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続・林信行の「iPhone 7」先行レビュー

ITmedia PC USER 9/14(水) 19:24配信

 先に掲載した「林信行の『iPhone 7』先行レビュー」に続き、本稿では大幅に進化したオーディオ関連や防水機能について見ていこう。

【「AirPods」のペアリングが楽すぎる】

 iPhone 7のオーディオでまず目を引くのは、内蔵スピーカーが“横持ちステレオ”になったことだろう。これまでのiPhoneの内蔵スピーカーは、撮影した動画の確認などには十分すぎるレベルのものであったが、ソファなどで寝転びながら動画を見ようとすると、音が片側だけのモノラル、しかも音量はそれほど大きくなかった(そうした事情からわざと手のひらで音を反射させて、聞こえやすくしていた人もいるかもしれない)。

 一方、iPhone 7シリーズのスピーカーは出力される音量が明らかに大きくなった上に、ステレオになっており、音楽や映画などのコンテンツも本体だけでかなり楽しめる。左右のセパレーションも結構はっきりしている。通話時の耳当て部と、従来通りの本体下側スピーカーという、向きも形状も違うスピーカーできちんとステレオになるのか不安だったが、実際に聞いてみると結構、普通のステレオスピーカーとして楽しめる。また、当然ながら本体の向きを反転させるとスピーカーの音の左右も自動的に反転して入れ替わる。

 ちなみにiPhoneをポートレートモード(縦長モード)で持った場合でも、一応、本体下側の2つのスピーカーがステレオ再生を行っているようだ。ただし、こちらに関してはそれほど左右のセパレーションはハッキリしない。

 ヘッドフォン回りの状況も大きく変わった。iPhone 7からヘッドフォン端子がなくなったというのは大きな話題になったので知っている人も多いだろう。発表会では「現在、iPhoneの内部は高密度化されておりバッテリーやその他の新機能が数mmのスペースを争っている」「現在のヘッドフォン用プラグは100年近く前の電話交換機のプラグに端を発している」として、新時代の端子へ移行する必要性をアピールした。

 別にiPhoneでヘッドフォンが使えなくなったわけではなく、きちんとiPhone本体にすぐに使えるヘッドフォン(Lightning端子接続)が付属しているし、これまでの愛用していた有線ヘッドフォンをつなぐためのLightning-ミニプラグアダプターも付属している。こうした変更による大きな音質の変化もない。ただ、有線接続では、これまでのようにiPhoneを充電しながら音楽を楽しむということはできなくなった。

●Bluetoothの未来を予見させる「AirPods」

 Appleは、ユーザーが最終的には、少し高価ではあるが、より快適なワイヤレスヘッドフォンに移行することを望んでいるようだ。今回、新たにAirPodsという独自のワイヤレスヘッドフォンを開発している(iPhone 7とは別売り。1万6800円で10月後半から販売開始)。

 AirPodの見た目は、iPhone付属のEarPodsヘッドフォンからケーブルだけ取り去ったような形だ。両耳に入れて音楽を楽しむこともできれば、片方だけ装着して通話用のBluetoothヘッドセットとして使うこともできる。

 耳に装着すると、それまでiPhoneのスピーカーから聞こえていた音楽の再生が自動的にAirPodsに切り替わる。耳からAirPodsを取り出すと自動的に音楽の再生が一時停止し、再び耳に入れると再生が再開する。また、一度の接続設定をしたことがないはずなのに、隣に置いたiPadで映画の再生を始めると、自動的に接続先がそちらに切り替わり映画の音が聞こえてくる。

 このように驚くほど直感的に利用ができるのがAirPodsの最大の魅力だ。開発に当たってApple社内で、ぼう大な検証や試行錯誤、どう動作するべきかの議論が重ねられたことを感じさせる。

 AirPodsで前代未聞なほど画期的なのが、初期設定の方法だ。通常、Bluetoothヘッドセットを使おうとすると、まずペアリングという操作をしなければならず骨が折れる。通常はヘッドフォンのボタンを長押ししてから、iPhone側の設定パネルを開いてBluetoothを選択し……と慣れれば大したことはないのだが、それでも面倒なことにはかわりない。

 AirPodは「本当にこれでいいの?」と首をかしげるほど簡単にこの設定が完了する。製品パッケージからAirPodsが入った携帯用プラスチックケースを取り出して、ペアリングしたいiPhoneに近づけて、ふたを開ける。

 たった、これだけの動作で、すぐにiPhnoeの画面にペアリング可能な「AirPods」が近くにあることを知らせる画面が表示される。ここで「接続する」というボタンを押せば接続完了だ(iPhone側のWi-FiとBluetoothがオンになっている必要がある)。

