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山下達郎が約3年ぶりシングル「CHEER UP! THE SUMMER」について語る、オフィシャルインタビュー到着!

M-ON!Press(エムオンプレス) 9/14(水) 13:07配信

山下達郎

フジテレビ系木曜22時ドラマ「営業部長 吉良奈津子」主題歌としてすでに耳馴染みのある方も多いであろう、約3年ぶりのシングル「CHEER UP! THE SUMMER」。本日ニューシングル発売を記念して、オフィシャルインタビューを掲載! 山下達郎の楽曲に対する想いとは?

「CHEER UP! THE SUMMER」が主題歌のドラマ映像はこちら

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■最初はもっと孤独感を感じるようなアーバンな雰囲気の曲を書いた

──「CHEER UP! THE SUMMER」は達郎さんにとって3年ぶりのシングルです。タイトル曲は松嶋菜々子さん主演のテレビドラマ「営業部長 吉良奈津子」(CX系)の主題歌ですが、タイアップのお話があったのはいつ頃ですか?

山下達郎 ツアー『PERFORMANCE 2015-2016』が終わった頃です。映画は公開の1年ぐらい前に話が来るんだけど、ドラマはいつもわりと急。製作期間もものすごく短いからね。

──松嶋さんが1996年に主演したNHK連続テレビ小説「ひまわり」の主題歌「DREAMING GIRL」も、達郎さんの書き下ろしでしたね。

山下 「ひまわり」は松嶋さんの出世作で、あの時の印象が強く残っています。その後、「利家とまつ」や「家政婦のミタ」といった作品で活躍されているのも拝見してきました。ですので、僕なりの松嶋さんのイメージがあって、今回の曲を作るにあたっても、そういったことも少なからず加味したつもりです。

──以前、ドラマや映画の主題歌を書き下ろす際は、物語にできるだけ寄り添うようにしているとおっしゃっていたかと思います。今回はドラマのどのような部分が曲作りに影響しましたか?

山下 産休明けの女性がそれまでのクリエイティブ・セクションから営業に異動になり、子育てとのはさみうちで苦労する物語なんです。なので、最初はもっと孤独感を感じるようなアーバンな雰囲気の曲を書いたんですよ。でも、制作サイドから、“もっと明るい曲にしてほしい”という要望がありましてね。

僕は昔から座付き(専属)体質で、タイアップ曲は作品に寄り添ってナンボという考え方なので、リクエストに沿って明るめの曲に書き換えましたが、とはいえ今回はあんまり突き抜けすぎるとドラマに合わない気がしたので。ドラマと解離しないように、ちょっとだけ抑制を効かせました。

■今のトレンドとはまったく異なるセンスの夏

──達郎さんが作るタイアップ曲は、作品のイメージにすごく合いながらも、タイアップとしての役割が終わったあとでもまったく色褪せない印象があります。作品に寄り添っているのに、いつでも独り立ちできるというか……。

山下 僕は、作詞・作曲に加え、編曲も自分自身でやっています。編曲は時代にものすごく左右される作業なんですけど、昔から流行におもねることができない人間なので。今回の曲は全部ひとりきりでトラックを作っています。いわゆるひとり多重録音ですが、今、僕みたいなスタイルの音楽でこういうやり方をしている人は、もうほとんどいません。

今のトレンドだからといって、自分のなかにないスタイルを取り入れることは絶対にしないというポリシーを続けてきたので、今はもうガラパゴスを通り越して、もはや天然記念物ですね(笑)。夏の曲とはいえ、まったく流行とはかけ離れているし、今のトレンドとはまったく異なるセンスの夏でしょうね。
言葉がメロディに勝っているのが好きじゃない

──歌詞はいかがですか。主人公をはじめ、一生懸命生きている人たちを応援するような力強い言葉が並んでいますが、ここにも達郎さんならではのポリシーや流儀があるのでしょうか。

山下 ドラマの主人公は40代。アラフォーやアラフィフになると、いろんな意味で若い頃とはまた違った不安が出てきて、単純に人生を礼賛するスタンスはだんだんと失われていきます。

今回の歌は、そういう世代への応援歌みたいなものだけど、だからといって、特に大上段なテーマがあるわけではないんですよ。不安を抱えている世代へのチアアップソングを目指しはしましたが、なるべく具体性のない歌詞にしたいと思ったんです。

若い頃、特にシュガー・ベイブからソロになった70年代中期、歌詞に必要以上に意味を込めないようにとつとめていた時期があってね。最近、その考えに戻りつつあるんです。

──そう思うのはなぜですか?

