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豪産リンゴ「ピンクレディ」が再上陸

ニュースソクラ 9/14(水) 14:00配信

国産の味落ちる夏狙う  TPPも背景に

 1910年7月13日付のニュージーランド「ドミニオン」紙が、オーストラリア・タスマニア島のリンゴ産業について記事を掲載している。「渓谷に張り付くような零細農地で栽培され大半が手作業で行われている」と書いている。しかし、110年以上が経過し、今ではタスマニアはオーストラリアの8割以上を担うリンゴ大産地になった。

 タスマニア産リンゴが8月28日に日本市場に再上陸した。2010年以来6年ぶり。以前は日本人になじみのある「ふじ」を出していたが、コストが合わず撤退。今回は21トンの「ピンクレディー」で、日本の大手量販店関係の業者が輸入した。今回は「来年以降も拡大する」とリンゴを輸出したハンセン果樹園社の鼻息は荒い。

 楽観視する最大の理由は、日本市場でのニュージーランド産リンゴの絶好調な売れ行きだ。財務省の統計によると今年1~6月のリンゴ輸入量は1089トン。昨年を7割上回り、金額は1億4000万円で、同9割上回った。全量がニュージーランド産で、品種は日本ではお目に掛からない「ジャズ」「エンビー」。いずれも小玉でやや酸味があるものの、適度な甘みとしゃきっとした食感が人気を集めている。

 日本国内のリンゴ生産量80万トンに比べればきわめて小さなシェアだが、国内主力の「ふじ」が夏場に味が低下する隙間を狙って市場を獲得した。秋に収穫する国産「ふじ」は、低温庫で夏場まで保管される。出荷末期になると、どうしても歯ごたえが減って「ぼけた味」になることも多い。

 また、日本ではリンゴと言えば「ふじ」に代表されるような大玉リンゴが好まれてきた。食卓を囲みながら皮をむいて切り分け、家族で食べるのが主流だ。しかし、ライフスタイルの変化で、小玉リンゴを皮をむかずにかぶりつく欧米型の消費も定着しつつある。

 そうした変化を背景に、南半球のニュージーランド産が、旬のリンゴを武器にして日本の夏場に攻勢を仕掛けてきた。国産早生リンゴが出回る8月末までが勝負だ。

 大手はもちろん、中小スーパーも6月から8月半ばに掛け、1個当たり100円ほどで同国産を店頭に並べるようになった。「ジャズ」「エンビー」とも近年開発された人気の品種。国内のスーパー関係者からの評価も高い。伸び悩む果実消費の中では数少ない成長品目と位置づけている。

 今回のオーストラリア・タスマニア産は、ニュージーランドの躍進をみて追いかけてきたものだ。品種「クリプスピンク」の中で高品質なものだけを詰め合わせた「ピンクレディー」ブランドの商品。ハンセン果樹園社は、輸出の条件となるくん蒸処理施設を日本の農水省係官にチェックさせ、ゴーサインをもらって出した。手続きに手間取って出荷が遅れ、完全な赤字出荷となるが、来年以降に期待を掛ける試験輸出の位置づけだ。

 同社は政治的な追い風も意識している。「環太平洋連携協定(TPP)で日本の関税が撤廃される見込み。関税が下がれば輸出が増えるのはサクランボでも経験済み。日本のリンゴ市場も長期的に成長が期待できる」と話している。

山田 優 (農業ジャーナリスト)

最終更新:9/14(水) 14:00

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