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五輪に賞金を出すべきだ オリンピアンはもっと報われていい プロの仕事には対価を マイナー競技普及の一助にも

夕刊フジ 9月14日(水)16時56分配信

 【小林至教授のスポーツ経営学講義】リオデジャネイロ五輪期間中は、まぶたがむくみっぱなしという方も多かったのではないでしょうか。メダルラッシュで涙腺が緩み寝不足も重なり、私もその1人です。

 これだけの感動を与えてくれるオリンピアンはもっと報われていいと、大会の度に思います。具体的には五輪にも賞金を出すべきではないでしょうか。

 理由は2つあります。第一に、もはや五輪はアマチュアの祭典ではありません。五輪憲章からアマ規定が削除されたのは40年以上前の1974年。以降は世界最高峰の大会であらんとプロの参加を促進してきました。バスケットボール、サッカー、テニスなど出場選手のほとんどがプロで占められている競技もあります。そしてスポーツに限らず、プロにプロとしての仕事をしてもらうときには、対価を払うのが現代資本主義における最低限のエチケットです。

 116年ぶりに競技に復活したにも関わらず男子の世界トップ3が欠場を決めたゴルフは、商業目的の興行にプロをタダで使おうとする矛盾を露呈した象徴的な例です。

 プロゴルフの大会のほとんどは非営利団体が主催しています。当該団体はプロにふさわしい賞金を出すべくスポンサー集めに奔走するわけです。そして剰余金をそれぞれの理念のもと慈善事業に寄付する。こうした趣旨、使途が明瞭な環境で戦うプロが賞金も出ず、興行で生まれた利益の行方にも関与できない五輪に出る理由はないと考えたとしても、不自然なことではないでしょう。

 賞金を出すべき理由のもう1つはマイナー競技の普及です。マイナーでも種目になっている以上はオリンピック・ムーブメント(青少年の教育、平和の推進)の担い手であり、メダリストは英雄的な存在。その英雄が実は生活に汲々していることになれば、目標や模範としての説得力も弱まるじゃないですか。

 ノーベル賞でも賞金800万スウェーデン・クローナ(約1億円)が出るのです。五輪は28競技306種目ありますから、一挙にそこまではいかないにしても、たとえば金メダル2000万円、銀1000万円、銅500万円、入賞100万円とすれば予算は120億円ほど。TOP(オリンピックのスポンサープログラム)1社分で賄える金額です。様子をみながらタイミングを見計らい、大会会場やウエアのスポンサーシップを開放していけば、「金メダルで1億円」も可能になるでしょう。

 見せることで対価をもらえるようになったことで、スポーツは音楽や絵画などの芸術と同様、若者がその道を志す“文化”となりました。五輪には文化としてのスポーツを発展させてくれることを期待しています。

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 ■小林至(こばやし・いたる) 1968年1月30日生まれ。神奈川県立多摩高から東大へ進学し東京六大学野球で活躍。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となったが、1軍登板なく93年退団。翌年から2000年まで米国に住みコロンビア大で経営学修士号(MBA)取得。02年から江戸川大学助教授。05年からソフトバンク球団取締役を兼任し、10年からはフロント実務の責任者。14年限りで退団。現在、江戸川大学教授、専門はスポーツ経営学。

最終更新:9月14日(水)17時18分

夕刊フジ