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「IoT」を学べる中高生向け授業、ちょっとだけ体験してみた

ITmedia エンタープライズ 9月15日(木)10時55分配信

 IT、ビジネス業界のメガトレンドとして、ここ数年話題にわたって大きな注目を集めているIoT(Internet of Things)。社会に大きな影響を与えるトレンドであることから、学校教育でIoTを扱う動きも出てきている。

【画像】授業のナビゲーターの「アイコ」。生徒の声に反応したり、黒板消しを振ると微笑んでくれる

 NPO法人の企業教育研究会と日本IBMは9月14日、中学・高校生向けにIoTを題材とした授業プログラムを開発したと発表した。企業教育研究会は、千葉大学教育学部、静岡大学教育学部、兵庫県立大学を基盤に活動するNPO。

 同研究会 理事長の藤川大祐さんは「自分たちの生活や社会に関わるトレンドとして、ちゃんとIoTと向き合って教えている教育機関は少ない。刻々と変化する今の世の中では、今の技術とともに近未来を見据えた教育が必要だ」と話す。

 同プログラムは50分の授業2回分で完結する。まずは、IoTについて実体験を踏まえて説明した後、IBMの開発ツールBluemixを使ってアプリケーションを開発する。その後、自らが作ったサービスを発表しつつ、それがどのように社会に生かせるのかを議論する。簡単に言うと、アイデアソンとハッカソンを組み合わせたようなカリキュラムといえる。

●高校生でもIoTを体感できるナビゲーター「アイコ」

 同日行われた記者発表会では、授業のデモも披露された。ITについて基礎知識がない高校生に、いきなりIoTを理解してもらうのは難しいことから、授業の冒頭には、IoTへの導入として、プロジェクターで映した画面にナビゲーターの「アイコ」が登場する。

 デモでは、アイコは生徒(今回は発表会に出席した記者だが)の声に反応したり、黒板消しを手に取ると手を振ってくれたりと、さまざまなアクションをしてくれた。実は黒板消しの中に加速度センサーが入っており、その数値を分析して反応を返すという仕掛けで、一通り生徒が盛り上がったところで、この動きが教室内に仕込んだ、さまざまなセンサーのはたらきによるものだと説明するそうだ。

 「過去に行った授業の経験から、学習にストーリーを結び付けると理解が深まるということが分かっていました。黒板消しにセンサーを仕込むなど、教室をハックするようなイメージですが、『知らず知らずのうちにIoTを体験する』ことを目指しており、教室内にあるものを使うのがいいということなりました」(同研究会 和田翔太さん)

 この授業は、既に東京都練馬区内にある高校でトライアルを行っており、学生からIoTを使ったさまざまなアイデアが出たという。

●「簡単にアプリが作れた」 高校生からの評価も上々

 実際に高校で行った授業では、IoTを使ったアイデアを出しやすくするために、数人で班を作り、1つのモノに着目してどのようなセンサーを使えるかを考えるワークショップを行った。

 授業の中では「自動車に指紋センサーをつけ、自動的にロックがかかるようにする」「コップの中にアルコールを検知するセンサーを仕込み、アルコール常飲者に警告を出す」など、さまざまなアイデアが出たそうだ。特に後者のアイデアは、依存症防止という社会的価値を生み出す可能性もあり、アシスタントで来ていたIBMの社員も思わずうなったという。

 授業後に行ったアンケートでは、IoTの理解促進に加えて、半数以上の生徒が「アプリ開発が容易になっていること」に驚き、「これからの社会ではアイデアが重要であること」をあらためて実感していたという。高校生にとって、アプリを作るという体験は新鮮かつ面白いことに映ったようだ。和田さんも「アプリというのは意外と簡単に作れる、と思ってもらうことも授業の狙いです」と話す。

 「生徒の中には、アイデア出しが得意な生徒やアプリ開発が得意な生徒がいるなど、それぞれで関心のある分野は異なることが多い。グループでアプリ開発に取り組むことで、お互いに得意分野で協力、コラボレーションすることが大切だというメッセージを伝えていきたい」(藤川大祐さん)

 今後はIBMと企業教育研究会が共同でこの出張授業を宣伝し、体験する中学や高校を募集するとのことだ。2016年度内に5校で授業を実施するのが目標で、プログラムや教材も改善していく。2コマ分と短くまとめたことで、さまざまな学校で展開することが容易になるそうだ。

 近年はIT人材育成の重要性が高まり、小学校でもプログラミング教育の必修化が検討されている。ビジネスの現場でも、IoTを前提としたモノの考え方が重要になっているのは言うまでもない。「IoTネイティブ」な学生が社会に出るのも、そう遠くない話なのだろう。

最終更新:9月15日(木)10時55分

ITmedia エンタープライズ