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2016米大統領選 主要メディア、トランプ氏集中砲火

産経新聞 9月14日(水)7時55分配信

 ■客観報道 あり方論争も

 【ニューヨーク=上塚真由】米大統領選の共和党候補、ドナルド・トランプ氏(70)と米主要メディアの対立が激化している。リベラル系だけでなく、共和党寄りとされる保守系メディアもトランプ氏を批判的に報じ、主要メディアが一丸となって一人の候補を非難。異例の事態に客観報道のあり方を問う声が上がる一方、過激で派手な演出で衆目を集めてきた同氏のメディア戦略に陰りが見え始めたとの指摘もある。

 トランプ氏は最近のメディアの“偏向報道”ががまんならないようだ。9日には「CNN(テレビ)の私のドキュメンタリー番組は見る価値もない。私について語った人のほとんどを私は知らない。ジョークだ!」とツイッターでばっさり。同氏は「私の敵はクリントン氏ではない。メディアだ」と公言しており、敵意をむき出しにする。

 メディア側の報道がエスカレートしているのは確かなようで、8月末にはオバマ米大統領の元選挙参謀、デビッド・プラフ氏がNBCテレビのインタビューで、トランプ氏を「サイコパス(反社会性人格障害)の候補者だ」と指摘し、大きな波紋を呼んだ。

 民主党候補のヒラリー・クリントン氏(68)を支持するリベラル系の代表格、ニューヨーク・タイムズ紙は、連日のようにトランプ氏の批判記事を掲載。保守系のウォールストリート・ジャーナル紙でさえ、社説で「大統領候補らしく振る舞うことができないならば、副大統領候補のマイク・ペンス氏に指名を譲るべきだ」とくぎを刺した。

 米国では1987年に放送における「公平の原則」が撤廃され、世論の二極化が進んだ。政策をめぐる議論が活発になる一方、保守派のラジオ番組司会者の過激な発言を問題視し、民主党の中には“復活”を求める動きもあった。

 今回の大統領選で、改めて中立性の是非や、客観報道のあり方が問われている。

 昨年8月にトランプ氏と口論となり記者会見場から追い出されたスペイン語放送局「ユニビジョン」のホルヘ・ラモス氏は、タイム誌(電子版)に「候補が人種差別や性差別の発言をした場合、われわれは中立の原則に身を潜めてはならない。それは誤った平等だ」と寄稿し、トランプ氏への批判は今後も強めるべきだと主張した。

 これに対し、作家のジャスティン・レイモンド氏はロサンゼルス・タイムズ紙への寄稿で、トランプ氏の冗談めいた発言までメディアが攻撃しているとし、「ジャーナリストが論理的に評価する力を失っている」と疑問を投げかけた。

 トランプ氏は80年代から不動産王として派手な生活ぶりをメディアを通じて披露してきた。

 米コロンビア大ジャーナリズム大学院のトッド・ギトリン教授は、「予備選では、トランプ氏の登場前から集会会場の様子がテレビ中継され、会場に到着するだけで『速報』が流れるなど、良い意味で特別扱いをされてきた」とし、「トランプ氏こそメディアの恩恵を多大に受けてきた」と指摘する。

 長年にわたりメディアと“共存”してきたトランプ氏に対し、ギトリン氏は「今は『剣で生きる者は剣に滅ぶ』ということを学んでいるだろう」と聖書の一部を引用して指摘した。

最終更新:9月14日(水)7時55分

産経新聞