエンターテインメント)のプロデューサーであり、神奈川工科大学の特任准教授・中村隆之氏を講師に招いての講義と、それをふまえたうえでのゲームデザイン分析演習が行われた。講義のテーマとなった、中村氏考案のゲームデザインフレームワーク“EMS Framework”は、ゲームにおけるアクションの手段・目的・構造に着目して作られたシンプルなフレームワーク。ゲームデザインの基礎知識がなくてもゲームのアイデア出しができるのが大きな特徴ということで、ゲーム制作経験に乏しい多くの参加者たちは、熱心に聞き入っていた。

 2日目は、無作為に選ばれたグループ単位によるゲーム開発演習ワークショップと、その成果物のプレゼンテーション。前日に学んだゲームデザインフレームワークを用いての集団作業に、参加者たちは若干の戸惑いを見せつつも、当日に出されたお題に沿ったアイデアを、それぞれのペースでまとめていった。

 来場した開発担当者から多くの得票を集めた5グループは、壇上で全体プレゼンテーションを行うことに。3分という限られた時間内で、いかに要点を押さえた説明ができるかが問われた。その結果、グループ9(チーム名:みそとんこつバリカタ)が最優秀賞として表彰され、イベントは終了した。

●CESA・人材育成部会副部会長・馬場保仁氏インタビュー
 近年、セガゲームス常務取締役の松原健二氏を部会長として新設された、CESAの人材育成部会。今回のイベントを皮切りに、新たな展開を画策するという同部会の思惑について、今回のイベントの実行委員長的存在である馬場保仁氏に話をうかがった。

──今回のインターンシップを企画した経緯を教えてください。
馬場保仁氏(以下、馬場) CEDECはいままで、プロのゲーム開発者たちが技術を高めるための情報共有を目的にやってきました。それがある程度形をなしてきたので、今後人材をどう育てていったらいいか、ゲーム業界の未来を担ってくれる人たちに業界に入ってもらうにはどうしたらいいかということで、去年の秋口に人材育成部会のメンバーで話し合いました。さしあたって、毎年東京ゲームショウ(以下、TGS)で受賞作品の発表・授賞式が行われる日本ゲーム大賞(主催・CESA、後援・経済産業省)のアマチュア部門の担当を引き取り、それとともに、ゲームを作ることに関して、もっとアマチュアの人たちに体系だてて学んでもらう機会を作ることが必要だということになって、今回のインターンシップを企画しました。例が適切ではないかもしれませんが、僕ら世代が子どものころは、高橋名人(高橋利幸氏)がいて、ハドソン全国キャラバン(※ゲームメーカーのハドソンが主催していた、巡業型のゲーム大会)があって、ファミコンなんちゃらっていうテレビ番組が山ほどあったじゃないですか。ゲームのおもしろさを知る機会が、すごくたくさんあったんです。いまは“ゲームを作ることがおもしろい”ということを教える機会を持っておかないと、この業界を目指す人が増えてこないんじゃないかなというのが、僕の中ですごくあるんです。

──それは、ゲーム業界志望者が増えない、あるいは減少しているということが、数値でも明らかになっている、ということでしょうか?
馬場 減っているというか……「異業種に行くならこっちに振り向いてくれ」っていうとへんな話ですけど(笑)、スマホでメールやSNSをやる時間が、ゲームを遊ぶ時間を浸食してきているなど、いまはいろいろな情報や遊びがあるから、ゲームだけが遊びの大きな割合ではなくなっているのは事実です。その段階で、ゲームのおもしろさを当たり前のように知っている僕ら40代が、下の世代にもちゃんと伝えていかないと、どんどん先細りしていくんじゃないか、という仮説ですね。ゲームがそもそも持っているポテンシャルや、ゲームを作るおもしろさ……みんなで考えてものを作っていくことっておもしろいね、と思える機会をたくさん作っていきたいと考えています。今年の日本ゲーム大賞のアマチュア部門には、330タイトルほどエントリーがありましたが、ここで成果を出したアマチュアたちが就職活動につながるかというと、(授賞式がある)TGSが9月ですから、就活には遅いんですね。それでは、どういう子たちが応募するのにいいのだろうと考えたとき時に、ひとつひとつのイベントや施策を線でつないで、ひとつのサイクルを作ろうということになりました。

