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睡眠不足が人間関係を壊しかねない理由

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月14日(水)12時2分配信

 睡眠不足がいかに心の平穏を乱すかについて、科学者らは新たな洞察を得ている。

 寝不足であれば他人の表情、特にその微妙な動きを読み取りにくくなることが分かってきた。寝不足の人は例えば、配偶者がイライラしているのか落ち着いているのかを区別しにくいという。

 また、睡眠を十分に取らなければ感情表現が貧弱になり、例えば何かが面白いと感じても笑顔が少なくなる。科学者らは神経画像から、睡眠不足が引き起こすだろう感情の起伏に関連すると見られる脳の活動パターンを発見した。

 「十分な睡眠を取っていない場合、情緒の安定性ほど早く深く乱されるものはあまりない」と、カリフォルニア大学バークレー校のマシュー・ウォーカー教授(神経学・心理学)は指摘する。疲労による誤認や間違いが人間関係を台無しにすることさえあるのだ。

 一般的に、専門家らは健康な成人で1日に7時間から9時間の睡眠を取るよう勧めている。だが米疾病予防管理センター(CDC)が2014年に44万4000人以上を対象に実施した調査結果によると、米国では成人の3分の1以上が平均で7時間未満の睡眠しか取っていない。5時間以下しか寝ていないと答えたのは、全体の12%近くに上った。

 ドイツの脳科学誌「エクスペリメンタル・ブレイン・リサーチ」に掲載された2014年の研究では、健康な49人のヤングアダルトが2つのグループに分けられた。一方のグループは寝ずに夜を明かし、もう一方は通常の睡眠を取ってもらった。

 その翌日、被験者には感情表現の度合いが異なるさまざまな顔写真が提示された。寝不足のグループに属する人々は全ての顔写真で感情を読み取るのが格段に遅く、悲しい顔を正確に読み取ることがあまりできなかった。

 別の研究によると、特に微妙な表情の場合、寝不足の人は怒った顔と幸せな顔を区別するのが困難になる。睡眠不足に関する研究の多くでは、被験者が眠れないのは一晩だけだ。ただ、慢性的に睡眠が足りていない現実世界での経験にもこの結果が当てはまるだろうと科学者らは述べている。

 ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院で睡眠について研究しているナムニ・ゴエル氏は、睡眠不足が公共の安全に影響を及ぼす可能性があると話す。軍人や警察官には、正確に他人の顔の動き(そして動機)を読み取らねばならない場面が多いと同氏は指摘する。

 同大学院精神医学部のデビッド・F・ディンジス教授は、寝不足の人がささいなことに過剰反応しやすくなる科学的な証拠をつかんでいる。

 ディンジス氏は2012年に同僚たちと行った実験で、片方のグループには眠らずに夜を明かしてもらい、もう一方には普段通り睡眠を取ってもらった。翌日、被験者は数学問題など一連のタスクをこなした。問題には簡単なものも難解なものもあった。ディンジス氏らは被験者からタスクの成果についてフィードバックを受けた。それにはポジティブなものもネガティブなものも含まれていた。

 難解な問題を終了した後、両方のグループからストレスがたまるとか、イライラするとか、不安になるとか、気が重くなるといったネガティブな意見が返された。一方で簡単な問題を終了した後は、寝ていない被験者は睡眠を取った人よりも高いストレスや怒り、不安にさらされていたことが分かった。

 ディンジス氏は「寝不足はストレスを感じる敷居を低くする。感情面でストレスに対処しにくくなる。ささいなことに怒るのはそのためだろう」と述べた。

By ANDREA PETERSEN

最終更新:9月14日(水)12時2分

ウォール・ストリート・ジャーナル