 しかも、一度、ここで接続設定をすれば、その設定がiCloudを通して、自分が使っている他の機器、例えばiPadやMacとも共有され、それらの機器では設定なしで利用できるようになる。

 ここまで簡単なBluetooth機器のペアリング方法はこれまでになかったはずだ。Appleは、これを実現するために今回、新たにW1というワイヤレス接続専用のチップを独自開発。一説によれば、同社は現在、マイクロプロセッサを自前開発するためにカリフォルニアの本社よりも巨大な設備をテキサス州に所有していると言われており、こうした高度なインテリジェント機能を開発する度に、莫大な資金力を生かして専用チップを開発し、製品作りにいかしているようだ。

 開発されたW1チップは、Appleの子会社であるBeatsが発表した新型ヘッドフォンにも内蔵されており、それらのヘッドフォンでも同様の手軽さで設定が可能だ。W1チップにはジャイロセンサーなども内蔵されているようで、本体を指で軽くチョンチョンと叩くとiPhoneでSiriが起動し、音声操作が可能になる。

 iPhone側で常にバッテリー残量を確認でき、残りが足りなくなってきたら、付属のケースに収納するとケース自体が充電式バッテリーになっており、コンセントに繋がなくてもある程度は充電できる。AirPodsは音質の面でも同じ価格帯の他のBluetoothヘッドセットと比べて遜色がない。

 AirPodsはAppleの最新テクノロジーをいち早く試したい人には、間違いなくオススメの製品だ。ただ、わりと音漏れしやすい機構になっているので、電車通勤での利用時は音量に注意が必要だろう。

 また、耳の形状によっては装着時の見た目が、ちょっと風変わりに見えてしまうことがある。装着したときに、マイクがやや斜め前に突き出るような耳の形をしている人はそれほど違和感はないが、マイク部が真下に落ちるような形で固定される耳を持つ人も多いようで、こうなるとやや民族系アクセサリーのような独特な雰囲気になってしまう。顔立ちによって、それが似合うこともあれば、少し変に見えることもある。日常使いを考えている人は、一度、店頭で装着テストをしたほうがいいかもしれない。

●生まれ変わったホームボタンの不思議

 サイズ感だけ踏襲しながらも全く新しく生まれ変わっているiPhone 7では、目に入るものすべてが新しくなっている。iPhoneのかなめである美しいRetina HDディスプレイも、これまでより25%明るく、より広い色域を扱えるようになった。

 だが、実際に製品を使い始めて最初に感じる変化は、ホームボタンかもしれない。

 本体正面、液晶画面の下に鎮座するホームボタンは、9年前の初代iPhone登場以来、同製品シリーズの大きな特徴だった。操作を誤っても、このボタンを押せばホーム画面に戻れる安心感が「初心者に優しいiPhone」のイメージを確固なものにし、その後、アプリの切り替えやSiriの呼び出し、TouchIDと呼ばれる指紋認証といった機能も加えられていった。その一方で、これまでずっと変わらなかった部分もある。それはこのボタンが、押せば下に沈むボタンだったということだ。

 一部の機種では使い込むうちにボタンが沈みにくくなるなどの問題もあったが、これからはその心配がなくなる。iPhone 7のホームボタンは、正確にはボタンではなく本体正面に刻まれたただの凹みとなったのだ。ただし、この部分には押した強さを検知するタッチセンサーが内蔵されており、指紋認証のTouchIDの技術も内蔵されているので、これまでのホームボタンと同様の操作ができる。それどころか内蔵されたTAPTIC Engine(触覚エンジン)のおかげで押したことが分かるフィードバックが生み出される。

 少し違うのは押したときの感触だ。

 iPhone本体を4本の指で持ち、親指で押し込むと4本の指のほうに強い振動が伝わる。これはAppleが狙ったものなのか分からないが、iPhone本体がたわんでペコっと潰れたような錯覚を覚える。

 ここで一つ面白い発見があった。iPhoneを卓上において、5本の指それぞれでホームボタンを押し比べてみると、親指で押したときと人差し指で押したときで全く感触が異なり、人差し指で押すと、きちんとボタンが沈んでいるように感じるのだ。

 実はこちらの触覚こそAppleが狙っていたものではないかと筆者は思っている。女性ユーザーなどは大きなiPhone 7 Plusを卓上において人差し指で操作している人も多い。そういった操作をしている人なら、しばらくホームボタンがただの凹みに切り替わったことには気がつかないかもしれない。

 ちなみにホームボタンを押したときの触覚の強さは、「設定」パネルの「ホームボタン」設定で3段階に切り替えることができる。ホームボタンの仕様変更に合わせて、iPhoneのちょっとした操作方法にも変化が起きている。