山下 歳取ったから(笑)。というのは冗談で、元々言葉がメロディに勝っているのが好きじゃないんです。自分の作品だったら、最初期の「Windy Lady」のような、“君はWindy Lady~”みたいな感じが好きでね。抽象的な言葉が乗ると、音楽もそれにともなって、ある種のイリュージョンが起こる。そういう若い頃の思いにもう一度戻りたいなと、ここ1~2年ずっと考えていまして。

今回は非常に洋楽的なメロディなので、歌詞が具体的になるほど、どうしても違和感が出てしまう。好きな言葉の語感というのが昔からあって、いつもあまり変わらないんです。そこがちょっとでもズレるとすごく気持ちが悪い。なので、歌っていて気持ちのいい言葉を並べたいという。だから本当に抽象的で、何を歌っているというわけではない曲なんですよ。

■季節って、人生とリンクしている部分があるでしょ

──物語が特定されないからこそ、聴いた人それぞれが、自分が思い描いた世界をサウンドに馳せることができるという。

山下 久しぶりにリバーブが深いサウンドなので、その効果もあります。「CHEER UP! THE SUMMER」は完全に80年代のリバーブの感じです。昔はよく使っていたやり方なんですけど、2000年代に入ってから、技術的な問題でこういうエコー感がなかなか出せなかった。今は他でもこういうリバーブはなかなかないと思うんだけど、昔の感じを出せるノウハウがようやくついてきたのでね。このリバーブを入れることで、あの頃のサウンドに近付くんです。

それがどう受け止められるかはわからないけど、“山下達郎の夏が感じられる曲にしてほしい”というオーダーを受けて今の僕がやるとこういう感じになるっていう。さすがにもう、「RIDE ON TIME」を作った時の27歳ではないですから。27歳の時に作った夏の歌は今でも歌えるけど、同じものはもう作れない。となると、“60代の夏の歌って一体どういうものなんだろう”って思う。そう考えていくと、行き着くところは音のなかのイリュージョンなんですよ。

──達郎さんは常々、コンサートのお話をする時も、“音楽を聴くことで一種のイリュージョンを経験させる”ということをおっしゃいますよね。

山下 僕の音楽は、基本的なコンセプトがイリュージョンですから。実際の海って、そんなにきれいなわけじゃないでしょ。イメージのなかにある、静謐でキレイな海を体験したかったら、海外のプライベートビーチにでも行くしかない。でも、普通の人にはそんなところに行く余裕も時間もないですから。

そこに今も僕の初期衝動があるんです。四畳半でふたりで暮らしている歌を作りたいと思ったことはまったくなくて。夢・幻の歌、フィクションというより妄想ですね(笑)。そういう意味で、「CHEER UP! THE SUMMER」の場合も、“心のなかの夏”を表現している。季節って、人生とリンクしている部分があるでしょ。

僕の世代は、もう人生の夕方に近い。でも、まだまだ自分の人生にしがみつく想いもある。だからこそ、“僕らの夏は終わらない”。せめて歌の世界では、まだまだ輝かせておきたいなっていう考えです。

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【プロフィール】
ヤマシタタツロウ/1953年 2月4日生まれ。東京都豊島区池袋出身。1975年、シュガー・ベイブとしてシングル「DOWNTOWN」、アルバム『SONGS』でデビュー。1976年、アルバム『CIRCUS TOWN』でソロデビュー。

【リリース情報】
2016.09.14 ON SALE
SINGLE「CHEER UP! THE SUMMER」
WARNER MUSIC JAPAN

最終更新:9/14(水) 13:07

M-ON!Press(エムオンプレス)

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