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広島カープ独走Vの裏で、四面楚歌になりつつある阪神・金本監督の苦悩

ITmedia ビジネスオンライン 9/15(木) 6:25配信

 プロ野球のセ・リーグ優勝は広島東洋カープが圧倒的な強さを見せながら25年ぶりに成し遂げた。9月10日、敵地・東京ドームで巨人に勝ち、緒方孝市監督が7度宙を舞い、感涙にむせぶ黒田博樹投手と新井貴浩内野手の両ベテランも胴上げされたシーンは大きな感動を呼んだ。世の鯉党たちは球団応援歌にならって、さぞや酒をくみかわしたに違いない。

【カープファンがイライラ!?】

 さてその一方で、この2日前にカープファンから一斉にブーイングを浴びせられた球団がある。阪神タイガースだ。Vを決めた2日前、8日の広島は本拠地・マツダスタジアムで中日が相手。この試合で広島が勝ち、同日に甲子園で行われた巨人戦で阪神が勝てばカープの地元Vが決定するはずだった。

 ところが、その夢はもくずと消え去ってしまうことになる。8日の巨人戦で阪神が1点リードで迎えた7回二死一、二塁。6回まで好投しながら、このイニングでいきなり2者連続死球を与えた先発の青柳晃洋投手をベンチは諦め、2番手としてベテランの藤川球児投手にスイッチした。ところが、その代わり端に代打として打席に立った坂本勇人内野手に藤川は左翼席へ痛恨の3ランを食らってしまい、まさかの逆転――。結局このまま阪神打線は追いつくことができず、あっさりと負けてしまった。

 そして広島は中日に勝利しながらも結局、阪神が巨人に敗れてしまったことで“地元胴上げ”がなくなってしまったのである。

 この日、地元で歴史的瞬間を見届けようとマツダスタジアムに来場していた鯉党はさすがに意気消沈。期待だけさせておきながら終盤の7回にゲームを一気に引っくり返されてしまったのだから、それも無理はない。

●広島ファンがイライラ

 今季における阪神の詰めの甘さと弱さを大きく象徴するようなゲーム展開によって結果的に地元Vの夢を絶たれたカープファンとしては、相当なイライラが募ったようだ。

 「なぜ、あの大事な場面で防御率も4点台と明らかに力の衰えが顕著になっていた藤川を投げさせたのか」「あの場面においては若手右腕の松田遼馬(防御率0点台)や同じく助っ人右腕の(コーディ・)サターホワイト(防御率1点台)を起用したほうが、よほどいい仕事をしたはずだ」

 このようにネット上では打たれた藤川だけでなく、かつての虎守護神を緊迫した場面でマウンドへ送り出した一塁側ベンチの采配にも数多く疑問の声が向けられていた。いや、これはカープファンだけでなくタイガースファンの悲痛の叫びでもあったと言えるのかもしれない。

 それが証拠に阪神タイガース寄りのスポーツ新聞として有名なデイリースポーツ紙までもがネット上で「阪神ファンが全面謝罪、広島ファンに『ごめんね』『阪神弱すぎて』…本拠地優勝消す」と題し、本拠地・広島での優勝を潰したことで阪神ファンがTwitter上で広島ファンに謝罪する投稿であふれかえった様子を同日のWeb版に掲載し、大きな反響を呼んでいた。多くの虎党も巨人に“KY負け”してしまうほどに弱い阪神に落胆し切っているのが、現状なのだ。

 何せ、この8日に広島の地元優勝を消し去った巨人戦黒星によって阪神は甲子園で対G9連敗。本拠地で宿敵・巨人になんと今年1つも勝てていないという不名誉な記録を作っているとあれば、血気盛んなタイガースファンがダンマリを決め込んでいられるとは確かに思えない。

●虎党は大歓迎だったのに

 金本知憲監督が今季から阪神ベンチで指揮を執っているのは言わずもがなだ。絶対の期待と信頼を背負い、2005年以来10シーズンも優勝から遠ざかっているチームの再建を託されたのが昨オフ。阪神球団から監督就任要請を受けても一度は固辞したものの再三に渡るラブコールを送られた末に、ようやく受諾した。

 このころの金本監督に対してはネット上の虎党も「今季は優勝できなくても我慢するから、若手をキッチリ育成してくれ」とか「たとえ最下位に沈んだとしても四の五の言うことはない。チームに“金本イズム”を叩き込んでくれ」「阪神の黄金時代を作り上げられるのはアニキ(金本監督の愛称)しかいない」などと、その大半が大歓迎ムードだった。