 例えばこれまでのiPhoneのロック画面はホームボタンに指を置くだけでロック解除をすることができたが、iPhone 7からは指紋認証後、ボタンを強く押し込まないとロック解除ができないようになっている。

 こうした小さな変化は、慣れるまで意外と時間がかかる側面もあるが、おそらく数カ月のうちにはみんな慣れてしまうことだろう。

●電子決済と耐水性能でようやく従来型携帯超え

 10世代目となるiPhoneだが、日本でその前に普及していた従来型携帯電話(通称、ガラケー)にかなわない部分もあった。それは日本の先進的な電子決済の技術が使えなかったことと、国産の多くの従来型携帯電話が対応していた耐水性を備えていなかったことだ。

 もっとも、従来型携帯電話の耐水性は、端子などを覆うゴムパッキンなどを完璧にはめた状態の時だけ有効なものであり、少しでもふたが緩んでいると、むしろ水に弱い“有名無実な耐水性”の製品も少なくなかった。

 iPhone 7もSIMカードスロットの内部などに水の侵入を防ぐゴムパッキンがついてはいるものの、通常使いの状態、特別なふたをせずに普段使いの状態での水濡れ対策、防じん対策ができている。

 耐水性能はIP67というレベルで、積極的に水に濡らすことを推しているわけではないが、例えば台所などの水周りや夏場のプール際でも、これまでのiPhoneと違って安心して使でるのはうれしい。なお、もし水に濡れた場合は充電端子が乾くまで充電を避けたほうがいい。

●iOS 10で巻く開ける10年目のiPhoneの進化

 ここまで前/後編に分けてiPhone 7の魅力を伝えてきた。これ以外にもA10 FusionというCPU(スマホの頭脳)を搭載したことで、これまで以上に高い性能を発揮しつつ、低負荷時の消費電力を抑えることで、iPhone史上最も長いバッテリー動作時間を実現するなど、まだまだ語りつくせない魅力は多い。

 最後にiPhone 7以後のiPhoneで、我々の暮らしがどう変わるのかという部分にも触れておきたい。その中心になるのが10世代目のiOS、iOS 10だ。もちろん、この最新iOSはこれまでのiPhoneでも利用できるが、iPhone 7はこのiOSの魅力を最大限に発揮するようにデザインされている。

 そんなiOS 10の新機能として、表現力が豊かになったメッセージング機能や、よりインテリジェントになったSiriが注目を集めているが、筆者が最も期待を寄せているものの一つがHomeKitと呼ばれるスマート家電を集中管理するための機能だ。

 これまでにも多くの会社がスマートフォンから操作ができる電子ロックや電球などを販売していた。しかし、それらは製品ごとに別々のアプリを利用せねばならず、他社製アプリから操作ができないものが多かった。そんな中、HomeKitは同じ電球、空調あるいは電子ロックであれば、メーカーの違いを超えホーム画面に追加される「ホーム」というアプリを使って(あるいはSiriへの命令で)操作できるようになる。

 実際、筆者は自宅で、リビング、仕事部屋、寝室、廊下、バスルームなど合計5つほどの部屋に、PhillipsのHueというHomeKit対応電球を20個設置している。Siriに命令するだけで仕事部屋の電球を点灯したり、「おやすみ」というだけで本来は3個セットでオン/オフしなければならない廊下の電球を1個だけ半分の明るさにし、それ以外の電球をすべてオフにするというホームオートメーションへの第一歩を踏み出し始めており、もはやこの快適さから後戻りできなくなってしまった。今後、iOS 10の普及とともにHomeKit対応のスマート家電は少しずつ広がりを見せていくことになるだろう。そして、これは2020年にかけて、我々の暮らしを大きく変えていくはずだ。

 登場したてのiPhoneはインターネットの便利さをポケットに入れて持ち運べるようにしたデバイスだった。その後、アプリ革命が始まり、インストールしたアプリ次第でさまざまな用途に使えるiPhoneの千変万化ぶりを楽しむ時代がやってきて、その中でもiPhoneを通して世界の仲間と常につながっているソーシャルメディア全盛の時代になった。次にやってくるのはいよいよiPhoneを使って住まいなどの環境に関わっていく時代だろう。

 10世代目のiPhone、iPhone 7はまさにそんな時代の幕開けを感じさせるiPhoneであり、10年目以降のiPhnoeの新しい進化を予見させる素晴らしいメジャーアップデートに仕上がったと思う。これまでずっとiPhoneを使い続けてきた人には、すぐにでも体験してほしい待望のアップグレードだ。

(モデル:市川渚 /撮影:井上直哉)

最終更新:9/14(水) 19:24

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