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アングル:中国「未完の橋」が示す北朝鮮との関係後退

ロイター 9月14日(水)11時56分配信

[丹東(中国) 11日 ロイター] - 濁水の上にそびえ立つ新鴨緑江大橋は、本来、中国と北朝鮮が共同運営する画期的な自由貿易区への投資を促し、両国の関係の新たな時代を象徴するはずだった。

中央分離帯のある道路が通る同橋は昨年、22億人民元(約335億円)をかけて一部完成したが、現在は放置されたままだ。中国側の国境検問所も見捨てられ、施錠されており、誰一人いない。

未完成の橋は、北朝鮮側で突然行き止まりになっており、インフラ工事が行われている兆候はない。

中国の国境都市・丹東に近い自由貿易区計画は2012年、北京の五つ星ホテルで鳴り物入りで発表された。かつての同盟国、北朝鮮をうまく説得して、武力による威嚇や核実験ではなく、慎重な輸出主導の経済改革を実施させようとする中国の努力の一環だった。

北朝鮮が先週、通算5回目で過去最大となる核実験を実施したことに対する中国の怒りは、この橋が近く開通する見込みがないことを意味する。北朝鮮がすでに、中国がその継続を支持した国連による広範囲な制裁下にあるだけになおさらだ。

丹東新地区の人気のない道路は、北朝鮮への関与策が失敗したことの証左となる。「シンガポールシティー」といった、しゃれた名前を持つ共同住宅は、むき出しだったり、未完成のままだったりする。ショッピングモールも閑散、もしくは空きが目立っていた。

モールにある照明ショップで店番をしていたSun Lixiaさんは、「橋の北朝鮮側が開通していない。私たちには、どうすることもできない。それは、この地元経済に悪影響を与えている。北朝鮮がいつ開通するか誰も分からない」と語る。

「住宅はなかなか売れず、多くの人々がここに引っ越ししたがらない」とSunさんは言う。「ここにはきちんとした病院さえない。半分完成しただけだ」

これは2012年、丹東のある地元当局者が国営メディアに語った内容と大きく異なっている。それは、この開発は香港最大の商業地区である銅鑼湾(コーズウェイベイ)に似て、1日当たり5万人と車両2万台が橋を経由して北朝鮮に向かうとの内容だった。

<豊富な資源>

中朝境界地域の「黄金坪・威化島経済地帯」は、北朝鮮北東端の国境都市・羅先とともに、当局の手厚い支援を受けてきた。同国の故金正日総書記は2010年の中国訪問時に、こうした中朝国境地帯の経済開発の協定を結んでいる。

中国が建設した道路が市街地に通じ、国境を結ぶ新たな橋も建築中の羅先地区は開発がさらに進んでおり、より成功を収めている。

一方、若き指導者の金正恩氏は、いまだ中国訪問を果たしていない。核とミサイル実験計画を加速し、他国が危機感を募らせるなか、正恩氏が近く中国に招待される公算は低いだろう。

2012年に作成された豪華な宣伝パンフレットには、黄金坪に輝く高層ビルと広い並木道を芸術家が描いた完成予想図を掲載していた。

「北朝鮮は、豊富で質の高い人的資源だけでなく、豊かな資本と広大な開発用地を有している」。英語と中国語で書かれたパンフレットにはそう記され、投資家に対する法的保護や減税を約束していた。

ロイターが今週訪れた現地には、農地と有刺鉄線の張ったフェンスが中国側から見えるだけだった。

「政府は、中朝間の貿易によって、この地区の経済成長を図ろうとしていたが、それは実現しなかった」。Liuと名乗る警備員は「商業通り」と楽観的に名付けられた通り沿いのオフィスビル前でそう語る。「正直なところ、新地区が発展していない主な理由は、橋が開通していないからだ」

<戦争の絆>

新たな橋には、丹東にある「中朝友誼橋」を補完する目的があった。この古い橋には単線の鉄道線路と平行して、車両と人の双方が通行する一車線が走っているだけだ。

二か国間貿易の約4分の3が丹東を経由しており、それは今も限定的だ。今年1月から7月における、中国の対北朝鮮貿易は、わずか177億元にとどまり、対韓国貿易の9080億元を大きく下回っている。

中朝が米国率いる国連軍と戦った1950─53年の朝鮮戦争において、丹東は中国人民義勇軍の兵站前線となったため、丹東と北朝鮮のあいだには感情的な絆が根付いている。

朝鮮人参や、蛇や薬草で満ちた蒸留酒など、しばしば質の悪そうな北朝鮮の製品で店先は一杯になっている。北朝鮮政府が経営するレストランでは、同国のウエートレスが好奇心旺盛な旅行客に向けて愛国的な歌を歌っている。

こうした両国関係は、北朝鮮による核やミサイルの実験に加え、北朝鮮の住民や治安部隊に責任があるとされる断続的な銃撃や殺人によって、非常に緊迫化している。

「北朝鮮が嫌いだ。あちらの警察は、冬にイモやトウモロコシなどを売りに出掛けた農家を銃撃したりした」と丹東で農業を営む70歳のZhao Guangfuさんは語る。

中国の延辺大学朝鮮韓国研究センターでディレクターを務める金強一氏は、中国は、北朝鮮に対して自身が「悩ましい」立場にあることを自覚していると指摘する。

「われわれは、彼らに対し改革や開放を迫り、変革を求めるかどうか選択することができる」と金氏は語る。「もちろん政治的・軍事的制裁は強化される必要がある。しかし、民間レベルの開放や交流もまた強化されなければならない」

門戸を閉じては、うまくいかないと同氏は言う。「それで本当に変えることができるのか」

(Sue-Lin Wong記者 翻訳:高橋浩祐 編集:下郡美紀)

最終更新:9月16日(金)8時45分

ロイター

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。