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マシン開発は目に見えない「空気」への挑戦!プリウスの燃費も、F1の速さも「空力」がキモ!

オートックワン 9/14(水) 13:58配信

F1ベルギーGPが行なわれるスパ-フランコルシャン。難攻不落と言われるコースは、ドライバーの腕が試されるが、もちろん、安定したマシンでなければ闘えない。特に最近のマシンは、空気の流れをいかにうまく利用した“優れた空力”が重要だ。

マシンやクルマ開発に重要な要素の空力実験

蛇足ながら私は、大学の卒論が『レーシングカーのボディ形状にみる空気力学的考察』。レース専門誌の写真をコピーして綴じただけ(でもないが)だったが、まぁ、近所の公園にいる猫よりは空力に詳しいつもりだ。

最低限のことを知っておくと、今後、クルマ、中でもレーシングカーの形を興味を持って観られるようになるだろう。

空気抵抗は言葉の通り、空気の抵抗。空気は、ああ見えても(見えないが)粘りがある。高速になるとその粘りが進もうとする自動車の前に立ちはだかる。プリウスの様な優れた低燃費クルマもできる限り空気抵抗が少ない形になっている。

単純に言うと、空気抵抗を減らしたければ、水滴型がオススメだ。板状の物体が空気抵抗になるが、水滴型で囲ってやるだけで抵抗は一気に1/20に減る。クルマの窓から手を出すと体感できる空気の“抵抗”が、時速300km/hでどうなるか想像して、それが1/20になることを考えれば、水滴型がいかにスゴイかわかるだろう。

飛行機の機体が細長いのは、最も抵抗の少ない水滴型に近づけようしているためだ。しかし、クルマは飛行機のようにボディを長くするわけにはいかず、そもそも地面を走っているからいろいろと制約がある。

地面を走るということは、タイヤが地面をきちんと捕まえていなければならない。クルマは必要条件を備えた上でなるべく小さくしたいということで、たいていの自動車は、前後方向の真ん中が出っ張った「凸」の形になる。ここが空力にとって最大の問題だ。この形の中で空気抵抗を減らそうとすると、困ったことが起きる。

クルマに必要な新たな方向性がダウンフォース

ここで、飛行機がなぜ飛ぶかを確認しておこう。翼の断面をみると、上面が下面より長い。前から来た空気が翼に当たると、空気は上下に分かれて翼後端で再び一緒になる。結果として弦線が長い上面を流れる空気のスピードが高くなる。スピードが高くなると気圧が下がるというベルヌーイの定理という決まりごとで翼上面の気圧が下がると、大気圧によって翼が押し上げられ、だから飛行機は浮力をもらって飛ぶのだ。

つまり、飛行機の翼と同じ理屈で、凸の形をしているクルマは、そもそも揚力が生まれてしまう形をしているわけだ。タイヤのグリップを上げるために、揚力は敵。これをなんとかしようと考え始めたのが1960年代中頃だった。ひたすら空気抵抗を少なくすることから、新たな方向が見えた。それがダウンフォースだ。

カナダとアメリカを舞台に行なわれていたCAN-AMシリーズに参戦していた『シャパラル』のジム・ホール代表が、リアに大きなウィングを着けて登場、格好からしてインパクト溢れるその『ウィング』はアッと言う間に世界的に広まった。

揚力を打ち消し、タイヤをしっかりと路面に押しつけるために“ダウンフォース”が必要ということに気付いたのが1960年代中盤のちょうど50年前。レーシングカーのダウンフォースは1トンを軽く越える巨大な力となり、レーシングカーのスピードを一気に高めることになる。

その流れの中で、F1に参加していたホンダも第7戦イギリスGPからウィングを高々とそびえ立てて登場した。当時のホンダF1チームの中村良夫監督がウィング装着に踏み切らせたのは、「かっこよくてチームの士気向上を狙えたから」と、実に牧歌的で素敵な理由だった。

さて、スピードが高くなると、ダウンフォース獲得のシステムに不具合が起きたときのリスクも比例して増大した。実際にダウンフォースを発生させるメカニズムのトラブルで、何人ものF1ドライバーが命を落し、空力の規則はどんどん厳しくなって現在にいたっている。

しかし、厳しくなっても規則の網をくぐり抜け、もっと速くしたいと考えるのがレーシングカーデザイナーの性。ダウンフォースと規則のせめぎ合いは今でも続き、ダウンフォースがレーシングカーのスピードを決める大きな鍵になっている。

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最終更新:9/14(水) 13:58

オートックワン