──具体的にはどういった形になるのでしょうか?
馬場 就活1年以上前の学生さんたちをおもな対象に、日本ゲーム大賞アマチュア部門での受賞を最終目標とした、段階的な人材育成イベントを開催していく……というものです。今回のインターシップの軸となるのは、中村(隆之)さんが考案した、ゲームのアイデアを考えるうえで知っておくとよい技法です。なかなかプロでも知らない人が多いこの技法を学んだうえで、初めて会う人とグループでゲーム企画をまとめるというのはかなりたいへんなことですが、必ずいい経験になると思います。「なぜプログラムでゲームを作らないのですか?」とよく聞かれますが、それでは職種が限定されてしまいます。ゲームには工学的、技術的なアプローチだけでなく、感性やエモーション、あるいはプロモーションなど、もっといろいろあってもいいと思うんです。アイデアを考えて企画を作るところまでなら、どんな職種でも参加できるじゃないですか。今回は100人の定員に対して、北は北海道、南は沖縄まで300人くらいのエントリーがあり、そういう意味では狙い通りでした。将来的には、TGSが終わってから翌年3月の、日本ゲーム大賞の告知の前に、何かひとつ、新たなイベントを作りたいと考えているところです。僕たちがそうやって描いた道筋に沿って、多くの専門学校、大学が活動してくれることが理想というか、夢ですね。

──今回は業界志望の未経験者向けのイベントの一環とのことですが、すでにゲームを作っている、インディーや同人といった個人規模の開発者へのサポートなどは、将来的に考えているのでしょうか?
馬場 絶対やらないとは言いません。ただ先ほども言った通り、まずは個々のイベントを点ではなく線にする際に、誰にとっての線にするかなんです。そういう意味で我々が第一義にやらなければならないことは、アマチュアの学生に向けた筋道作りなんです。僕自身、大手ゲームメーカーにいたからわかるのですが、大手にいると、会社としての利益を守らなければならず、作りたくても作れないゲームがあるのは確かです。その一方で、儲け度外視で、自分たちの思いだけで作った突き抜けた作品が、世の中を変えるきっかけになることもあります。そういう意味で、インディーからじゃないと生まれづらいものがあるというのも、事実ですよ。インディー開発者への対応は、これまでも“センス・オブ・ワンダーナイト”を開催していたりと(※プロ・アマ作品を問わず、実験的で創造的なゲームデザイン・アイデアを含んだゲームを紹介するイベント。TGSで最終選考作品のプレゼンテーションと授賞式が行われる)、まったくしていないわけではないので、第二期(2017年)以降に考えなければいけないことだと思います。僕個人としては、インディーを含めて世に出ていくチャンスは山ほどあるんだよということを、CESAの人材育成の活動とは別に、継続していきたいと思っています。

──今回参加した学生や、次回以降に参加したいと考えている学生たちにむけて、ひとことお願いします。
馬場 このインターシップでの出会いひとつひとつをムダにしないでください。今回300人のエントリーがあって、200人が涙を飲んだうえで集まっているという事実を含めて、貴重な機会として生かしてほしいです。とにかく、自分たちの狭い世界にいてはダメなんです。いちばん大事なのは、自分が作りたいものを世に出して体現すること。外の世界の一部に触れるためにも、まず自分が全国のライバルのどの辺にいるのかを知ったり、自分よりもおもしろいことをやっている人から刺激を受けてほしいですね。今後、アマチュアの学生さんがより切磋琢磨できる環境をどんどん作っていくので、学生のうちにレベルを上げて、プロになった瞬間に「先輩、たいしたことないですね」と言えるくらいになってください。

──そ、そこまで!?
馬場 実際問題、難しいと思うんですよ、頭角を現すのって。僕が20年前に業界に入った時は、セガサターン(セガが1994年に発売した家庭用ゲーム機)用のゲームを、20人くらいのチームで1年かけて1本作っていましたが、いまのコンソール用ゲームは、もしかすると200人くらいのチームで、1タイトルに3年くらいかけて作っていると思うんです。そうだとすると、最初からギアを上げてこの業界に入らないと、いつまでたっても些末な仕事しかさせてもらえない可能性があります。大規模プロジェクトは、技術的にすばらしいものができる一方で、ひとりひとりが果たす役割が制限されます。そんな状況で「少なくともこれができます」と、ある程度自信を持って業界に入ってこないと、技術も経験もある先輩が(重要な部分を)担当するのは当然のことです。

──根拠ある自信をつける機会として活用してほしい……ということですね。
馬場 入る前の活動こそが、自分自身を高めてくれる大事なチャンスなんです。

最終更新:9月20日(火)17時36分

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