 ところがシーズンで試合を重ねるごとに順位はどんどん下がり、現在のBクラスが定位置になってくると風向きは明らかに一変。「甲子園対G全敗」という屈辱も加わり、手のひら返しで金本バッシングが日常的に散見されるようになってきたのである。

 阪神タイガースという球団は12球団の中でも非常に特殊だ。何せファンの目が厳しい。虎党の方々の大半は今季の若手育成を厳命されている新人監督に「負けてもいい」「最下位だって大丈夫」と口では言っていても、本心ではそう思ってはいない人が少なくない。

 取材を通じてもこうした声がよく聞かれるようになった。「借金でもせめてギリギリで3位くらいは」「いやBクラスで終わっても、甲子園だけはたくさん勝って欲しい」「とんでもない、若手を育てながら優勝しなきゃだめ」だと。これが虎党の本音のはずだ。たとえ指揮官が若手育成を厳命されていようがいまいがファンの多くは「ボロ負けなどもってのほかで、基本は勝たなきゃアウト」なのである。

 こうした世論の声に対し、阪神タイガースのフロントが右往左往してブレまくっているのが現状のようだ。

●「超変革」をモットーに戦ってきたのに

 それを象徴しているのが、13日の一部スポーツ紙に掲載された記事。阪神フロントがチーム低迷に歯止めをかける意味で今オフ、大型補強に打って出るという内容のものだ。その記事によれば、オリックスの糸井嘉男外野手や日本ハムの陽岱鋼(よう・だいかん)外野手、中日の平田良介外野手、大島洋平外野手といった国内FA権を取得した大物たちをフロントが調査し、今オフの獲得に向けて水面下で動き出しているという。

 眉唾ではなく、この記事はおそらくほぼ事実であろう。なぜならば、阪神OB曰く「阪神というフロントは在阪の各スポーツ紙に情報を小出しにして恩を売り、後々バッシングを書かれないようにする傾向が昔からある」からである。そして同OBは、こうも続けて嘆いた。

 「ただ、この記事に書かれているように今オフに球団が大型補強を行えば今年1年、金本監督がファンからバッシングを受けることを覚悟の上で『超変革』をモットーに若手の積極起用でチーム編成を進めてきたことが水泡に帰す可能性が高くなる。もちろん今季起用されていた若手たちも大物が入ってくれば、出場チャンスを失うわけだから当然腐る。チームのムードは悪くなってしまい、来年は戦力アップどころかさらに空中分解に追いやられてしまうかもしれない。

 今のフロントは目先のことばかり考えてビジョンがないんだ。結果が出なければタイガースファンがワーワー騒ぎ出すのは、ある意味で想定内だったはずで、それでもブレずにデンと構えていればいいはずなのだが……。もともと金本監督を招へいしたのも若手育成の大義名分があったはずではなかったのか。フロントが慌てているから、こういうワケのわからない補強話がこんなタイミングで出てきてしまう」

 そのフロントからは「1~2年は最下位になっても構わないから、3年目で結果を出すぐらいのつもりで頑張ってほしい」と言われ、三顧の礼で迎えられたはずの金本監督。温かい眼差しで金本流チーム再建術を見守るつもりだった熱狂的虎党たちからも少々負けが込むと猛烈なバッシングを一気に浴びせられるようになった。この流れにフロントも足をバタつかせているとなれば、まさに本末転倒だ。

●来シーズンも険しい道のり

 もしかすると今季中に何度か見られる采配ミスに関しても、金本監督は次第に四面楚歌となっている現状に「こんなはずでは」と苦悩し、本人も知らず知らずのうちに冷静な判断を失わせてしまっているのかもしれない。フロントは金本プランとは相反する巨大補強うんぬんを考える前に、指導経験の浅い金本監督を側面からしっかりサポートできる有能かつ経験も豊富なコーチ陣を新たに招へいすることが先決だ。

 いずれにせよ、その金本監督の今季掲げた「超変革」が実を結ぶか否かの答えが出るのは来季以降。取り巻く現況を見る限り、2017年シーズンも非常に険しい道のりとなるのは必至だが、逆風を乗り越えて欲しい。

(臼北信行)

最終更新:9/15(木) 8:15

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